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95 専属狩人決定戦⑥

第ニ競技は、1位が俺、2位がなんとアルカだった。

最後の勝負はしっかり俺の勝ち扱いとなっていたので、もともと持っていた32個に、ロンタウの43個を足して75個。

アルカは57個で2位。

3位は知らない村人で13個だった。

ちなみにエフテルは2個、コウチは3個で終わっている。

村の中心に大きな火が燃えている。

人々は、その火の周りで思い思いに今日の祭りの話や、世間話に花を咲かせているようだ。

勿論出店もあり、様々な食べ物やお土産品が売られている。


「師匠、お疲れ様」

「おお、アルカ。アルカもお疲れ様。2位おめでとう」

「ふふ、すごいでしょ」


得意げなアルカにエフテルが寄ってくる。手には何かの肉の串が人数分。


「どうやってアルカはそんなに集めたの?全然競技中に見かけなかったけど」

「村の外にいた。あんま人いなかったから、集め放題だったよ」


そういえば村の外にも宝はあるって言ってたな…。

最終発表曰く、村の中に100個、村の外に50個、宝は隠してあったらしい。

村の中の宝はほぼ見つかったらしく、ほんの2名だけの村人が、隠しきった報酬の金一封をもらっていた。

1人は、床板を剥がして地面を掘り、宝を埋めていて、もう1人は飼っているペットに飲み込ませていたらしい。誰が見つけられるんだよそんなの。

アルカは外で3、40個くらい集めたあと、案の定勝負を仕掛けられまくって、全部勝利。それで最終的にに57個というわけだ。


「お姉ちゃんは悲しい!そんな抜け駆けするならあたしにも言ってよ!」

「真剣勝負でしょ。作戦勝ち」

「くぅ~!」


地団太を踏むエフテルを得意げにアルカが眺めている。

そんな様子をほほえまし気に眺めていると、コウチとカーリに連れられて、ロンタウもやってきた。

頭に包帯を巻いているが、自分で歩けている。大事なかったようだ。


「その…指導役。助けてもらったみたいで…その…すまなかった」

「全く、功を焦って大怪我って、一番狩人がやってはいけないことだろ。そんなんで1級なれるのか?」

「…返す言葉もない」


うぐ。

軽口のつもりで言ったが、真面目に受け取られてしまったようだ。

カーリとコウチからの視線も痛い。なんとかフォローせねば。


「でもまあ、ほら、いいもの見せてもらったし、トントンだよ!」

「最低!」


エフテルにぶん殴られた。

コウチは爆笑してやがる。


「やっぱすごいんだな、指導役は。片腕だってのに、ロンタウは歯が立たなかった。認めるよ、ロンタウの完全敗北だ」

「まあ、年期が…」


違うと言おうとしたが、ロンタウの方が狩人歴は長い。嫌味になってしまう。

俺の方が若いしっていうのも完全に煽りだ。


「……」


あーもうなんもしゃべれねえや。


「指導役」

「あ、はい?」


脳内で会話を諦めていたので、話しかけられて、一瞬びくっとした。


「指導役は、好きな人とかいるのか?」

「え?」

「は?」

「ん?」

「はい?」


俺の困惑の声と、“四極”女性陣の威圧のような声が聞こえた。


「いやいや、ロンタウは指導役に負けただろ?じゃあ、ロンタウは指導役のものってわけよ。それに何回も肌を見られたし、ロンタウももう結構な歳だし、こうなったらもう指導役にもらってもらうしかないなって。恩もあるし、気軽にね?いや特に深い意味はないんだけどさ」


すっごい早口。

あと肌を見られたというか、お前が見せてきたんだからな。


「ロンタウさん、少し、頭を打たれて混乱しているようですわね。あちらでお休みしましょうか」


ニコニコとしたカーリにロンタウは再び連れていかれた。

コウチは爆笑している。


「流石に年齢のアドバンテージがあるからね。負けないけどさ」


何の勝負の話でしょうか、エフテルさん。

さて、第二競技が終わって、結果発表が行われたこの場所になんとなくとどまっているが、第三競技はいつ始まるのだろうか。第三競技まであるって言ってたよな?

