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1話

「……どこだ、ここ?」


 いつも通り目を覚ましたはずなのに、見慣れた部屋じゃない。

 それに、明らかにこの世のものとは思えない不思議な場所だ。まるで雲の上に立っているような感じに、周囲は見渡す限り空間が続いているようでまったく終わりが見えない。


「俺はまだ夢を見てるのか? でも、夢にしては感覚が鮮明過ぎる」


「おっと、もう起きてたか。悪いな、待たせちまったみたいだ」


 急に後ろから声をかけられ、驚いて振り向いた。


 するとそこには、ちょっとイケてるおっさんが立っていた。

 今どきのおっさんは金髪なんだな、そんな頭でどんな仕事をしてるんだろうか? 普通のところで働くには少々主張が強すぎるな。


「待たせたってどういうことですか? おじさんが俺をここに連れてきたんですか?」


「おじさんか……まぁ、そうだよな。お前みたいな若者から見たら俺も十分おっさんか。これでも神の中じゃあ若手なほうだかから、できればおっさんてのはやめてくれ。結構傷つく」


「え? 神ってどういうこと?」


「説明がまだだったな。俺はお前の住んでいた世界を管理していた神だ。それと、お前をここに連れてきたのは俺で間違いない。命の恩人なんだから感謝しろよな」


 話が唐突過ぎてついていけない。このおじさんが神様だって? いや、でも確かにこの場所のことなんかも考えたら辻褄はあっているのかもしれないがすぐに信じられる話じゃない。

 そもそも、命の恩人ってのも謎だ。別に俺は命の危険に瀕していたわけでもない。いたって健康な高校生だったはずだ。


「命を助けてもらうような状況だったとは思えないんですが? 俺の身に何か起きる予定だったんですか?」


「予定というか、お前は死んだんだよ。だったら、命の恩人ってのもおかしいか。救えてないもんな」


「はい? いや、そんな記憶どこにもありませんよ。もしかして、俺のことからかってるんですか?」


「お前をわざわざここに呼び出してからかうなんて無駄なことをしてられるほど俺も暇じゃないんだよ。今回お前をここへ呼び出したのはある世界に転生してもらうためなんだ」


 今度は転生か。俺は死んだってのにも納得できてないのに、話が進んでいっている。これじゃあ、置いてけぼりだ。


「一旦、考える時間を貰ってもいいですか? まだ、頭の整理が全然追いついてなくて……」


「気にすんな。いくら考えたところで現状の把握なんてできやしないんだからな。その様子だと、俺が神だとか、自分が死んだとかいう話も信じ切れてないんだろ? それなら、いくら考えても無駄だ。俺の話を聞いて、それに従ってくれればいい」


「でも……」


「大丈夫だ、お前にとって悪い話じゃない。まずは、最後まで聞いてくれ」


「わ、わかりました」


 このまま考えたところでどうにもならなかったのはおじさんの言う通りかもしれないが、今の状態で話を最後まで聞いたとして俺の頭は処理できるのか? 今だって、まともに頭が働いている気なんて一切しない。

 でも、おじさんの話が本当で、俺が既に死んでいるとするなら転生できるって言う話は俺にメリットしかない素晴らしい話なんだよな。まぁ、あくまでも俺が本当に死んでたらの話なんだけど。


「これから、お前にはグリリンドというモンスターが生息している世界に転生してもらう。もちろん、お前の自我は持ったまま、今の体で転生させてやる」


「モンスターってどういうことですか? 俺は一介の高校生ですよ。無茶ですって」


「そう焦るな。俺も一般人をそのまま異世界に放り出してさよならするほど無責任じゃないんだよ。そもそも、こういう場合には能力を与えて転生させるのが通例になってるんだ。お前にも転生する時には能力を授けてやるからその点は心配するな。それと、お前には魔王を討伐するという任務が課されることになる。転生させたやる代わりに働けって言うことだ」


 モンスターに魔王。能力を貰えるとして俺が太刀打ちできるのか?


「話はわかりましたけど、その能力って言うのを貰ったところで俺はモンスターと対等に戦えるようになるんですか?」


「対等どころか圧倒できるだろうな。流石に魔王が相手となるとそうも行かないが、普通にモンスター相手に後れを取ることはまずない。そんなちゃちな能力を授けるなんて神として名折れだろ? 心配するな。能力はランダムにはなるが、どれも強力なものだ。後は自分の運を信じて強力な能力を引けることを祈ってくれ」


「能力を選ぶことはできないんですか? 運頼みなんてあんまりですよ。これで、微妙な能力だったら、異世界でとんでもない目に会うじゃないですか」


「安心しろ、微妙な能力なんて入ってない。どれを引いても戦えるからな。要は使い方次第って話だ。俺の話は理解できたか?」


 まだ、納得できない点はいくつもあるが、俺には異世界に転生するしか道は残されていないんだろうな。なら、だまって従うしかない。


「まだ信じ切れてませんが、わかりました。死んだのに生き返れるって言うんならそれは歓迎するべきですよね」


「おう、話が早くて助かるぜ。それじゃ、俺は神界からお前の成功を祈ってるからな。そりゃ、行ってこい」


「え? ちょっと待って……」


 俺の意識はここで途絶えた。

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