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103 緊急依頼、蛇嵐③

「じゃ、俺様はここで待機しとく。精々頑張れ、ハゲ、ガキども」


草原でレイとはお別れだ。

適当な岩に腰を掛け、大剣を地面に刺して、レイはそう言った。


「言われなくても頑張りますよー!」


エフテルは舌を出して言い返した。歩みは止めず、歩きながらだ。

全員、今回の狩りの緊急度は理解している。

無駄な時間を過ごす暇はないのだ。

草原を少し歩いて、森に入る。

一気に視界が悪くなるが、この森の中には今、複数の蛇風が徘徊している。


「じゃあルミス、俺達はこの辺で蛇風を探す。お前は、元凶の対処を頼むぞ」


俺はルミスの背中を軽く叩く。

相変わらず無口な男だ。無言で頷き、スピードを上げて森の奥へ消えていった。蛇風を放出した蛇嵐のいる、遺跡に向かったのだ。


「よし、お前ら。これから仕事に入るが、今回の作戦では手数が重要だ。分かるな?」

「分かりますわ。そしておそらくこれからお師匠様が言わんとしていることも」


カーリが代表して返事をして、他の3人も頷く。頼もしいことだ。


「よし。なら言うが、今のお前らなら2人1組でも十分に危険度4の蛇風を討伐できるはずだ。それは武器や防具の力だけではなく、お前らの地力が成長しているからだぞ」

「えへへー、褒められると悪い気はしないよねえ」


すぐに調子に乗るのはエフテルだが、表情が緩んだのは彼女だけではない。

さて、時間がない。全員の緊張がほぐれたところで、早速指示を出す。


「エフテル、コウチのペアと、カーリ、アルカのペアで狩るのがベストだ。恐らく蛇風は交戦よりも逃走を選ぶ可能性が高い。動きが早いエフテル、アルカが蛇風の動きを抑制し、火力のあるコウチとカーリがトドメを刺す。いけるか?」


この確認は実力的なものの確認ではない。

カーリとアルカが組むことができるか、そういう確認だ。

2年前、エフテルから話を聞いて、アルカがカーリに強くあたる理由は全員理解した。最近ではアルカは歩み寄ろうとしている最中だ。

エフテルとコウチは俺の確認の意味を理解し、2人に視線を向ける。


「何も問題はありませんわ。わたくしは、ですけども…」


カーリが自信満々に答えた後に、少しだけ言葉を濁して、不安そうにアルカを見る。

アルカは小さくため息を吐いた。


「別にこっちも何の問題もないよ。もう何年つきあってると思ってるの。連携くらい、できるよ。カリシィルお嬢様」


やや嫌味っぽいが、確かに問題はなさそうだ。なさそうか?いや、信じよう。


「よし。じゃあ最後に蛇風についてのおさらいだ」

「いつもの!」


エフテルが言うが、いつもの!じゃねえんだよ。自分でそろそろ調べろ。

とはいえ、昔カーリにこの瞬間が好きと言われているし、説明するのは嫌いじゃないのであまり強くも言えない。


「蛇風は、危険度4の、名前の通り蛇のような獣だ。上半身は太く、下半身は細い。成長すると、危険度5の蛇嵐になる。つまり蛇風は蛇嵐の幼体だ」


ここまでは酒場での話で分かっていたことだろう。


「蛇嵐は、膨らんだ上半身の中で、蛇風を育てる。そしてある程度成長したら、上半身に空いている穴から蛇風を大量に放出する」


今回はその放出された蛇風の対処が、“四極”とレイの役割だ。


「蛇風の上半身にも沢山穴が開いていて、将来はそこから子を放出するわけだが、今はそこから自分の老廃物を固めた弾を放出してくる」

「き、汚ねえ…」

「コウチがイメージしてるようなものではなく、ほぼ弾丸だ。1粒1粒は小さいから大したダメージにはならないが、もし目や首などの急所にあたれば致命傷だ。その攻撃にだけ注意してくれ」

「了解」


さて、説明はこれくらいでいいだろう。

俺はポーチからカートリッジを取り出す。

エフテルに…いや、コウチに10個。カーリに10個。つまり1チームに10個ずつ、渡す。


「分配は任せる。個体によっては炸裂機構を使わずとも狩れると思うが、出し惜しみはしなくていい。使い切ったら、無理しない範囲で戦うこと。逃げる方向さえ調整できれば、あとはレイがやってくれる」


さきほどレイと別れた方向は、全員理解している。

最悪、逃げられたとしても、レイのいる方向に誘導できればミッション完了だ。


「今のお前らならさほど危険な相手ではないが、ヤバくなったら草原まで逃げろ。いいな」

「はーい!」


エフテルが元気に返事をしたので、良し。


「では、各自蛇風を探そう。俺も探して、見つけたら信号弾を上げる。もし手が空いているチームがいたら、狩りに来てくれ」

「師匠、危険じゃない?」


アルカが心配してくれるが、問題ない。


「一応、俺もヒシゴクガツマ鉱石で作った防具と盾を持っている。最低限の自衛はできるから、心配するな。最悪誰も来なくとも、草原への誘導くらいならできる」


これでも一応、元特級だ。そのくらいは朝飯前だ。


「そう、それなら安心。信じてるよ」


アルカが指に嵌めた指輪を見せてくる。

なんとなく恥ずかしいが、俺もそれに応じて、右手に嵌めた指輪を見せた。


「師匠がアルカとイチャイチャしてる!」

「うるせえ!さっさと行け!」


エフテルはキャーと笑いながら、走り出した。苦笑しつつ、コウチも後を追う。


「じゃあ、そっちも頼んだぞ」

「うん」

「任せてくださいまし」


アルカとカーリも走り出す。

この場に残されたのは俺だけとなった。

先ほどまであんなに賑やかだったのに、1人になった瞬間、森の静けさに包まれた。


「さて、俺も仕事をしよう」


少し辺りを歩き回って、近辺で一番高い木に登る。

そこで、森の音を改めて聞く。

蛇風の大きさは個体差が激しい。恐らく1m級のものから、5m級のものまでいるだろう。

森に定住するならばいい。いずれ、また、村の危機になったときに討伐する。

今問題になっているのは、草原に出て、アオマキ村を見つけて餌場としようとする蛇風のみ。

大きな個体の動く音ならば、良く聞けば分かる。

もちろん、それが蛇風かどうかは分からないが…ほら聞こえた。

俺は木々の間を飛び、音の出どころへ向かう。

草木を搔き分けながら移動していたのは、ビンゴ。蛇風だ。


「よし、まずは1匹」


俺は信号弾を打ち上げる。

そして蛇風の前に立ちふさがり、応援が来るまでの時間稼ぎだ。


「中くらいの個体だな。悪いが、先には進ませないぞ」


盾を構え、蛇風の前に立ちふさがる。

方角的に、駆けつけるのはあっちのチームかな。

もし5分程度待っても来なかったら、仕方がない。レイが待つ草原へ誘導しよう。


「syaaaaaaa!」


蛇風は、俺を格下だと判断したようで、逃走ではなく交戦を選んだ。

嚙みつき攻撃は後ろに下がって回避。


「甘く見られたもんだ」


俺は目の前で攻撃を空振った蛇風の頭を盾で殴りつける。


「ん、来たか」


足音が聞こえる。

駆けつけてきたのは…。

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