『絵から出てくたアイツとスポーツジム』
真夜中の東京、私は友人の葬儀から帰る途中だった。頭の中は、一週間前に見た彼の個展での衝撃的な絵のことでいっぱいだった。「吸血鬼に追いかけられる女性」。あの鬼気迫る描写が、今でも脳裏に焼き付いている。
「すみません」
突然、背後から声がした。振り向くと、そこには...まさか。あの絵に描かれていた吸血鬼そのものが立っていた。
「えっ...」言葉が出ない。
吸血鬼は優雅に一礼すると、にやりと笑った。
「こんばんは。突然で申し訳ありませんが、ちょっとしたゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
「はい、鬼ごっこです」
私は思わず吹き出しそうになった。状況があまりにも非現実的で、笑うしかなかった。
「なぜ鬼ごっこ?」
吸血鬼は肩をすくめた。
「絵の中で永遠に女性を追いかけるのも飽きてしまって。現実世界で本物の人間と遊びたくなったんです」
「で、もし断ったら?」
「そうですね...」吸血鬼は首を傾げた。
「血を吸わせていただくことになるでしょうか」
ああ、なんて理不尽な。でも、選択肢はなさそうだ。
「わかりました。やりましょう」
吸血鬼は満面の笑みを浮かべた。
「素晴らしい!ルールは簡単です。朝日が昇るまでに捕まえられなければ、あなたの勝ちです。では、30秒数えますので、逃げてください」
私は走り出した。頭の中では様々な思考が駆け巡る。
吸血鬼の弱点は日光。あと4時間もすれば夜明けだ。でも、それまで逃げ切れるだろうか?
都会の迷路のような街を駆け抜ける。後ろから聞こえてくる吸血鬼の軽やかな足音。まるで、彼が楽しんでいるかのようだ。
「おやおや、もう疲れましたか?」吸血鬼の声が耳元で響く。
「まだまだ!」息を切らしながら叫ぶ。
街灯の明かりの下、私たちの影が踊る。昼と夜の境目で繰り広げられる、滑稽なダンス。
そうだ、あの24時間営業のジムなら...。
「ちょっと休憩!」私は叫んだ。
吸血鬼は不思議そうな顔をした。
「へぇ、もう諦めですか?」
「いいえ、ルール確認です。室内に入ってもいいですよね?」
「ええ、もちろん」
私はニヤリと笑った。
「じゃあ、ついてきて」
ジムに飛び込む私。そして、日焼けマシンのスイッチを入れた。
まばゆい光が吸血鬼を包む。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
吸血鬼は悲鳴を上げながら、煙を上げて消えていった。後には、友人の絵に描かれていた服だけが残された。
そう、これで決着がついた...はずだった。
翌日、私は新聞で驚愕の見出しを目にする。
『深夜のジム、原因不明の火災 - 日焼けマシンから出火か』
ため息をつく私。友人への弔いの気持ちと、吸血鬼との一夜の戯れ。そして、まだ残っているであろう「彼」への借金。
「まあいいか」と呟きながら、私は次の夜に備えてにんにくを買いに出かけたのだった。
プロンプト
「場所は東京。私は友人の個展を見に行った。友人の力作「吸血鬼に追いかけられる女性」を見た。鬼気迫る描写に圧倒された。後日、友人が亡くなったと聞いた。葬儀に出て作品はどうなったか聞いた。すべて売りに出されたらしい。あの絵について聞いたとき、「知らない間に売れた」とだけ聞いた。帰り道。夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」