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31無事

待たせたな!(誰も待ってない)

終わりまであと少し。最後まで見てくださる人は果たしているのか分かりませんがどうぞよろしくお願い致します。

「………………」


永遠とも感じられるわずかな時間がようやく終わりを告げる。 ビルとニアは気づかれることなく、騎士達とすれ違うことができた。


「ったく!何やってんの!?またバレたらどうすんのよ!?」


「ごめん。あまりにも衝撃的だったから……」


「まあ……何も無かったからいいけどさ……」


ビルの様子を見ると、どうやらエレノア・ブレイドのオーラだけにあてられたわけではないようだ。事情が気になるところだが、今回は大目に見てやる。


「そろそろ森に入るわね……」


足を進めてどれくらい経ったのかは分からない。けれど、ようやく目的地が近付いた実感が生まれた。

目の前に広がるのは、先の見通せない深い緑の一色。


「もうすぐ日も傾いてくる。騎士がもういないことを信じて急ごうか」


「うん」


今度は躊躇わず、ニアはビルの腕に抱かれる。


「しっかり捕まっててね、ニア」


「……ぅん」


どうしても照れてしまうのは慣れないままだが。 ビルの身体に淡い光が灯り、疾風のように深緑の中を駆け抜けていく。


「はぁ、はぁ、はぁっ」


「っ」


ニアの髪にかかる熱い吐息。胸から伝わるビルの命を燃やす鼓動。自分の存在ごと包んでくれる力強く優しい腕。


(こいつはマザコンこいつはマザコンこいつはマザコンこいつはマザコン)


仲間の一大事の最中にときめいてしまいそうになるニアは呪詛のように心の中で呟き続けた。 やがて、空が茜色に染まり始めた頃、


「ビル!あれ!」


ニアの指差した先には緑のほころびがあった。人の手によって薙ぎ倒された木々。深緑の中に浮かぶ不自然な乾いた血の色。 間違いない。ここで魔族と騎士の間で戦闘が起こったのだ。


「誰か!誰かいませんか!?」


ビルが叫ぶが、誰もいるはずはない。 騎士は引き上げていったし、魔族は襲撃を受けた場所に引き返すことはできない。


「ニア、調べてみよう」


「うん」


「その必要は無い」


「「…………え?」」


誰?

ビルとニアが揃って声の主の方に顔を向ける。そこには、


「カムロさん!?」


黒ずくめの女、カムロがいた。


「ねえ、あんた!みんなは無事なの!?」


「安心しろ。多少の怪我を負った者もいるが、皆命に別状は無い」


「「!!」」


無事だった!絶体絶命かと思われたが、皆助かったのだ。


「リアがよくやってくれた。やつの指揮と懸命な判断が無ければ全滅してたかもしれない」


「ねーさまが……」


「リアさん……」


侍女の身でありながら軍略を任された経験があるのは知っていたが、それにしたってエレノア・ブレイドから難を逃れるほどの手腕があったとは……ニアは驚嘆する。

カムロはビルに向けて言う。


「おまえとの関わりがヤツを成長させたのだろう。おまえと出会う前のヤツでは到底できない芸当だった」


「えぇ……?」


ビルは胡散臭そうにするが、ニアには分かる。カムロの言っていることが見当違いでないことを。 何しろ、ニアもこの短い時の中でビルから少なくない影響を受けている。


「あんた、もっと自信もちなって。あんたはあんたが思っている以上にずっと凄いやつなんだから」


「そうなのかな……?」


ビルは首を傾げてピンときていないようだが、ニアは確信している。新しい魔王に相応しいのはビルであるということを。


「それより、随分と遅い到着だったな。それにその怪我、向こうで何かあったのか?」


そういえば、カムロへの説明がまだだった。


「えっと……ニアが魔族だってバレちゃって……騎士と戦いになった」


「はぁあああ!?」


ビルがリリエラとのドンパチについて語る。

ただし、ナルの裏切りについては伏せて。

ニアは正直納得できない。今すぐにでも打ち明けて全員で袋叩きにしてやりたいところだが、一番の功労者たるビルがそういうつもりなのだから、ニアも不承不承ながらそれに従う。

話を聞いたカムロは、


「び、びびびちゃ、きききしきしと……だだだだ大丈大丈夫」


何やら全身をガタガタと震わせ、ビルの身体をペタペタと触っている。


「あの……カムロさん?」


不審に思って眉根を寄せるビルに、


「バカぁあああ!」


「え!?」


カムロが怒鳴った。


「どうして!?どうしてそんなに危ないことするの!?」


「いや……だって戦わないとニアが殺されるところだったし……しょうがなかったっていうか……」


「しょうがなくない!」


「えぇ……?」


「君には美人で可愛いプリティでキュアキュアなママがいるんだろう?君にもしものことがあったら君のママは狂って死んでしまう!」


「えっと……?」


この女はもう少しクールな感じではなかっただろうか。 気が動転しているせいからか、カムロの人格が壊れつつある。


「それは違うよ、カムロさん。ママは俺の危険は覚悟の上。ママとの約束はそういうものだから」


「うぐっ……そうなんだけど……そうなんだけどぉ……!」


子どものように『ぐぬぬ』と歯噛みするカムロ。 もう少しそんなレアなカムロの姿を眺めていたいニアであったが……


「それより、皆はどこにいるの?早く合流しないと」


カムロは後ろ髪を引かれつつも、ニアの話に応じる。


「皆は湖を突っ切って森林を抜けるつもりだ。合流地点はあらかじめリアと打ち合わせておいた場所。森林を抜ける手前だ」


「湖を突っ切るって……そんなのどうやって追いかけるのよ?」


「街道を使って迂回する。それで先回りできるはずだ。疲れているだろうが、もう少し頑張ってもらうぞ」

どうか続きもお願いします。

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