『101匹』~ワンチャンあるで~
真夜中の東京。ネオンに彩られた街路を歩いていると、突如として現れた一人の男。異様な雰囲気を漂わせるその姿に、私は思わず足を止めた。
「やあ、君。退屈そうだね」
男は不気味な笑みを浮かべる。
「ちょっとしたゲームをしないか?」
「ゲーム?」
「そう、鬼ごっこさ」
私は一瞬、頭がおかしくなったのかと疑った。しかし、男の牙が月明かりに輝くのを見て、現実を悟る。
吸血鬼だ。
「逃げろ」
男は囁いた。
「朝日が昇るまでに捕まらなければ、君の勝ちだ」
私の頭は高速で回転し始めた。東京の地理、吸血鬼の弱点、逃げ切る可能性...。
「だが、東京は俺の庭だ」
私は自信を持って宣言した。
「こんなヴァンパイア一匹」
「私一人だけだと?」
影から新たな吸血鬼が姿を現す。
「ま、まあ二匹くらいなら」
私は動揺を隠せない。
「おっと私も」
また別の声。
次々と吸血鬼たちが現れる。一匹、二匹...十匹、五十匹...。
「百一匹だ」
最初の男が宣言した。
私の顔から血の気が引いた。
「おい!ルール変えろ!」
私は叫んだ。
「追いかけるほうが多いってなんだよ!ルール違反!ノーカウント!ノーカンノーカン!」
吸血鬼たちは顔を見合わせ、ため息をつく。
「しょうがない」
リーダー格の男が言った。
「じゃあ、こうしよう。我々百一匹と君一人で、朝日が昇るまでに東京を踏破するゲームにしよう。勝った方が東京の支配者だ」
「はぁ?」
私は呆れた。
「それって普通の散歩じゃないか!」
「いいや、ゲームだ」
男は真顔で言う。
「さあ、始めよう。君には人間を味方につける権利を与えよう」
「えっと...」
私は周りを見回す。深夜の歌舞伎町。酔っぱらいと夜遊び客しかいない。
「これは...マジでやばいかも」
そう呟いた瞬間、百一匹の吸血鬼たちが一斉に動き出した。
(いや、もしかしたらワンチャンあるかもしれない...)
私は走った。全力で走った。
「誰か助けて!」
叫びながら走る。
「東京が吸血鬼に侵略されそうなんだ!」
酔っぱらいたちが振り向く。
「お、面白そうじゃん!」
一人が叫ぶ。
「俺も混ぜろよ!」
「私も!私も!」
気づけば、私の後ろには大勢の人間たちが続いていた。
こうして、吸血鬼百一匹と人間たち(および一人の冴えない主人公)による、東京踏破をかけた壮大な夜の戦いが幕を開けたのだった。
果たして朝日が昇る頃、東京の運命はどうなっているのか?
夜が明けるまでの数時間、東京は前代未聞の騒ぎに包まれた。吸血鬼と人間が入り乱れ、街中を駆け巡る。新宿、渋谷、池袋と、主要な繁華街はあっという間に踏破された。
「よし、山手線の駅全部制覇だ!」
私は叫んだ。
「甘いな」
リーダー格の吸血鬼が嘲笑う。
「我々はもう多摩地区まで踏破したぞ」
時間が過ぎるにつれ、状況は混沌を極めた。SNSで拡散され、徐々に一般市民も巻き込まれていく。
「23区制覇!」
「町田って東京だったのか!」
「もう多摩の山奥まで行ったぞ!」
互いの陣営が競い合う中、私は突如、地図を広げた。
「ちょっと待て」
私は叫んだ。
「東京都って...」
そう、東京都には離島がある。小笠原諸島、沖ノ鳥島...。
「おい、吸血鬼ども!」
私は高らかに宣言した。
「東京都は本土だけじゃないぞ!離島まで踏破しないと勝負はつかないんだ!」
吸血鬼たちの顔から笑みが消えた。
「くっ...」
リーダーが唸る。
「まさか、そこまで...」
日の出が近づく。吸血鬼たちは焦りだした。
「おい!俺たち吸血鬼は流水は弱点なんだぞ!」
「船だ!船を用意しろ!」
「いや、飛行機の方が早い!」
「バカ野郎!日の出までに着けるわけないだろ!」
混乱する吸血鬼たちを尻目に、私たち人間チームは悠々と勝利を確信していた。
そして、ついに東の空が白み始めた。
「ノーーーー!」
吸血鬼たちの断末魔が響く。
朝日が昇り、百一匹の吸血鬼たちは灰となって消えていった。
「勝った...」
私はへたり込んだ。
「マジで勝っちまった...」
周りの人間たちから歓声が上がる。
「やったぜ!」
「東京は俺たちのものだ!」
「いや、あいつが勝者だ!」と、私を指差す声。
その時、ふと気づいた。
「ちょっと待てよ...」
私は呟いた。
「勝者が東京の支配者になるって...まさか...」
そう、私は図らずも東京都知事になってしまったのだ。
「えーっと、みんな」
私は周りを見回した。
「都知事って、給料いくらだっけ?」
こうして、前代未聞の吸血鬼との戦いは幕を閉じ、東京の新しい朝が始まった。果たして、この冴えない新都知事の下で、東京はどうなっていくのか?
プロンプト
「場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。「だが、東京は俺の庭だ、こんなヴァンパイア一匹」。「私一人だけだと?」。影から吸血鬼が出てきた。「ま、まあ二匹くらいなら」。「おっと私も」。どんどん吸血鬼が出てくる。総勢101匹。「おい!ルール変えろ!追いかけるほうが多いってなんだよ!ルール違反!ノーカウント!ノーカンノーカン」。「しょうがない」。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」
「物語の結末。小笠原諸島や沖ノ鳥島を踏破できずに吸血鬼は破れる。」