『名探偵V』
東京の夜は、いつもより深く、暗く感じられた。警視庁の若手刑事、七瀬はため息をつきながら、警視庁に戻った。連続盗撮事件の捜査は難航し、彼女の心は重かった。
そんな中、上司から突然の通達。
「七瀬君、事件解決のためにバディを組んでもらうことになった」
上司の顔には、どこか申し訳なさそうな影が浮かんでいた。そして、追い打ちをかけるように夜勤が言い渡される。
「はぁ...」
不満を抑えきれない様子で車に乗り込む七瀬。エンジンをかけようとした瞬間、後部座席から声が聞こえた。
「不機嫌そうだな」
驚いて振り向くと、そこには見知らぬ男が座っていた。色白で、歯が妙に鋭い。
「え?」
言葉を失う七瀬に、男は優雅に自己紹介した。
「君のバディになるヴァンパイアのブラドだ。よろしく頼む」
七瀬は目を疑った。吸血鬼?バディ?冗談か?
しかし、これは冗談ではなかった。ブラドは警視庁が特別に雇った顧問探偵で、しかも本物の吸血鬼だったのだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!吸血鬼とバディを組むなんて聞いてません!」
「早速始めよう、夜が明けるのは早いぞ」
七瀬の抗議も空しく、パトロールは始まった。街灯の下、ブラドの牙が妙に光る。
「おや、あそこの暗がりで怪しい動きをしている人間がいるぞ」
鋭く紅い目で犯人を見つけるブラド。しかし、その姿は市民の目には不気味に映る。
「あ、あの...もう少し普通に振る舞えませんか?」
七瀬の頭痛は増すばかり。だが、ブラドの推理力は確かだった。
「ふむ、この香水の匂い...犯人の特徴と一致するな」
次々と証拠を見つけていくブラド。その姿に、七瀬は少しずつ心を開いていく。
「すごい...こんなに細かいところまで」
夜が明ける頃、二人は見事犯人を追い詰めていた。
「観念しろ!」
七瀬の叫びと同時に、ブラドが影から現れる。犯人は青ざめた顔で観念した。
警視庁に戻った二人。七瀬は複雑な表情でブラドを見つめる。
「あの...ありがとうございました」
照れくさそうに言う七瀬に、ブラドはにやりと笑った。
「君との仕事は楽しかったよ。これからもよろしく頼むぞ、パートナー」
そう言って、ブラドは朝日を避けるように影に消えていった。
七瀬は呆然と立ち尽くす。この奇妙なパートナーシップが、彼女の刑事人生をどう変えていくのか。それは誰にも分からない。ただ、東京の夜の風景が、少し変わって見えるようになったのは確かだった。
それから数週間後、東京を震撼させる連続通り魔事件が発生した。七瀬とブラドは再びタッグを組み、捜査に乗り出した。
「ブラドさん、被害者の様子から何か分かりますか?」
七瀬の問いかけに、ブラドは鋭い眼差しで現場を見回した。
「ふむ...犯人は左利きで、身長170cm前後。そして...」
ブラドの鼻がピクリと動く。
「血の匂いが微かに残っている。おそらく犯人自身の血だ」
その卓越した観察眼と推理力で、二人は徐々に犯人の輪郭を掴んでいった。夜な夜な繰り返される尾行と張り込み。七瀬は疲労困憊だったが、ブラドは相変わらず爽やかだった。
「吸血鬼で良かったですね。昼間眠れるんだから」
七瀬の皮肉っぽい言葉に、ブラドは優しく微笑んだ。
「君も吸血鬼になれば良いのに」
そんなやり取りを重ねながら、ついに決定的な証拠を掴んだ二人。犯人の逮捕は目前に迫っていた。
月明かりの下、犯行現場と思われる公園で待ち伏せする二人。そこに現れたのは、予想通りの人物だった。
「動くな!」
七瀬の声と同時に、ブラドが影から飛び出す。一瞬の混乱の後、犯人は観念した。
事件解決の興奮冷めやらぬ中、署に戻った二人。七瀬は晴れやかな表情でブラドを見上げた。
「ありがとうございます、ブラドさん。あなたがいなければ、こんなに早く解決できなかったでしょう」
その言葉に、ブラドの表情が一瞬だけ曇った。
「ああ、楽しい仕事だったよ。さて...」
彼は七瀬に近づき、真剣な眼差しで彼女を見つめた。
「そろそろ報酬を頂こうか」
「え?報酬ですか?」
困惑する七瀬に、ブラドはゆっくりと口を開いた。
「そう、君だ」
「え?」
驚きに目を見開く七瀬。ブラドの牙が月明かりに光る。
「冗談だよ」
くすりと笑うブラド。七瀬は安堵のため息をつきながら、半分呆れ、半分面白がったような表情を浮かべた。
「もう...冗談きついですよ」
「君の血は大切だ。簡単には頂かないさ」
そう言って、ブラドは夜の闇に溶けていった。七瀬は複雑な思いで彼の後ろ姿を見つめる。
この奇妙なパートナーシップは、まだまだ続きそうだ。東京の夜は、新たな謎を秘めて、静かに更けていくのだった。
プロンプト
「場所は東京。私は新米刑事の七瀬。謎の連続盗撮事件の犯人を追いかけていた。「事件解決をするためにバディを組んでもらう」。上司から唐突に言われた。その時の上司の顔は少し申し訳なさそうだった。そして、夜勤勤務を言い渡される七瀬。七瀬は不服そうに車に乗る。「不機嫌そうだな」。後部座席に座っていたのは色白で歯の鋭い吸血鬼だった。「え」。「君のバディになるヴァンパイアのブラドだ」。彼は警視庁が特別に顧問として雇っている名探偵の吸血鬼だった。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」
「次の事件は連続通り魔事件だった。無事事件を解決すると吸血鬼は「報酬を頂こう」と言う。それは七瀬だった。このプロットを元に物語を締めくくってください。」