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113 感謝の実績

森が正式に立入禁止となる少し前。

緊急依頼、蛇嵐討伐の後のことだ。

俺と“四極”、レイとルミスが村に戻ると、大勢のアオマキ村の住民が門の前で俺達を出迎えてくれた。

昔からいた南の国のマッチョたちに加え、徐々に増えていった住民たちが、笑顔で出迎えてくれている。

まず代表して、村長が口を開く…前に、人混みの中から、ペイっと一足先に村に報告に言っていたミーンとハルゥが前に押し出されてきた。

そして改めてウエカ村長が口を開く。


「“四極”、レイ君、ルミス君、そして突然にもかかわらず参戦してくれた“豊穣の奏”の2人。本当にありがとう。アオマキ村の危機は、君たちのおかげで去ったよ!」


村長がそう言ったのをきっかけにワーッと村人たちが大挙して押し寄せてくる。


「助かったよ!ありがとう!」

「この村で店を開いたばかりだったんだ。避難ってことにならなくて本当に良かった!」

「マッチョ!」

「そこ女の子2人もありがとねえ!」

「もちろん我らが“四極”も!」


村人たちは口々に感謝を叫びながら、狩人たちを揉みくちゃにする。


「おお…、蛇風の進撃より迫力あるな…」


レイと俺は、少し離れたところでそれを見ていた。ルミスも怪我人なので、俺達といる。

そんな少し離れたところにいる俺達に、ウエカ村長が近づく。


「いやあ。今回も本当に助かったよ。流石は我らが狩人君!」

「相棒と俺様と、あとおまけにハゲがいなきゃこの村は終わりだったな!ガッハッハ!」


レイが大口を開けて笑う。

なんてことを言うんだと思うが、事実だったので、今回は言わせておこう。


「これは“四極”にとって、良い実績になったよ」


村長が言う。


「そうだな」


俺は同意した。

“四極”は、アオマキ村のライフライン関係が安定し、移住が始まったころに丁度ヒシガツマ村にいた。

それに帰ってきてからの2年間も平和そのもので、村に大きな貢献はしていたものの、その功績は村の運営に携わるものしか知らなかった。

その認識が今回の蛇嵐の一件で、一気に変わる。

お飾りの専属狩人だと思われていた“四極”が、新しい村人たちから認められたのだ。

これは、今後もアオマキ村で専属狩人としてやっていくうえで一番大事なものだ。


「専属狩人決定戦、第三競技!だね!」


ウエカ村長の言う通り。人望が大事なんだな。

と、別に特に意味はないが、レイを見る。

“四極”不在の半年間、専属狩人代理をやっていたはずの男で、今回の緊急依頼でも最も働いた男だ。しかし村人は誰も寄ってこない。


「大丈夫、俺はお前の活躍を知ってるよ」


ポンポンとレイの肩を叩く。


「お?おお、相棒!」


なんも気にしてなさそうだなコイツ。


「とにかくお疲れ様。色々話しはあるのかもしれないけど、それはまた後日で。少しゆっくりするといい」

「ああ、そうだな」


村長には、森の奥に潜む半透明の竜について伝える必要がある。

しかしそれは今じゃなくてもいい。

弟子たちに目を向ける。


「うひゃああああああああああ!」


弟子たちはマッチョに持ち上げられ、グルグル大回転させられている。

ミーンも同様に持ち上げられていたが、ハルゥは遠慮していた。

俺が見ているのに気が付いたハルゥが、こちらへやってくる。

人混みが素直に割れるのは、ハルゥから溢れるフェロモンのおかげだろうか。

少し汗ばんだ様子でこちらに駆け寄ってくる姿は、思わず目を背けたくなるほどに眩しい。

アルカも中々に胸部が発達しているが、彼女は小柄故にアンバランスだ。そこが背徳感があって良いともいえるが、ハルゥのスタイルは完璧だ。


「いいですよね、こういうの」

「そうですね」


おっと、直前に考えていたことのせいで、何も考えずに適当に敬語で即答してしまった。

