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107 緊急依頼、蛇嵐⑦

最初に動き出したのはレイ。

森の木々の動きや、音などから蛇風の出現位置を予測し、走り出す。

そして丁度平原に出た瞬間に一刀両断。

あの洞察力と、素早さと、攻撃力。全て兼ね備えているからこそ、イレギュラーな蛇風の侵攻にも耐えきれたのだ。


「化け物じゃーん…」


ミーンは完全にドン引きしている。

次に蛇風が現れたのは、そんなミーンのところ。

「ミーン!」

「分かってるじゃん!」


ハルゥの声掛けに反応して、ミーンが蛇風に向かって針を投擲、見事命中するが、その進撃が止まることはない。


「ちっ」


ハルゥの隣りのアルカがフォローしに行こうとするのを、ハルゥが手で制した。

俺も安心して見ている。


「大丈夫、ウチの針は特別製じゃん」


体をくねらせて爆走していた蛇風は、俺達の後ろでゆっくりと動きを止め、やがて動かなくなった。


「すごい!なにあれ!」

「この狩りが終わったら教えてあげるじゃん?」


エフテルはやはり同じ針使いとして、興奮している。

ネタばらしをすると、ミーンの針には毒が塗ってある。

だからとりあえず当てさえすれば、一定の効果がある。

エフテルのように、毎回完璧に敵の急所に命中させ、直接命を奪う針使いのほうがイレギュラーなのだ。

とはいえ、俺もそっちだったので、あまり状態異常系の針は使ってこなかったし、指導はしなかったのだが、使い分けできれば今後のエフテルの糧になる。

流石に危険度4を昏倒させる毒ともなると、危険度5以上の獣の毒だろうが、その辺は後で本人に訊けばいい。

さて、次々とほぼ同時に蛇風は森から飛び出してくる。

コウチは一撃で、アルカは炸裂機構を使い、エフテルは複数本の針を使って仕留めている。

問題はカーリだ。回転刃はスパッと切れるわけではなく、ゆっくりと裁断していく武器なので、今回のような速度が求められる狩りには向かない。


「くっ…!」


1匹の処理に手間取っている間に、もう1匹やってくる。

エフテルも自分の目の前の敵に対応中で、カバーできない。


「何やってるの。もっとちゃんと首とか頭とか狙って、瞬殺しないと」


俺がカバーに行く前に、駆けつけたのはアルカだ。

持ち場の放棄が過ぎると思い、ハルゥを見ると、親指を立てている。まあ、事前に断っているなら良し。

それに、あの遠くから、カーリの持ち場まで一瞬でやってきたのは、炸裂機構を使っての加速だ。

相変わらずカートリッジの使い方がうまい。


「た、助かりましたわ」

「師匠の手を煩わせたくなかっただけ。もっと頑張って」


そう言ってアルカは持ち場に戻っていく。

最後の“頑張って”は少し優しげだった気がする。

やはり徐々に関係は改善してきているのだ。

俺は嬉しい。なんならちょっと涙ぐむ。

さて、それから20分ほど闘いは続き、蛇風の侵攻は止まった。

思ったより数は多くなく、各人2、3匹(レイは10匹以上)討伐したあたりで、波は途切れた。


「終わり!?師匠、もういい!?」


エフテルはもう疲労が限界なのだろう。どんなに鍛えてもスタミナだけは伸びないやつだ。


「よし、次の段階に作戦を進めようか」


エフテルほど息が上がっている人間はいないが、それぞれ多少は疲労の色が見える。

森での探索戦から、休憩なしでのミスが許されない防衛戦。肉体的な疲労もだが、精神的な疲労もあるだろう。

特にミーンとハルゥは急に作戦に組み込まれて、何もわからない状態で参加したにしては、かなりの戦果を挙げていた。


「改めて、アルカさん、ありがとうございました」

「別に。これから師匠が喋るから、静かにしてて」


俺に全員駆け寄ってくる最中で、カーリがアルカにお礼を言っていたが、一蹴されていた。あれ、さっきは仲良く見えたのになー…。


レイも含めて、全員が集まる。


「さっき言った通り、この後はレイを草原に残して、俺と6人の狩人で遺跡に向かう」

「なあ、俺が遺跡に行った方が早ぇだろ。もしハゲが手こずるような状況なら、ガキどもが行っても何の役に立つんだ」


レイの言うことは最もだ。

しかし、万が一ということもある。


「念のため、な。レイはだから、草原で休んでてくれ」

「ふぅん…ま、そういうことならいいけどよ」


レイには伝わったようだ。

もし万が一、遺跡に突入して、“アイツ”がいたとしたら、レイだけでは勝てない。

複数人で偵察に行って、万が一未知の強敵と遭遇した場合、人数が多い方が逃げられる確率は増すし、レイに状況報告をできる可能性は高くなる。

…少し非情な判断だが。


「ちゃんと、しろよ。俺様はコマンダーのときのこと、忘れてねえからな」

「分かってるよ」


これは念押しだ。

万が一のときは、弟子を見捨ててでも状況を伝えに来い。あの時のように心中するような真似はするな、と。

まあ、“四極”はもう1人前に近い狩人だ。あの頃のように一から十まで面倒を見なければいけない存在ではない。

とはいいつつも、もしその時が来たら絶対に見捨てられる自信はないが。

とはいえ、多人数のほうが生存確率が上がるというのは変わらない。


「よし、ミーン、ハルゥ。申し訳ないが、付き合ってくれ。こいつらじゃ、もし蛇嵐がいたときにきついだろうから」


2人は3級。危険度5の蛇嵐とは戦える力を持つ。

“四極”だって昇格していないだけで3級程度の実力はあると思うが、目に見える強さの指標ってのは分かりやすい。


「ウチらも3級なったばっかで自信ないけど、まあ、放出後の蛇嵐なら行けるじゃん?」

「弱っているだろうね」


お、この2人はちゃんと勉強しているな。


「そうだな。蛇嵐は蛇風を放出するのに体力を使う。だから今がチャンスなんだ」


弟子たちは、へー…と言っている。

ミーンとハルゥの後輩たちを優しく見守るような視線が師匠としては恥ずかしい。やはり甘やかしすぎずに、モンスターブックを読ませるべきだな。


「よし、じゃあ行け、女どもガキども。ハゲが死ぬ前にな」

「相変わらず口悪いね!全く。素直にルミスさんが心配だから急いでくれって言えないのかな」


もうエフテルは完全にレイに慣れているし、その乱暴な言葉の意味も分かっている。あのレイと対等に話せるのは、俺とお前くらいだ。


「レイのいうとおりだ。少し急ぐぞ」


森の遺跡では間違いなく何かが起きている。

急ぎつつ、注意を払いつつ、だ。


「じゃあ、遺跡までの案内をお願いします。あなたたちは、あなたたちの師匠の後ろを追うわたしたちに付いてきてね」


ウインクを飛ばしつつ、後輩を気遣うハルゥ。なんというか、女性らしさを全面に押し出した仕草というか、話しているだけで惚れそうになる危ないフェロモンのようなものが出ているきがする。

俺はなんとか大丈夫、コウチも…。


「リイアが待ってる俺にはリイアがいる」


自分の彼女のことを思い出して理性を保っているな。

では、ハルゥの言う通り、年功序列で進もう。

俺達はレイを残し、森に入っていく。

ルミス、無事だといいが…。

どなたか感想いただけますか…?

この作品が皆さんにどう思われているのか、気になって夜も眠れません…!

どなた、どなたか!

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