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101 緊急依頼、蛇嵐①

流石に家でだらけながら聞くような話ではなさそうなので、カーリとコウチも呼んで、酒場に集まる。レイも来ている。

この2年で移住者も増え、酒場以外の飲食店もいくつか並ぶようになったが、俺達はやはりこのギルドの窓口がある酒場が馴染む。


「それで?アオマキ村の危機って?」

「いまいち分かんないんだけど、師匠に言えば分かるってルミスさんと村長に言われたんだけどさ」

どうやらその2人からの言伝のようだ。

「蛇嵐って獣が森で繁殖しているらしいよ」

「ッ!」

「はぁぁ…」


俺とレイは同時に異なる反応をした。しかし、思うところは同じ。


「確かに一大事だな…」

「めんどくせー…」


俺は口元を抑え、どうすべきか考える。レイは先ほど大きなため息をついた後、椅子の背もたれに深く寄り掛かった。


「蛇嵐…?」


珍しくコウチも知らないらしい。まあ、あまり出没事例が少ない獣ではある。俺達も1度しか討伐していない。


「お師匠様、蛇嵐とは?」


カーリが訊ねてくるので、俺は端的に説明することにした。


「蛇嵐は、危険度4の獣を大量に生み出す危険度5の獣だよ。七色剣山や、八方発泡魚レベルの獣が、大量に放出される」

「待って、全然イメージできない、放出ってなに?」


エフテルが突っ込みを入れてくる。


「蛇嵐ってのは30mを越えるデカい蛇で、体の上半身に空いた穴の中で自分の子供を育てる。そして、その子供たち、蛇風が大きくなったら、一気に放出するんだ。その数は少なくとも5、多いときで20匹以上だ」


俺の説明をレイが引き継ぐ。


「蛇嵐本体がそこそこ強えうえに、蛇風も危険度4くらいには強え。しかも数がアホ。俺様は蛇嵐は危険度6っていってもおかしくないと思うぜ」


単体の危険度が5というだけで、現象としての危険度はレイのいうとおり災害級だ。

唯一“双極”2人だけでは手が足りず、ルミスが参加した狩りというのが、この蛇嵐だったりする。


「で?詳しい状況を知ってるはずのハゲと村長はどこで何してんだ」

「村長は草原の確認、ルミスさんは蛇嵐の偵察だってさ」


もしも草原にまで蛇風が出現しているなら、アオマキ村にやってくるのも時間の問題だ。本当に村の危機ということになる。


「細かいことは村長とルミスを待つとして、俺達はすぐに狩りに出れるように準備をしておこう。時間はあまり残されていないかもしれない」

「了解!」


弟子たち4人は具体的な情報が示されていなくても、俺を信用して、俺の指示に従ってくれる。各自家に戻って、装備を整えてくるはずだ。

弟子たちがいなくなり、酒場でレイと2人きりになる。


「で?なんで蛇嵐が発生してる?森の調査は順調だったんじゃないのか?」


俺がやや責めるようにレイに訊くと、レイは眉間にしわを寄せながら答える。


「心当たりはなくはねえ…が、とりあえずハゲの情報次第だ。俺様の落ち度ではあるだろうがな…」


レイは机を思いっきり殴り立ち上がる。


「相棒、今回の狩り、俺も参加する。作戦指揮、任せたぞ」


そう言ってレイも去っていった。

蛇嵐の攻略にはとにかく人数が必要になる。

当時蛇嵐より格上だった俺達2人だけでは抑えきれず、ルミスに救援を頼んだ。

今回は、4級狩人4人に、1級1人、特級が1人いる。実質蛇嵐と戦えるのは2人に限定されるので、今回の狩りのカギは、いかに危険度4の蛇風を“四極”が抑えきれるかだ。


「場合によっては俺も…」


いや、とにかくルミスと村長が帰ってくる前に可能な限りの準備をしよう。


§


準備が出来次第酒場集合としていたが、俺が1番乗り。

まあ武器とかないしな。そりゃ早い。

ほどなくして、ウエカ村長、ルミスの順番で村に戻ってきた。状況説明は全員が揃ってからということで、待つ。

そしてレイと“四極”全員が揃ったところで、ウエカ村長が話始める。


「概要は聞いていると思うけど、うちの近くの森で蛇嵐が出た。既に草原にまで蛇風が出てきていたよ」


予断を許さない状況ということだ。

草原を見てきた村長に引き続き、森の中を偵察してきたルミスが説明を引き継ぐ。


「蛇嵐は、やはり森の中の遺跡にいるようだ。後回しにするべきではなかったな」

「ちっ…!」


珍しくレイが苦々しい顔をしている。


「森の中の遺跡って?」


エフテルが挙手をして質問をする。


「この間、レイと森を調査していたときに大きな遺跡を見つけた。中を調査するのと、その先の森の調査をすることを天秤にかけ、俺達は後者を選んだ。結果論だが、もしあのとき遺跡の中を調査していれば今より状況は良かったろう」


なるほどね、それを選択したのがレイだったと。それで多少なりとも責任を感じているから、協力的なわけだ。

まあ、そこの経緯は今に至ってはどうでもいいし、ルミスの言った通り結果論なので、反省する必要もない。


「で、今回の蛇風の数は?」


ここが一番大事なところだ。もしも30匹とか言われたら村から避難してギルドの狩人を派遣してもらうこととなるだろう。つまりアオマキ村の終わりだ。


「全貌は分からないけど、草原には2匹、だったかな」

「森の中には5匹。遺跡の中に…数匹だった。見つけられていないやつを含めても、合計で15から20匹程度だと思う」


ルミスが言った20匹。これならギリギリ今の俺達でも対処可能か…?


「悩むな。尻拭いはする。お前らがいなくても俺様は受けるぞ」


レイは武器である大剣を背負った。

そうだ、こちらには特級狩人がいる。20匹程度なら問題ない。

しかしそれは、敵が一斉に村を目指したりしなければ、だ。


「俺とスミス、あとは相棒で片を付ける。ガキどもは村で控えてろ」

「レイ、それは無理だ。分かってるだろ」


常に2人きりで狩りを行ってきた“双極”が唯一ほかの狩人を頼ったのがこの蛇嵐。仮にレイが一撃で蛇風を屠ることができようと、多数で一気呵成に村に攻め込まれれば防ぎようがない。


「やはり今アオマキ村にいる狩人全員の力が必要だ。団結していくぞ」


蛇風の厄介なところは、蛇嵐から放たれた蛇風は、成長して蛇嵐になるべく、親と離れて狩場を探す習性にある。

森は奥に行くほど危険度の高い獣がいる。つまり蛇風たちは全員、草原に出てくることになるだろう。

そしてアオマキ村を見つければ、間違いなく人間を襲う。

やはり狩るしかない。


「よし、作戦を立てた。こうしよう」


俺は全員に向かって話し始めた。

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