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19陽動

見てくださってありがとうございます。

「団長、時間っス。集まった隊員はおよそ300。いつでもいける状態っスよ」


「ご苦労」


現在、屯所の会議室には要塞都市ボズの警邏にあたっている一番から十番までの騎士隊の隊長、副隊長の各二人。加えて副団長のリリエラと団長のエレノアの計12名が集まっている。

エレノアは簡単な状況のあらましを踏まえながら話を進める。


「アーフロ大森林のゲーロン湖周辺にて魔族の集団を確認した。数はおよそ50。中には元魔王軍幹部のミノ・モンターギュらしき姿も見られたとのことだ。連中は移動するでもなく、同じ場所に留まり続けている」


状況はシンプル。しかしながら、


「迅速に向かって殲滅したいところだが、この状況、あまりにも不自然な点が多い。皆の意見を聞かせてほしい」


「……不自然な点とおっしゃいますと?」


「ヤツらがそこにいる理由。連中は何が目的だ?ゲーロン湖は人里から離れた場所にあるとはいえ、全く人が寄りつかないわけではない。長く身を隠すには適さない場所だ。にも関わらず、連中がそこに留まる理由は何だ?」


エレノアの問いに最初に答えたのはリリエラ。


「連中は湖で遊んでたって話っスよね?だったら理由はそれだけなんじゃないっスか?」


「魔族の性質からそう考えるのも当然の話ではあるが……」


魔族の行動の指針は極端にシンプルな傾向にある。それは先の人間と魔族の大戦において発覚した事実である。

敵を見つければ策を弄することもせず、勝機の有無すらも計算せずに正面から向かってくるような馬鹿正直な種族なのである。

人間側が数で圧倒的に勝っている魔族を相手に勝利することができた大きな要因の一つである。

故に、リリエラが言うように魔族が湖で遊んでいるのなら湖で遊ぶことを目的にしているから湖に留まっているのかもしれない。

リリエラ以外の騎士隊長達もリリエラの意見に頷いている。しかし、


「果たしてミノ・モンターギュを相手に雑魚の魔族と同じ理屈が通ずるか?もう一度考えてくれ。それでも同じだと答えるのなら私もそれに従おう」


考えすぎだと口にする者はおらず、一同はエレノアに従って真剣に考える。 やがて、一番隊の隊長がポツリと口を開く。


「何かを待っているのが一つ理由として考えられる。何かといっても漠然としすぎているが……」


「漠然でもいい。何でも思いついたことは口にしてくれ」


一番隊の隊長を皮切りに、意見が段々と出始める。


「何か取引が行われる可能性もあるな」


「数を50用意している理由は?それだけ多くの物資がやり取りされるということか?」


「あの山道を多くの物資を運んで進むのは難しいんじゃないですか?」


「多くの物資をやり取りせず、かつ大人数を必要とする取引……難しいな」


魔族の目的が取引で話が進みそうなところへ、それまで静観していたリリエラが一石を投じる。


「あのー、普通に考えたら陽動じゃないっスか?」


「「「「……!」」」」


その一石は場に一番の波紋をもたらした。


「馬鹿な……魔族が策を弄するなど……」


「まぁ考えられない話っスけどね」


苦笑してリリエラは続ける。


「数は50。中には元魔王軍幹部のミノ・モンターギュ。人の目を引くには十分。こちらもかなりの戦力を割かなければいけない。仮にこの集団が囮だと判明したとしても、無視することは絶対にできない。見破られても尚、絶大な効果をもたらす見事な策っスね」


魔族を知る者が見ればとても低い可能性。しかし同時に無視してしまうには危険すぎる最悪な可能性。


「リリエラ、目的は何だと思う?」


「さぁ?ただ、考えるよりも捕まえて吐かせるのが早いんじゃないっスか?」


エレノアは各隊に指示を飛ばす。


「ゲーロン湖には私と一番隊から四番隊が向かうこととする。詳しい指示は進みながら行う」


各隊長はビシッと音がしそうなくらいの敬礼で応じる。


「五番隊から七番隊は街で巡回及び待機。いつでも動ける準備をしてくれ。八から十番隊は街の外で魔族が潜んでいないか探ってくれ。何か動きがあれば街への報告を優先すること。いいな?」


「「「「はっ!」」」」


「リリエラ」


「はい?」


「おまえは街に残って待機組の指揮を取れ」


「……いいんスか?」


漠然としたリリエラの返事だが、


「私がミノ・モンターギュに遅れをとるとでも?」


「思わないっスけど……」


「最悪な事態に備えて、おまえは街に残しておきたい。場合によっては私よりも危険な役回りになるかもしれんぞ?」


「うげっ……」


「まぁ、そういうわけだ。よろしく頼んだぞ」


「……へーい」


不承不承といった具合に返事をするリリエラ。 各々の役回りは決まった。


「話は以上だ。皆、配置についてくれ。ゲーロン湖へ向かう一から四番隊は街の正門にて迅速に集合。五分後には行動を開始する」


「「「「はっ!」」」」


これより、人間と魔族の戦いの火蓋は魔族の知らないところで勝手に切って落とされたのだった。

これからピンチになってきます。続きもお願いします。

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