『きゅうけつさま』~土着系吸血鬼~
夏の夜気が肌に心地よく感じられる季節。俺、山田太郎は仲間と一緒に、ちょっとした悪ふざけをしていた。陸上の指定強化選手として日々真面目に練習に励んでいる俺だが、たまにはこんな夜もいいだろう。
「おい、太郎!次はあそこの祠だ!」
仲間の声に、俺は躊躇した。確かにあの祠は古びていて、今にも崩れそうだ。でも、なんとなく不吉な予感がする。
「やめとけよ」
そう言いかけた瞬間、酔っぱらった仲間の一人が祠に体当たりした。がらがらと音を立てて、祠は崩れ落ちた。
「やべぇ!逃げろ!」
俺たちは一目散に逃げ出した。家に帰ると、おばあちゃんが待っていた。
「太郎、どしたん?顔色悪いぞ」
俺は小声で事の顛末を話した。すると、いつもは温厚なおばあちゃんの顔が、みるみる怒りに満ちていった。
「お前!あんの祠を壊したんか!」
おばあちゃんの叫び声に、俺は思わず後ずさりした。
「きゅうけつさまがお前を祟るぞ!」
「き、きゅうけつさま?」
おばあちゃんの話によると、その祠には古くから伝わる土着の吸血鬼、きゅうけつさまが祀られていたという。祠を壊した者は、きゅうけつさまに血を吸われるという恐ろしい伝説があった。
「ど、どうすればいいんだ?」
おばあちゃんは目を閉じ、深く息を吐いた。
「仕方ない。祈祷師の神田さんに頼むしかないな」
翌日、神田さんがやってきた。長い白髪と皺だらけの顔、それでいて鋭い眼光を持つその老人は、確かに只者ではなさそうだった。
「きゅうけつさまか...。厄介じゃのう」
神田さんは、にんにくのネックレスと銀の十字架を俺に渡した。
「これを身につけておけ。そして、満月の夜は絶対に外に出るな」
その日から、俺の生活は一変した。練習にも集中できず、夜は悪夢にうなされる日々が続いた。そして、ついに満月の夜が来た。
真夜中、窓から月明かりが射し込む中、俺は布団の中で震えていた。そのとき、カタン、という音がした。
「た...太郎...くん...」
か細い声に、俺は恐る恐る顔を上げた。そこには、青白い顔をした少女が立っていた。
「きゅうけつ...さま?」
少女は悲しそうな顔で頷いた。
「どうして...祠を...壊したの?」
その声に、俺は思わず涙が込み上げてきた。
「ごめん...本当にごめん...」
きゅうけつさまは、ゆっくりと俺に近づいてきた。その瞬間、扉が開き、おばあちゃんと神田さんが飛び込んできた。
「太郎!大丈夫か!」
「きゅうけつよ!戻れ!」
神田さんが呪文を唱え始めると、きゅうけつさまの姿がどんどん薄れていった。
「ごめんね...太郎くん...私も...寂しかっただけ...」
最後にそう言い残し、きゅうけつさまは消えた。
翌日、俺たちは壊れた祠を修復した。そして、毎年祭りを開いて、きゅうけつさまを慰めることにした。
あれから何年も経った今でも、満月の夜には窓辺に可愛らしい少女の姿が見えることがある。もう怖くはない。きゅうけつさまは、この村の大切な守り神なのだから。
プロンプト
「タイトル『きゅうけつさま』~土着系吸血鬼~。場所はある地方の田舎。陸上の指定強化選手である私は仲間とはめを外して肝試しをしていた。そのとき、拍子に祠を破壊してしまった。家に帰ってそのことをおばあちゃんに話すと、「お前!あんの祠を壊したんか!」。温厚なおばあちゃんが起こり出した。「きゅうけつさまがお前を祟るぞ!」。地元で有名な祈祷師を呼んできゅうけつさまから逃げる方法をとる。そして、満月の夜、きゅうけつさまが私を祟りにやってきた。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」