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6会話のベルトコンベア

もうちょっとで導入が終わります。

再び目を覚ますと、辺りはすっかり暗くなっていた。 ここは依然としてどことも知れない森の中。ビルは一人寝転がっていた。

焚き火がされている。パチパチと木の焼ける音。小さな火の粉がホタルのように宙を舞い、淡く光を放っては儚く消えていく。


「やぁ。よく眠っていたみたいだね」


寝転んでいたビルの頭上から声がかけられた。 軽薄そうな男だ。確か名前は、


「ナルさん……?」


「名前、覚えててくれたのか。光栄だね」


「はぁ……」


ナルはそのままビルの側に腰を下ろし、親しげに笑みを浮かべてくる。 同性のビルですら、不覚にもドキッとしてしまうくらいに美しい顔だった。


「どうだい?魔族の命運を無理矢理押し付けられた気分は」


「いいわけないでしょ……」


深くため息をつくビル。


「そもそも、皆も本気で俺に魔王になってほしいとは思ってないみたいだし。俺だってなりたくないし。ここにいる必要性なんて無いんだから解放してほしいよ」


「必要性ならあるさ。ただ、それが分からないだけなんだ。彼らも。そして、君もね。いや、君の場合は分からないフリをしてるのかな?」


「………………」


「なるほどね。カマをかけてみるものだ」


「……何も言ってないのに勝手に会話が進んでくんだけど……」


会話のキャッチボールならぬ、会話のベルトコンベアだ。


「会話だけじゃない。この世界だって同じ。君の意志などお構いなしに世界は流れて、時には君の意志などお構いなしに君を巻き込み、飲み込んでいく」


「……この流れからはもう逃れられないって言いたいの?」


「まぁね」


「……ノリが軽いね」


こちらは一生に関わる分岐点に立っているというのに、ナルの調子はどこまでも軽い。だが、その軽い調子が、ビルの頭にほんの少しの余裕を持たせてくれる。


「これが、逃げられない理由さ」


そう言ってナルが差し出したのは、


「……手紙?」


「君の大好きなママからだ」


「!どうして!?」


「要件は以上だ」


ナルは「そしてこれは蛇足だけど」と前置きし、言う。


「何かに流されずに生きることは不可能だ。その流れっていうのは環境の変化であったり、自分や他人の心であったり、様々だけどね」


「………………」


「それらが引き起こす流れによって、誰もが自分の進むべき道に迷い、見失い、そして悩むのさ」


「はぁ……?」


「望んだ道を選んだつもりでも、知らずの内に流されて望まぬ未来に辿り着くこともあるし、逆に望まぬ道に進んでしまったとしても、望まぬ未来が待ち受けているとも限らない」


小難しい言い回しだ。ビルはナルの言葉を整理する。


「魔王になる道を選んでも悪いようにはならないかもしれないってこと?」


ビルの問いかけに、ナルは苦笑する。


「残念だけど君の場合、道は選べない。君が魔王になるのは逃れられない宿命みたいなものだ」


ナルは「長くなったね」と苦笑してこう締めくくる。


「大事なのは道を選ぶことじゃなくて、その道をどう進むかってこと」


「……?」


「ふふっ……ピンと来ないかい?やっぱり蛇足だったね」


「いや、そんなことは……」


ピンとは来ないが、胸の内に留めておくだけの価値があるようには思える。 だから、


「……ありがとう。ナルさん」


「……!」


ビルは礼を口にしていた。 ナルはなぜだか、目を丸くして驚き、やがてクスリと笑った。


「……やっぱり君は面白い」


「……?」


「手紙、読んでおいてくれよ?」


「うん」

これから魔族のキャラ見せが始まっていく感じです。どうか続きもお願いします。

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