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21ピンチ

間が空いてしまいましたが、まだ見てくださる方はいるでしょうか?

「えっと……何か?」


不思議な感覚だった。 目の前の少女に恐ろしくてたまらないはずなのに、なぜだかビルの心は冷静さを保っている。

目の前の状況に集中しろ。観察を怠るな。情報を集めろ。 ビルは己の中からの忠告に従い、目の前の少女の言葉を待つ。


「おにーさん、この街じゃ見かけない顔っスね?」


「……まぁ、ちょっと前に外から来たばっかりだけど……どうして見かけないって言い切れるの?もしかして、街の人の顔を全部覚えてるとか……?」


「まさか。単に、おにーさんは一度見たら覚えられる顔だからっスよ」


「なんで……?」


「おにーさんみたいな可愛い顔……一度見たら忘れないっス」


「ぬぇ!?」


人懐っこい笑顔で言われ、ビルは不覚にも違う意味でドキッとしてしまう。


「えとえと……ありがとう……?」


「ふふっ、照れてるんスか?」


「いきなりそんなこと言われたら誰だって……って、痛ぁあ!?」


繋がれた小さな手はいつの間にかつねられていた。 見ればギロリとニアが睨んでいる。


「えっと、何か話があるんじゃないの?」


「ん?そうっスね。いわゆる聞き込み調査ってヤツっス」


「調査……?」


やはり、この騎士が声をかけてきたのは偶然ではないらしい。 明らかにビルとニアに照準を絞って声をかけてきたことがはっきりした。 最悪、魔族であることがすでにバレている可能性も十分に考えられる。


「この街に魔族が潜伏してる可能性があるんスよ」


「……!そんな馬鹿な……」


「真面目な話っスよ」


「そもそも潜伏なんてできるものなの?魔族なんて見た目で目立つじゃん」


「人間に近い容姿の魔族なんて結構いるっスよ?まぁ、少ない部類ではあるっスけど」


「そもそもこんな所に潜伏して何が目的なの?」


「それを調査中なんスよねぇ……」


「それに、ここにはエレノア様がいるんでしょ?魔族にとっては超危険な場所じゃん。そんな所に来てわざわざ事件を起こすようなことはしないと思うけど」


「へぇ、事件を起こすんスか?」


騎士の瞳の色が変わる。冷たく、心の底まで見透かしてくるような、心を縫い止めるような視線。


「……騎士が動くっていうのはそういうことじゃないの?」


「……そうかもしれないっスね。にしても、おにーさん……少し前に来たにしてはこの街に詳しいっスね。まさかエレノア・ブレイドの名前まで出てくるとは」


「そこまで詳しいわけじゃないよ。世間話で俺が外から来たって話題になると、向こうの方から勝手に話してくれるから……ていうか、話が脱線してない?」


「そうっスね」


騎士の少女は苦笑する。


「あの……そもそもどうして街に魔族がいるって分かったの?」


「街の外れに魔族の集団を発見したんスよ。アーフロ大森林のゲーロン湖でね」


「「!?」」


「安心していいっスよ。そっちへはかの有名なエレノア・ブレイド様が向かいましたから。まぁ間違いなく皆殺しにしてくれるでしょ」


ビルは己の感情を咄嗟に切り離し、小さく偽物の安堵の息をつく。


「なるほど。それでこの街にも魔族が いるかもって話になるのか」


「……そういうことっス。だからこうして外と内の出入りに神経をすり減らしているわけっスよ」


「さすがに中まで入るのは無理なんじゃない?そもそも、それほどに危険を冒して街に忍びこむほどの何かがあるわけ?」


「……なかなかどうして、見た目に反して肝の据わったおにーさんっスね。会話だけじゃ尻尾は出てこないか。まぁ、疑うだけの余地は残ったままっスけど」


「疑うって……どういうこと?」


「表情も自然。程々に驚き、程々に落ち着いている。会話にもおかしな点は無かったっスよ。おにーさんの話したことは一般論。明らかに不自然な点を指摘することはできないっス」


「……ならなんで疑うの?」


「どうして魔族が街にいない方向に話を持っていこうとするんスか?」


「だって……理屈で考えれば……」


「理屈で考えればそうっスね。でも、危険が迫る話に対して理屈だけの見方はちょっと不自然っス。言いがかりって言われたらそれまでっスけど」


「………………」


どうやら駆け引きでは向こうが一枚上手らしい。 そしてビルは悟る。このままおとなしく見逃してくれることはもう期待できそうにないと。


「おにーさんは及第点っスけど、お連れの子がね……さすがに顔に出すぎっス」


「「!」」


突然、騎士の少女の姿が搔き消える。そして、どこからかパシッとはたかれたのはニアの帽子。


「「!?」」


露わになるのは魔族の証拠。人間には存在しないツノとピンと尖った耳。 街を行き交う人々の足が止まり、


『おい……あれ……!』


『……魔族だ……!魔族だぁああ!』


人々の困惑は一瞬にして恐怖へと変わり、爆発的に伝染する。 人々は皆悲鳴をあげ、蜘蛛の子を散らすようにこの場から逃げていった。


「リリエラ様ぁあ!勝手な真似をされては困ります!このパニックどうするおつもりですか!?」


「さーせん。避難の誘導お願いしまーす」


「はわわっ!皆様、落ち着いて!大丈夫ですから落ち着いて避難を!」


群衆に紛れていたリリエラの部下と思しき騎士達が慌てて対応に追われる。 あっという間にビル、ニア、リリエラと呼ばれた騎士の三人を中心にぼっかりと大きな空洞が生まれる。


「さて、人払い完了っスね」


「………………」


逃げる?無理だ。リリエラの動きは見えないどころか動いたことすら分からなかった。戦って押し切るのも同様に論外。 ならばどうする?


(ママ……)


母親に助けを求めても無駄だぜ。


(……っ!)


おまえの力で切り抜けてみせろ。

母親を頼ろうとするビルの弱さを内なるもう一人の自分が一蹴する。 落ち着け。詰んでいる状況ではあるが、まだ詰んでいない。相手が詰めを躊躇ってくれるヒントがどこかにあるはずだ。 リリエラがその気になれば、このような状況はとっくに終わっている。 長引かせなければいけない何かがあるはずなのだ。

リリエラの話の進め方や状況から察するに、求めているのは情報。


(考えろ……)


リリエラは新生魔王軍の居場所に関する情報だけは完璧に掴んでいた。 しかしながら、リリエラはビルから情報を得ようとしている。 それはつまり、


(新生魔王軍が潜伏していたことの意味を求めている……!)


こちらの様子を探っているのは、新生魔王軍を発見したことから街が危機に見舞われるかもしれないという、あくまで推測に基づくもの。


だったら、付け入る隙はあるはずだ……!さぁ……駆け引きを続けようじゃないか……!

続きもお願いします。

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