115 楽しい休日の始まり
「あ、そういえば、アルカが20歳になったんだよ」
いつもどおり朝、集まっているときに、エフテルがそんなことを言い出したのが始まりだった。
「おお、ついに20歳か!」
別に20歳になったからといって何もないが、節目と言う意味では分かりやすくめでたい。
「おめでとうアルカ!」
「おめでとうアルカさん」
「おめでとうございます、アルカさん」
「あたしは朝言ったけど、もっかいおめでと!」
全員から祝福されたアルカだったが、相変わらず無表情で、
「ありがとう」
と返しただけだった。
しかしちょっぴり照れくさそうにも見える。
どうせしばらくは狩りにも行けず暇なのだ。
「今日はアルカの20歳祝いをする日にしようか」
基礎トレーニングばかりだと、逃げだしそうなやつもいることだし。
「えー!それはいいんだけどさ、不公平じゃない!?」
エフテルがまた騒いでいる。
「不公平って、何が」
「あたしはお祝いされてない!」
「あー、そういうね」
確かに祝わなかったが、言われないと分からんし…。
「そもそも、俺、お前らの年齢知らないんだけど」
俺はコウチに目を向ける。
「俺は23」
そしてコウチはカーリへバトンを繋ぐ。
「わたくしは22歳ですわ」
「あたしは21!もうすぐ22!」
聞いてもいないのに、エフテルが主張してくる。
「みんな若いなあ…」
もうすっかり俺はおじさんだ。
「師匠は何歳?」
アルカに訊ねられたので、少し悲しい気持ちになりながら答える。
「俺は32だ」
「うわ三十路…ったーい!暴力だ!」
「人の年齢を馬鹿にすると、ロンタウに殺されるぞ」
俺はエフテルをぶん殴りつつ、実は年上だったロンタウを思い出す。
2年前が36歳だったから、今は38歳か…。
「時の流れは残酷だよな」
「お師匠さんこそロンタウ姐さんに殺されるぞ」
女性の年齢の話はデリケートだ。まして、歳をとればとるほど。
「でもロンタウはそんな歳に見えないからなあ」
「そうだな…いやあ、そうだなあ」
俺とコウチはしみじみと語る。
女性陣の目が冷たい。
「サイテー」
「スケベですわ」
「…負けてない」
俺達はひどい誤解を受けている気がする。
別に胸の話なんて誰もしていない。
「ってことは、お前らと出会ったときは、それぞれもっと若かったわけだ」
強引に話を変える。
先ほどと同じく、コウチ、カーリ、エフテル、アルカの順で年齢を言っていく。
「すでに20だった」
「19歳ですわ」
「ぴちぴちの18歳!」
「16歳」
えっ、アルカは16歳であの成長っぷりだったの。
「いてぇ!師匠を殴る弟子がどこにいる!」
「さっきのお返しと、なんか邪悪な気配を感じたからだよ!」
エフテルから殴られ、せっかくうまく逸らした話題が再び怪しくなってきたので、さらに方向修正。
「今まで年齢なんて気にしてこなかったが、こうしてみると、お前らが狩人になってから、結構経ったんだなぁ…」
狩人ですらなかったエフテルとアルカが球吐き鳥を討伐して、その帰り道にカーリとコウチに出迎えられて。
それから“四極”を結成し、それからもう約3年だ。
「あっという間だったな」
「そうですわねえ…」
思い返せば色んなことがあった。
「何をセンチメンタルになってるのさ。過去を振り返らずに、未来を見ようよ」
エフテルに言われると、少し考えるものがある。このアホっぽいやつに言われる少しの腹立たしさと、姉妹の壮絶な過去を思い出させたくないという気持ちだ。
「うん、確かに、これからのことが大事だな」
「そうだよ。たかが3年で。私たちはこれからもっと長い間ずっと一緒にいるんだから」
アルカにそう言われて気が付く。
“四極”の最終目標は俺のかたき討ち。つまり危険度7への挑戦。それはイコール特級狩人になるということだ。
俺ら“双極”が特級になるまで、だいたい10年くらいかかった。
そう考えると、最速でもあと7年は一緒にいるんだな。
「そのころには皆三十路か…」
「そのころには師匠は四十路だね」
「………」
やめろ泣くぞ。
「じゃあ、今日はアルカだけじゃなくて、全員の誕生祝いとしようか。俺が奢るから、この村で自由に遊ぼう」
折角なので、全員一緒に祝ってやろう。
「トレーニングは良いのですか?」
真面目なカーリが言うが、
「一日くらい予定変更しても何の影響もないさ。って師匠なら言うよ」
と、エフテルが俺が言おうとしたことを言った。
「ま、そういうことだ。アオマキ村も随分デカくなった。ゆっくり見て回る時間もなかったし、たまには全員でオフの日を過ごすのもいいだろ」
アオマキ村にも飲食店や雑貨屋などが新しくできている。
俺達が来たばかりの、民家すら建っていなかったころとは違うのだ。
「ちょっと楽しそうだな」
コウチが言う通り、きっと楽しい日になる。
ヒシガツマ村の祭りは別々に回ったし、5人で歩くのは初めてだ。
「そうと決まれば、早く行こ!」
エフテルが酒場を飛び出していく。
「悪いな、まとめてのお祝いになっちゃって」
俺は本来主役になるはずだったアルカに言う。
するとアルカは、首を横に振った。
「ううん。師匠のことは好きだけど、皆のことも普通に好きだから。たまには、いいんじゃないかな」
おお、アルカがここまで言うか。
「普通に好き…?って、どのくらいなのかしら…」
カーリが頭を傾げている。
「ま、アルカさんが珍しくああ言ってくれたんだ。素直に受け取ろうぜ」
コウチがカーリに声をかけ、そうですわね、と2人も席を立つ。
「楽しい休日の始まりだな」
年甲斐もなく、俺もワクワクしてきた。
突然の休日だが、目一杯楽しむこととしよう。
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