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『寿命が見える』

 

 東京の喧騒の中、18歳の井ノ川洋子は特殊な能力を持って生きていた。彼女には人の寿命が見える。街を歩けば、通行人の頭上に数字が浮かぶ。40歳、67歳、92歳...。それは呪いのような奇妙な能力だった。


 そして、ある日、鏡に映る彼女の頭上の数字は、現在の年齢と一致した。


 その夜、洋子は繁華街を歩いていた。突然、背後から声がかかる。


「そこの、お嬢さん」


 振り向くと、黒衣の男が立っていた。洋子は思わず息を呑んだ。男の頭上に浮かぶ数字は∞。無限大。そんなことがあり得るのか?


 男は不敵な笑みを浮かべていた。その口元から鋭い牙が覗いている。そして、その目は血のように赤い。


「もしかして、ヴァンパイア?」洋子は思わず口走った。


 男は愉快そうに笑った。


「ほう、察しの良い方だ。どうです、私と鬼ごっこでも?」


 洋子は困惑した。


「鬼ごっこ?こんな夜中に?」


「そう、鬼ごっこだ。ルールは簡単。私が鬼で、お嬢さんが逃げる。もし捕まったら...」男は意味ありげに牙を見せた。


 洋子は背筋が凍るのを感じた。しかし、同時に奇妙な興奮も覚えた。今まで見てきた無数の寿命の中で、初めて∞を目にしたのだ。


「もし、私が逃げ切ったら?」洋子は震える声で尋ねた。


 男は面白そうに目を細めた。


「そうだな...お嬢さんの寿命を、永遠にしてあげよう」


 洋子は息を呑んだ。自分の寿命を変える...それは可能なのか?しかし、捕まれば命の危険がある。逃げるべきか、挑むべきか...。


「決めた」洋子は深呼吸をして言った。


「やります」


 男は満足げに頷いた。


「よろしい。では、30秒後に追いかける。さあ、逃げるんだ」


 洋子は走り出した。東京の街が、彼女の人生最大の冒険の舞台となる。


 頭上に浮かぶ数字たちを無視しながら、洋子は必死に走った。裏路地に飛び込み、雑踏に紛れ込む。しかし、どこに行っても背後に男の気配を感じる。


「どこだ、お嬢さん?」男の声が闇の中から響く。


 洋子は息を潜めた。心臓の鼓動が耳に響く。


 突然、肩に冷たい手が触れた。


「見つけたぞ」


 洋子は振り向いた。男の赤い目が目の前にあった。


「捕まえた。さて、どうしようか...」


 洋子は震えながらも、勇気を振り絞って言った。


「待って!まだ...まだ終わってない!」


 男は首を傾げた。


「ほう?」


「あなたは∞の寿命を持っている。だったら、この鬼ごっこだって∞に続けられるはずだわ。私はまだ諦めてない。だから...」


 男は大声で笑い出した。


「面白い!実に面白い!」彼は洋子から手を離した。


「よかろう。では、もう一度やってみるか?」


 こうして、18歳の少女と∞の男との終わりなき鬼ごっこが始まった。東京の街は、彼らの遊び場となり、夜という夜は彼らのものとなった。


 洋子の人生は、予測不可能な冒険へと変わっていった。彼女の頭上の数字は18のまま。しかし、その瞳には∞の輝きが宿るようになっていた。


 ***


 翌日の朝、東京のとある路地裏でひっそりと倒れている女性が発見された。


「心臓発作のようですね」現場に駆けつけた救急隊員が言った。


「防犯カメラの映像を確認したところ、突然走り出して、そのまま倒れたそうです」


 その日の夕刻、繁華街の片隅にたたずむ黒衣の男がいた。彼の唇が不敵な笑みを形作る。


「やれやれ」男は独り言を呟いた。


「人間の体には限界があるものだ。永遠に続く鬼ごっこなど、所詮は幻想に過ぎない」


 男の目は赤く輝いていた。その瞳に映る街の風景には、人々の頭上に浮かぶ数字が見えていた。


「さて、次は誰と遊ぼうかな。それにして、この奇妙な数字…まあよい」


 男は闇に溶けるように姿を消した。東京の夜は、新たな犠牲者を求めてさまよう∞の男を、静かに包み込んでいった。

プロンプト

「場所は東京。私は井ノ川洋子。私はある特殊な能力を持っている。それはその人の寿命が見える能力だ。18歳。40歳。街を歩くとその人の頭の上にその人の寿命が見える。鏡を見ると私の寿命も見える。それはまさに今の私の年齢だった。「そこの、お嬢さん」。振り向くと、黒衣の男がいた。寿命は∞。(∞!)。「どうかされましたか?」。黒衣の男は鋭い牙と赤い目。「もしかして、ヴァンパイア」。私は思わず言ってしまった。「ほう、察しの良い方だ。どうです、私と鬼ごっこでも?」。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」

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