『閉じ込められた』
東京の夜。闇に紛れて歩く一人の男。いや、人間ではない。吸血鬼だ。自らを「夜の帝王」と呼ぶこの存在は、今宵も獲物を求めて街をさまよっていた。
「やあ、私と鬼ごっこでもしないか?」
声をかけられた男性は、一瞬で事態を察知し、悲鳴をあげて逃げ出した。吸血鬼は薄笑いを浮かべ、ゆっくりと追跡を開始する。
「ふん、いつも通りだな」
しかし、しばらく追いかけているうちに、吸血鬼は違和感を覚え始めた。
「おや?この道、さっきも通ったな」
確かに見覚えのある住宅街。同じような家々が並ぶ風景が、デジャヴのように繰り返される。
「おい、待て人間!」
吸血鬼は焦りを感じ始め、全力で追いかける。だが、どういうわけか人間との距離が縮まらない。
「なぜだ…?」
そう叫んだ瞬間、周囲の景色が歪み始めた。家々が溶け、道路が波打つ。そして、吸血鬼の目の前に現れたのは、和服姿の男性たち。陰陽師だ。
「よくぞ罠にかかってくれた、吸血鬼よ」
陰陽師の長らしき人物が、冷ややかな笑みを浮かべながら言った。
「貴様ら!私を騙したな!」
吸血鬼は怒りに任せて陰陽師に飛びかかろうとするが、体が動かない。
「無駄だ。お前はもう『無間の陣』に封印されている」
「無間の陣だと?冗談じゃない!」
「そう、大悪を犯した者が死後も永遠に苦しみ続ける、無間地獄を模して作られた術だ」
吸血鬼は絶望的な表情を浮かべる。しかし、すぐにニヤリと笑った。
「ふん、私は不死身。地獄など怖くはない」
その言葉に、陰陽師たちは顔を見合わせ、くすくすと笑い始めた。
「何が可笑しい!」
長の陰陽師が答える。
「お前は気づいていないのか?この陣に封印された瞬間から、お前はもう『死後』なのだ」
「な…何だと!?」
「そう、お前は永遠に、血に飢えながらも一滴も口にできず、人間を追いかけても決して追いつけない。そんな苦しみを味わい続けるのだ」
吸血鬼の叫び声が夜空に響き渡る。しかし、それを聞く者は誰もいない。
彼の新たな「人生」が始まったのだ。永遠の飢えと、永遠の追跡。そして、永遠の孤独。
夜の帝王は、こうして自らの作り出した「永遠の夜」に閉じ込められたのであった。
プロンプト
「場所は東京。私は吸血鬼。夜の帝王。今日も人間の生き血を吸う。「やあ、私と鬼ごっこでもしないか?」。ターゲットを見つけた。男はビビって逃げる。私は追いかける。しかし、異変に気付く。「この道さっきも通ったな」。さっきと同じ住宅街の道。「おい、待て人間」。私は人間を呼び止めようとするが追いつけない。なぜだ。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。オチ、吸血鬼は陰陽師たちに封印された。それは無間の陣。大悪を犯した者が、死後絶えることのない極限の苦しみを受ける地獄、無間地獄を模して作られた術。」