子猫の3兄妹 カメラ
とら:
秋を感じさせる風の中、僕たちは、いつものように、じゃれあっていた。
危険な視線を感じ、振り返る僕。男がカメラを持って、立っていた。
カメラの視線。僕は、今までに感じたことのない緊張感に襲われていた。動けなかった。妹たちの様子を見るために、振り返る動作すら、ぎこちなかった。
しろも、ミケも、パニックを起こして、走り回っていた。
安全な場所へ。僕は、右の前足と後ろ足を同時に一歩進めた。どこか、おかしかった。左の前足と後ろ足を一歩進めた。やはり、変だった。一歩一歩が、やけに長く感じられる瞬間だった。
しろ:
ゴロにゃ~ん。わたしは、地面に背中を擦って、体を捻る。
あら、カメラを持った人が、やってくる。
兄さんは、カメラに向かって、ポーズをとっている。ひとつ、ひとつの動作を止めて、シャッターチャンスを作っているみたい。かっこいい。
わたしも負けてはいられない。子猫の魅力は、躍動感。おもいきりのジャンプ、着地。伏せた状態からのダッシュ。ミケちゃんも、わたしの真似をしているみたい。
負けないわよ。
体を捻りながら、一回転。
キメは、ウィンク。
ミケ:
ヒゲを、なびかせながら、とらちゃんにアタック。
でんぐり返しして、振り返ると、男性が、カメラを持って立っています。
とらちゃんは、落ち着いて、男性の様子を伺っています。さすがです。
しろちゃんは、カメラの視線を余裕を持って、避けています。さすがです。
ミケは、パニックです。
だって、ミケが土管の中で介抱している猫さんは、きっと、カメラに魂を抜かれて動けないに違いないです。ミケは、まだ、生きていたいです。カメラに撮られて、土管の中の猫さんみたいになりたくないです。
ミケの頭に何かが伝えられます。
「そうですか。いいのですか。ありがとう」
ミケは、土管の中に駆け込みます。動けない猫さんを後ろ足で蹴り出します。
にゃん法、「身代わりの術」
一瞬を捉えた写真の中。子猫たちが、仔トラのぬいぐるみと、じゃれあう姿があった。