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《 愛流 ~ 愛が流れ続ける 》



  私の内で

   濃く深く情が流れ続ける

         愛しき殿方様へ

      一輪の薔薇の 花言葉を贈ります




  [ 愛流 (其の一) ]


 一人 褥で見る夢の


 殿方様との 逢瀬では


 ふわりと繋いだ手をほどき


 殿方様の 温かな指先は


 素肌の 私の 背中の真ん中を


 腰から首まで ゆるりと撫で上げ


 頬を火照らす 私の顔を見つめるから


 柔和に微笑む 殿方様の指を掴まえて


 その指先に 口づけて


 そのまま 口に含んだら


 殿方様の瞳は 一瞬 力強く煌めき


 その体から 雄の匂いが漂って…




 一人 褥で見る夢は


 濃く深く口づけ合って


 殿方様の 腕の中






  [ 愛流 (其のニ) ]


 夢か 現か 幻か…




 暖かな 弥生の深更に


 交じり合う言の葉から


 滴る養の液を飲み込んで


 硬く閉じていた蕾が


 瞬時に開く


 丑三つ刻の 私の花




 夢なら覚めずに


 艶めく夜に溶けたい






  [ 愛流 (其の三) ]


 我 混濁した心 抱え


 唯一つ濁り無い想いを


 一輪の深紅の薔薇に込めて


 愛しき殿方様に贈る




 我 命の灯 消す時に


 百本の深紅の薔薇を


 愛しき殿方様に捧げる




 そして


 やっと 穏やかに鎮まる心のまま


 消滅する




 かつて 丑三つ刻に見た夢に


 想いを巡らせて






  [ 愛流 (其の四) ]


 偶然 見つけた

 仄かに暖かい 柔和に輝く

 その光り



 最初は 離れた所から

 眺めているだけで良かったのです



 けれど眺めているうちに

 そっと ゆっくり 触れてみたいと

 望むようになりました



 そう望み

 やっと触れる事が出来たのに…



 そっと 自分の凍えた指先を

 温めたかっただけなのに…



 ゆっくり 両手で掬い上げ

 冷えた頬を温めたかっただけなのに…



 愚かな私は

 その光りを 無造作に掴み取り

 力一杯 握り締め

 欲しがる想いが強まって

 挙げ句の果てに

 握り潰してしまいました



 それなのに

 開いた掌の中の その光りは

 私の掌に

 怒りや苛立ちの温度を上げて

 火傷を負わせても構わないのに

 変わらず 柔らかく輝き続け

 私の手を温めようとしてくれます



 いつか叶うなら…



 再び

 この光りに触れる事が出来るなら…



 力込めて 掴み取るのではなく

 そっと ゆっくり

 全身を光りの中に委ねたい



 まるで

 朝陽に照らされながら湯浴みをして

 湯船の温かなお湯に ゆったり浸かるように



 暖かく柔らかな光りの中に

 私の全てを委ねて

 心も体も 素直に包まれたいのです






  [ 愛流 (其の五) ]


 自ら 握り潰してしまった大切なものを

 元の場所に戻して ニ歩 三歩 後退れば


 ほら… やはり…


 私の心の中で渦巻いていた

 ドロドロに濁った感情は 何処かに収まり

 今 心は凪いでいます



 大切なものを

 上手に育てる事の出来ない私は

 こうして ニ歩 三歩 後退る事でしか

 ドロドロの感情を濾過出来ないのです



 だから 今 凪いだ心は

 何も混じり気の無い 愛情でいっぱい



 今直ぐ 愛しき殿方様の声を聴きたいと

 今直ぐ 愛しき殿方様の姿を見たいと

 唯々 想って せつなくなるほど



 だから

 こんな私の愚かさを

 心より お詫びするのです


 そして

 懸命に温めようとしてくれた事に

 心より 感謝するのです



 これから毎日

 愛しき殿方様に

 心の中で 一輪の薔薇を贈り続けます



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