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27魔王×勇者

見てくださってありがとうございます。

「やめろぉおおおお!」


「……!?」


ゾクリとリリエラの背中に悪寒が走った。

声の主はビル。リリエラの刃を止めるには間に合うはずもない。警戒には一切値しないと頭では理解していたものの、リリエラは己のカンに従い、その場から瞬時に飛び退く。

刹那、遅れてくる風切り音。ビルの斬撃だった。


「……!」


……速い……!貧弱な人間にしてはありえない速度だ。 見れば、ビルはニアを背中でかばい、こちらに刃を向けて戦いの意思を示していた。


「ニアは殺させない……!絶対に死なせない!」


「!」


怯えるだけしかできなかった先程までとはまるで別人。 芯を失くして震えるしかできなかった身体は揺るぎない力が宿り、揺れ惑うだけの瞳は強い熱と力を帯びている。

そして、ビルの全身には劇的な変化が表れていた。

ビルの全身から迸る淡い光。それは聖力の光に他ならない。


「聖力……!?そんな馬鹿な……」


信じられない光景だが、認めざるを得ない。あれこそは、


「勇者の血筋……!?」


エレノアや自分と同じ。化物だ。


「……あのムカつく魔族の思惑通りってわけっスか」


聖力を発現させるためのトリガーは恐怖に立ち向かうための強い勇気。 聖力を保持する者が勇者と呼ばれる所以だ。


「ったく……冗談じゃないっスよ。どうして勇者が魔族の味方なんてやってるんスか?こんなのが世間に知られたらどうなることか……」


魔族に同情的な人間もいないではない。しかし、勇者という立場ならそうはいかない。魔族は殲滅すべき対象に他ならず、見逃すなど以ての外。ましてや魔族の味方になるなどありえない。

更に、ビルは混乱を招くようなことを口走ってくる。


「勇者じゃない。魔王だ……!」


「……は?」


「俺は魔王フェルズ・スターンが息子、ビル・スターンだ!」


「……設定が渋滞起こしてるんスけど」


魔王フェルズにビル・スターンなる息子がいるなど聞いたことがない。 笑えない冗談だと切り捨てたいリリエラだったが、考えれば考える程に辻褄が合っていく。

まず、ゲーロン湖で発見された魔族の集団はビルが率いていたのだろうと考えられる。

また、先程のスカした男の魔族ナル。 ナルは今までリリエラが切り結んできた魔族とは明らかに一線を画す力を秘めた魔族だった。認めるのは癪だが、リリエラが本気で戦っても勝てる気が全く起きないくらいに。

その超大物であろう魔族がビルにここまでの執着を見せる理由にも、ビルが魔王の息子であるならば納得がいく。

存在が知られていない理由にしても、考えれば当然のこと。恐らく、ビルは魔王と勇者の間に生まれた子。そんな存在は魔族の側にとっても人間の側にとっても世界を揺るがす大スキャンダルだ。むしろ、秘匿されない方が不自然である。


「まぁ、おにーさんが何者であろうと自分のやることは変わらない……」


余計な問答はもういらない。


「死んでもらうっス」


今度こそ本気で殺す。 リリエラは瞬時に聖力を展開させ、速さに物を言わせた反応など許さない超速の斬撃を繰り出す。

ビルの首を跳ね飛ばしたと確信したリリエラに届いたのは弾かれるような金属音だった。


「なっ!?」


防がれた。まるで、ビルとは別に剣が意思をもって動いたかのような、そんな不思議な剣筋だった。 その証拠に防いだ側のビルにも驚愕の表情が窺える。

しかし、動揺から早く立ち直ったのはビルが先だった。


「うぉおおおおおお!」


おとなしいビルらしからぬ獣のような咆哮に気圧されたリリエラは飛びのいてビルの剣から距離を取る。

太刀筋は雑。力任せに振るだけのド素人だ。そもそも、剣の握り方からしてなっちゃいない。


(落ち着いて対処すれば問題無い。隙丸出しのド素人)


今度は丁寧に。


「ふっ!」


剣を打ち込み、


(ここで崩す……!)


剣撃と体捌きの複合技。リリエラ我流の喧嘩殺法。 ビルの剣は弾かれ、リリエラの体術によって更に体勢を崩され、完全に無防備になったビルにリリエラはとどめの一撃を見舞おうとするが、


キンッ!


「っ!?」


でたらめに、遮二無二振るわれたビルの剣により、必殺の一撃が回避される。

ありえない。

ビルにはこちらの斬撃など見えちゃいないし、あんなでたらめな剣が正確無比にこちらの剣を捌くことなど不可能のはずだ。

理解しがたいビルの超反応にリリエラは戸惑い、思わず手が緩んでしまう。 ……あんな無茶な芸当がいつまでも続くはずはない。で、あるならば、


「どんどんいくっスよ!」


「くぅっ……!?」


手数で崩すのが手っ取り早い。 リリエラは一気に間合いを詰めて斬撃の嵐を見舞う。

数は膨大なれど、精度は緻密。ただ闇雲に命を狙うのではなく、全てが『詰み』へ繋げるための重要な一手。

リリエラの目論見通り、ビルに全てを対処できるはずもない。


「うぐっ!」


リリエラの剣はビルの身体を容赦なく切り刻んでいる。


(所詮はこの程度……)


魔王の息子というのは肩書きだけ。正味の実力は聖力に頼るしかできないど素人。リリエラの敵ではない。


「ふぅっ!ふぅーっ!」


ビルは闇雲に剣を振り回し、致命的な一撃を避けるので精一杯。己の生に死に物狂いでしがみつく。

無茶な動きに呼吸を荒げ、命の活路を見逃さないように目を極限までに見開き、恥も外聞も捨ててビルは命にしがみつく。 生に対する壮絶なる執念に、リリエラは気圧されるが、


(……相手は防戦一方。落ち着いて対処すれば何の問題も無い)


防戦一方。防戦……一方……?


(どうして、まだ戦いが続いている……?)

続きもお願いします。

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