『白と黒』
東京の夜は、いつもより深く、暗く感じた。
私は息を切らせながら、薄暗い路地を駆け抜けていた。背後から聞こえてくる軽やかな足音に、背筋が凍る。
「おや、もう疲れてしまったのかな?」甘ったるい声が闇に響く。
「まだ夜は長いよ。たっぷり遊ぼうじゃないか」
振り返ると、月明かりに照らされた色白の吸血鬼が、にやりと笑っていた。
「くそっ」私は舌打ちしながら、再び走り出す。
頭の中で必死に考えを巡らせる。吸血鬼の弱点は日光だ。朝まで逃げ切れば勝てる。でも、あと何時間ある? 逃げ切れる自信はない。
そうだ、人混みに紛れ込めば…と思った瞬間、
「おいおい、ちょっと待てよ。俺がそいつを狙っていたんだ」
低く、どこか怒りを含んだ声が聞こえた。
振り向くと、そこには…色黒の吸血鬼がいた。いや、色黒どころではない。真っ黒と言っていいほどの肌の色だ。
「え?」思わず声が漏れる。
色白の吸血鬼も驚いたように立ち止まった。
「お前…吸血鬼なのか?色黒…」色白が尋ねる。
「当たり前だろ。これは生まれつきだ。お前は人種差別主義者か」色黒が答える。
「俺は高貴な吸血鬼だ!戸惑っているだけだ!」
「お前、そんな色白で大丈夫か?日焼けしないのか?」
「失礼な!これぞ高貴な吸血鬼の証だ。日焼けしたら死んでしまう!!!」色白が反論する。
私は呆然と二人のやり取りを眺めていた。まさか、吸血鬼にも色の濃さで差別があるとは。
「おい、人間」色黒が私に向かって言う。
「お前、どっちがカッコいいと思う?」
「え?あ、その…」私は困惑しながら答える。
「個性的で…どちらも素敵だと思います」
「なんだと?」二人の吸血鬼が同時に叫ぶ。
「いや、だって」私は必死に言葉を探す。
「白黒つけがたいというか…」
その瞬間、東の空が薄明るくなり始めた。
「おっと」色白が慌てて言う。
「もう朝か。今日のところは勘弁してやる」
「ちっ」色黒も悔しそうに舌打ちする。
「次は俺が先に見つけてやる」
二人の吸血鬼は、まるで競争でもするかのように、それぞれ闇の中へと消えていった。
私はその場に立ち尽くしたまま、夜が明けていくのを見つめていた。
「吸血鬼って…意外と人間っぽいな」と呟きながら、家路につく私。
これからは、夜道を歩くとき、闇の中だけでなく、明るい場所にも気をつけなければいけないな…そんなことを考えながら。
プロンプト
「『白と黒』。場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。それにしても吸血鬼って色白だな。「おいおい、ちょっと待て俺がそいつを狙っていたんだ」。振り向くと、色黒の吸血鬼がいた。松崎しげるさん並みに色黒な吸血鬼。不覚にも夜の闇に溶け込んでいて気がつかなかった。「吸血鬼でも色黒はいるんだな…」このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」