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106 緊急依頼、蛇嵐⑥

「なァ相棒…本当に、一番大変な仕事を俺様に押し付けたみてえだなァ…」


草原では、レイが少しだけ息を荒げながら、額に青筋を立てていた。

それもそのはず、草原には両手の指では数えきれないだけの蛇風の亡骸がある。

見える範囲でこれということは、実際はこの数以上の蛇風をレイが片付けていることになる。


「ガキども…ハゲ…サボってんじゃねえだろうなッ!?」

「いや、これは俺も予想外だ。森の中でも結構な数の蛇風を討伐している。ここまで草原に出てくるっていうのは…」


話している間にも、蛇風が森から出てくる。

こちらに真っ直ぐむかってきたそれを、レイは上段から大剣で真っ二つにする。


「またこれだ!」

「そうだなあ…」

「そうだなあ、じゃねえ!どう考えてもおかしいだろうが!」

「一番可能性が高いのは、蛇嵐が遺跡に複数匹いたってことくらいか…?」

「しかもこの数、2匹どころじゃねえ、3匹4匹いてもおかしくねえぞ」


遺跡の中は調査しなかったという。内部がそんな地獄になっていたとは考えたくないが、ありえない話ではない。


「ともかく、作戦変更だ。これじゃあ森の中でどれだけ狩ろうが意味がない。全員で草原で迎え撃つ方が現実的だ」

「最初からそれでよかったろうが」


レイはそういうが、実際に蛇風と“四極”がどの程度戦えるか、余裕はあると思っていたが確信はなかったし、人手も足りなかった。

しかし、今なら断言できる。

この程度ならば、弟子1人でも討伐できる。

それにミーンとハルゥの存在もある。3級が加わってくれるなら、森を包囲することも可能だ。


「いずれにせよ、信号弾を見た全員が草原に戻ってくるだろう。そこで改めて作戦会議だ」

「話す余裕があればな」


こうして話しているうちにも、蛇風は森から草原へ、草原からアオマキ村へ向かっていく。

それをレイは順番に瞬殺していく。

心配なのは、ルミスだ。


「ちっ…あのハゲ…死んでねえだろうな…」


同じ考えに至ったようで、レイも呟く。

もしも蛇嵐が3匹も4匹も狭い遺跡の中にいたら。当然蛇風も大量にいることになる。

流石にそれは、1級狩人のルミスといえどもソロでは厳しい。


「何事もなければいいが…」

「死んでたら殺してやる」

「無茶言うな…」


支離滅裂なレイの発言を流しつつ、俺はこれからどうすべきか、頭を回転させていた。


§


こうして、“四極”の全員と、ミーンとハルゥが草原に集まった。


「ということで、新しい作戦を伝える」


俺が話始めると、ミーンが恐る恐る手を上げる。


「はいどうぞ」

「あそこの人、滅茶苦茶怒りながら1人で蛇風狩りまくってるじゃん…?作戦会議とかする余裕あるのかなって…」


確かにレイが怒りを叫びながら、1人で蛇風を蹂躙している。

人間である以上、1人では対応できないとかいったが、なんか対応できてるな。

まあもちろん、永遠には続かないだろうが。


「ま、彼は俺の信頼する元相棒だ。作戦会議の間の時間稼ぎを頑張ってくれている」

「現、相棒ッだ!!」


耳が良いな。

されはさておき、まずは情報共有。


「見ての通り、レイは1人で20~30匹の蛇風を狩ったみたいだが、お前らは?」

「8匹」

「ですわね」


アルカとカーリは8匹。


「あのあと…6だっけ?」

「8だ」


エフテルとコウチは9匹。


「ウチらはあのあと13匹狩ったじゃん?」


おお、流石3級。すごいな。


「ということは、森の中だけで合計30匹は討伐している…のに、草原ではこの有様だ」

「数、おかしくない?」

「そう、エフテルの言う通り、数がおかしい。多くて20匹程度だと思っていたが、その倍…いや、3倍はいる。これはどう考えてもおかしい」


もしアオマキ村に狩人がいなかったら、この森では蛇風が大量発生し、生態系が壊れていただろう。


「つまりこの異常は、森に魔物が出なくなったことと関係があると俺は考えてる」

「相棒、前置きが長ェ!今話すべきことだけ話せ!」


大変そうなレイが叫ぶ。

確かにこれは今考えるべきことではなかったな。


「すまん、余計な話だった。本題に戻すと、俺はルミスが向かった遺跡の方で何か起こったと思っている」

「何かって?」


コウチが訊ねるので、俺は今考えられることを話す。


「例えば、蛇嵐が複数匹いるか。例えば…蛇嵐の上位種のような特殊な新種がいるか」


俺の仮説に、ミーンとハルゥが口を挟む。


「新種…じゃん…?」

「でも新種の獣なんて、この数年見つかってないんじゃ…」


一般的にはそう言われているが、俺とレイが遭遇し、俺の右腕を 奪ったのは間違いなく新種だ。

それに、今まで見つかっていないということは、目撃者が全て殺されているからという可能性もある。


「とはいえ、この可能性は自分で言っておいてなんだが、低いと思っている。蛇風の超大量発生なんて今まで他の町とかでは聞いたことがないからな」

「相棒、話が、長ェ!」


そろそろレイも限界か。

どうも思考全てを話そうとする癖が治らない。


「ということで、まずは草原にあふれる蛇風を一掃する。無限に沸くわけじゃない。ここにいる全員で当たれば、なんとかなるはずだ」

「なんとかなるかな?」


エフテルが不安げに言うが、俺は何とかなると思っている。


「全員、1人で1匹の蛇風を狩る実力があると見込んでいる。等間隔で森を囲み、出てきた蛇風を叩く。出てこなくなったら、レイを残して全員で森に入り、遺跡まで向かう。いいな」


全員が頷いたので、俺は細かい場所の指示をしていく。

等間隔と言ったが、実力に応じて担当する場所は変える。

レイには相変わらず広く担当してもらい、ミーンは武器の特性上幅広く対処できるので、こちらも少し負担をかけさせてもらう。

細剣のハルゥとうちのアルカは、動き回ってお互いをカバーできるように少し近くに配置、コウチ、エフテル、カーリの順で均等に配置。

これがベストなはずだ。

ちなみに俺は、万が一蛇風に防衛線を抜かれた場合の時間稼ぎ役として全範囲を見る。


「ここが最終防衛線となると、途端に不安ですわね…」

「大丈夫だカーリ。もうこれだけ蛇風を倒している。全員で集中すれば、すぐ終わるさ」


それこそ無限に沸くなんてことは絶対にありえない。

だからこそ、集中してここで殲滅する。


「さて、始まったぞ」

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