少し困惑しつつ微笑んでいる姿も可愛い。

歳もきっと弟子たちやロンタウよりは近いだろうし、これは俺の春がやってきたのだろうか。


「ちゃんと聞いてますか?」

「あ、ごめん」


全く聞いてなかった。


「わたしたち、専属狩人じゃなくて、色んな村を転々としながら狩りをしていたんです。だから、こんな風に村総出で感謝されることなんてなくって」

「まあ、そうだよな」


流れの狩人なんてそんなもんだ。報酬のうまい依頼や、今必要としている素材を目当てに獣を狩る。そこに村人の思いは確かに介在しない。

長くやっていればたまたま村人との利害の一致で感謝されることもあろうが、まだ3級ではそういう経験は少ないのだろう。


「だったらせっかくなら、混ざってくればいいんじゃないか?」


絶賛感謝され中である。


「いやあ…流石にあそこまでは…わたしは、ここで皆さんの感謝の気持ちを感じるだけで十分ですから」

「…そうか。で、俺達に何か用か?」


別に胴上げが嫌なだけならこちらにまで来る必要はないだろう。


「特にありませんけど、あの4人のお師匠さんをちゃんと見たくて。それに、多分この村の中心人物はあなたかなって」


手を後ろに組んだ状態で、下から見上げられる。

これが、上目遣い…!


「それ以上の師匠の誘惑は許さない」


いつの間にかやってきたアルカが、俺とハルゥの間に滑り込む。

まあ、アルカもこういう村人とのスキンシップは嫌がるタイプだし、抜け出してくるか。


「あ、細剣使いの子だよね。同じ武器同士、仲良くしようね」

「仲良くできるかはあなたの態度次第…」


ガルル…とうなり声が聞こえそうなほど睨んでいるアルカの頭に軽く手を置く。

するとアルカは、露骨に睨むのはやめてくれた。


「仲良くしような。細剣の使い方を教えてもらえ」

「はい」


気が付けば、徐々に村人の群れが動いている。皆を担いだまま、酒場に行くようだ。


「さ、祝勝会だ。俺らも行くぞ」


彼女ら2人だけではない。

レイやルミスにも声をかけたつもりだ。


「俺様パース」

「すまない、俺も少し、休ませてくれ」


こうして男2人はそれぞれ酒場ではない方向に歩いていく。


「俺は当然行くよ?」


ウエカ村長が自分を指さしながらニコニコしている。


「だろうな」


俺達4人は、村人たちの後ろをついていく。

エフテルとアルカが持っていた素材は、村人たちが持ってくれている。

ということは、向かう酒場は、やはりいつものギルドの窓口があるあの酒場だろう。

ふと、目の前で揺れるポニーテールを見ていると、先ほどハルゥが言っていたことを思い出した。


「ハルゥ、ミーンにも伝えといてくれ」

「ん、なんですか?」

「狩人は、色んな人のサポートがあって初めて万全に働くことができるんだ。今回は2人にとって、貴重な機会だから、目一杯感謝されて、是非盛り上がってくれ」

「…もうすっかりわたしたちのことも弟子扱いですね?」

「ああいや!そんなつもりじゃなかったんだが…少し偉そうだったか、すまん」


頭を下げる俺を見て、ハルゥのクスクスっという笑い声が聞こえた。


「冗談ですよ。貴重な先輩の助言、ありがたく受け取らせていただきます」


ニコッと笑って、ハルゥは人込みに消えていく。ミーンに合流しにいったのかな。

袖をくいっと引かれたので、下を見るとアルカがいた。


「どうした?」

「師匠、あの女は危険だよ。気を付けたほうが良いね」

「そうか?」

「うん、絶対。そもそも、あんな見た目も中身も良いなんて女いないんだから」

「そ、そうか」


いつしかエフテルが言っていた言葉を思い出す。

アルカは人を見る目があるから…。

今に関して言えば、曇っている気がするが、まあ、可愛い弟子がそう言うんだ。心の片隅にでもとどめておこう。

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