と思っていると、丁度司会が少し高い台に乗って声を張り上げた。


「それでは、専属狩人決定戦の最後のイベント!花贈りスタート!」


は?なんのこっちゃ。


「え?え?」


みるみるうちにエフテルとアルカ、そしてコウチの前に行列ができる。

遠くに見えるカーリとロンタウにも多く人が集まっているようだ。

俺の目の前にも3人ほど人が並んでいる。


「お疲れ様です。これからも弟子さんの指導よろしくお願いします」

「お、おう…」


そう言って、俺に花…に見える鉱石を渡して村人は去っていく。


「専属狩人決定戦、かっこよかったぜ!俺も将来狩人になるよ!」

「お、おう、頑張れ!」


小さな男の子にも鉱石を渡される。


「あの、“双極”のころからのファンです。頑張ってください!」

「ありがとう。ねえ、あの、これはどういう催し?」


俺の前に並んでいた最後の1人を捕まえて、事情を聞く。


「あれ、これが専属狩人決定戦の最後の競技ですけど…聞いてませんでした?」

「うん、聞いてなかった」


というか説明されてたか?

この祭り、ずっと思ってたが、いつも身内だけで開催してるからルール説明とかが雑なんだよ。


「専属狩人決定戦の最後は、競技参加者以外に1つずつ配布されたこの石を、一番渡したい人に渡すんですよ」

「なるほどね…思ったより合理的な競技だったな」


専属狩人決定戦とは、まさしく専属狩人に必要なものを試されていたというわけだ。

第一競技では純粋な強さを。

第二競技では注意力や応用力を。

そして第三競技では人望を。

この全ての総合力でその年の専属狩人が決まるというわけだ。

確かに弟子たちの前には、船乗りや作業員たちが多い。

八方発泡魚や七色剣山のときに救った人たちということだろう。


「って、そうなると俺の人望少ねえ…」


3人って。


「いや、そんなことないみたいですよ」

「え?」


顔を上げると、そこにはさらに5人くらいの村人が並んでいた。


「ロンタウを助けてくれてありがとう!」

「かっこよかった!」

「あのロンタウに勝つなんて」

「ロンタウが世話になった」

「…これ、どうぞ」


いつも思っていたことがある。俺は指導役で、主役は“四極”の4人。あくまで俺は裏方だと。

でも、実際にこうして思いを伝えられると、こう、胸の奥に感じるものがある。

これは、メッツ村では当たり前のことだと思っていたことだ。

それが当たり前ではなくなり、やっとその価値に気づけたんだな。


「みんな、こちらこそありがとうございました!」


俺は頭を下げた。

その様子を見て、弟子たちは驚いた様子だったが、


「ありがとうございました!」


すぐに追従した。

このヒシガツマ村にはお世話になった。

聞くところによると、いつもはロンタウ一強らしい。

それが、こんなに感謝の花を贈る人間がバラけたのは初めてだそうだ。

それだけ俺達がこの村に馴染むことができたということだろう。

アオマキ村に戻れば、このヒシガツマ村に来ることもかなり減る。

それでも、たまには顔を出して、ロンタウと一緒に仕事でもしたいものだ。


「師匠!こんなにもらっちゃった!」

「わたしはお姉ちゃんより多い」

「俺もこんなにもらっちまったぜ」

「わたくしは少し皆より控えめですかしら?」


弟子たちがわらわらと集まってくる。

皆、村人からの感謝のしるしをたっぷりと受け取ったようだ。

カーリについては、七色剣山戦で大きな戦果を挙げたことを村人は知らない。船上戦や、坑道の偵察で直接村人と接したから、アルカやコウチはその分多いのだろう。


「はーい、回収しますねー」


祭りの運営の人が、俺達が村人から貰った鉱石を回収していく。


「あ、回収されるのね…」

「この花みたいな鉱石、貴重で市場にも滅多に出回らないんですから。来年も使いまわします」


せっかくなら1つくらいもらっておきたい気持ちもあったが、そういうことなら仕方ない。


「エフテルとアルカ、今ポケットに隠した鉱石も出せ」

「ちっ」

「…流石師匠」


こいつ等は…。

こうして午後から始まった専属狩人決定戦は終わりを迎えた。

なんだかとても長く感じた…。

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