102 緊急依頼、蛇嵐②
「まず、蛇嵐の討伐だ。これはすでに蛇風を放出した個体である以上、討伐に急を要さない。だが、いずれまた栄養を蓄え、蛇風を放出することになるので、今回狩っておこう」
しかし蛇嵐は危険度5。今の“四極”では太刀打ちできない。
「ルミス。ルミスは遺跡内の蛇風と、蛇嵐の討伐をお願いしたい」
ルミスは1級狩人。つまり当たり前のように危険度5の獣を狩ることができる実力を持つ。
「俺様じゃねえのか」
レイが苛立ったようにいうので、肩を軽く叩いてなだめる。
「お前にも仕事はしてもらうから、安心しろ」
「ふん」
俺は話を続ける。
「“四極”は、森の中の蛇風を狩る。相手は互角だ。全部は狩れなくてもいい」
「さっき森の中には何匹いるっていったっけか…」
コウチが思い出そうとしていると、アルカが横から、
「5匹」
と言った。
しかしそれは偵察時点での話だ。
今ごろは遺跡にいた蛇風が外に出てきているだろう。
「外界に出たばかりの蛇風だ。まだそこまで強敵ではないだろうし、なにより交戦を避ける個体も多くいると思う。森の中では、ある程度捌ければいい」
「でもそうすると、草原に蛇風が逃げちゃうよね?」
「エフテルのいうとおりだな」
遺跡から出てきて、森の中で“四極”と遭遇した蛇風は、狩り切れないので、草原に逃げる。
「最後の砦が、レイ、お前だ。草原に逃げてきた蛇風を狩ってくれ」
「面白ぇところを持ってくるじゃねえか」
レイは自分が最も大変な役割を任せられたか理解している。
カーリが挙手をして、発言をする。
「それでしたら、レイ様とわたくしたちが逆の方がよろしいのではありませんか?森の中で少しでもレイ様に狩っていただき、その残りを“四極”で狩る。こうではない理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「まず単純に、森のどこか分からないところから次々と飛び出してくる危険度4の蛇風を、“四極”は逃がさずに全て討伐できるか?」
「それは…確かに無理、ですわね…」
“四極”は蛇風には後れを取ることはないだろう。しかし、それはしっかりと1匹に集中して戦った場合だ。
そうして1匹と交戦している間に、どんどん森からは蛇風が飛び出してくる。素通りだ。それではマズイ。
「レイなら、一撃で屠ることができるだろう。だから、最後の砦はレイなんだ」
レイは特級狩人の中でも攻撃力はトップクラスだと思っている。
危険度4程度であれば、炸裂機構を使わずとも、一刀両断だ。
「流石暴腕、か…」
コウチが感心したように呟く。
それを聞いて、レイは気分を良くしたようで、頬杖を突きながら言う。
「要するに、相棒は俺にこう言うわけだ。どこから出てくるか分からない蛇風の動きを予測し、先回りして瞬殺。これを繰り返して、全滅させろと」
「できないのか?」
敢えて挑発的に言う。
「はっ、誰の相棒だと思ってんだ。ガキどもが一匹も討伐できなくたって、問題ねえよ!」
レイは大口を開けて笑う。特級は伊達ではない。
「とはいえ、お前ら。レイがいるからと言って、安心するなよ」
俺は弟子たちに向けて話す。
「いくらレイが素早く蛇風を処理できるといっても、結局は1人。例えば森の東西、真逆の方向から2匹同時に蛇風が飛び出せば対処は不可能だ」
人間である以上、そこは流石に、な。
「お前らの頑張り次第でレイの負担が変わる。村の安全は、最初の弁であるお前らが鍵を握るんだ。気合を入れていくぞ」
どこか気楽だった雰囲気が一気に引き締まる。
「師匠、安心して。なんなら森で全滅させるよ」
アルカが言う。
「それいいね!そのつもりで頑張ろっか!」
エフテルがアルカに抱き着くが、すぐに脱出された。
「森の中で、複数の危険度4を相手にする…今の俺達ならやれるな」
「ええ、そうですわね。最近は危険度4なら安定して狩ることができていますし、全力…いえ、死力を尽くしましょう」
これは油断ではなく、事実だ。
落ち着いていつもどおり戦えば、何度も言うが“四極”は蛇風なんかに後れを取らない。
「威勢のいいことで」
ご機嫌のレイは、それ以上何も言わなかった。
話がひと段落したことを確認したウエカ村長が頭を下げた。
「今回は、本当にアオマキ村の危機だ。なんとか頼むよ。せっかくここまで発展した村を捨てたくはない」
「任せて!この村には頼りになる専属狩人がいるってことを証明するよ!」
エフテルが代表して返事をする。
ルミスは相変わらず無口で、レイはご機嫌に笑っている。
「よし、今回ばかりはスピードが命だ。今すぐ出発しよう」
元々そのつもりで各自準備してきている。
狩人6名で酒場を出る姿は圧巻ともいえる。
「ところで、相棒はどこにつくんだ?当然一番困難な仕事を行う、俺様のところだよな?」
「えっ、師匠あたしらのこと見ててくれるんじゃないの!?」
まーたこの展開かよ。
油断するとすぐに俺の取り合いが始まる。
しかし今回は喧嘩している場合じゃない。
「その状況に応じて、俺は自由に動く。ただ、遺跡まではいけないから、ルミス、頼んだぞ」
「…」
ルミスは黙って頷いた。
こうしてアオマキ村の防衛作戦が始まる。
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