第8話 僕とシュザンヌと子供たち
僕は、椅子に座ったまま、膝の上の妻を起こさないように、大きく背伸びをした。
「お父様、お母様」
庭で遊んでいたはずの子供たちがやってきた。
「お母様、あら、また猫になってしまわれたの」
「ここが良いみたいでね」
僕は、膝の上で寛いでいる猫の姿の妻、シュザンヌを撫でながら、御義父様の執務のお手伝いをしていた。満足にお手伝いできるかというと、難しい。けれど、御義父様も御義兄様も、快く教えてくださるし、妻も協力してくれるから、なんとか手伝いの一員くらいにはなっているはずだ。
僕と妻に領地を、というお話をいただいている。正直自信がないので、今はお断りをしている。あと五年か十年くらいして、もう少し自信がついたら、とお返事をしたら、御義父様と御義兄様に、君は慎重すぎるとのお言葉をいただいた。なんだか少し、こそばゆくて、嬉しかった。
「お母様ばかりずるいわ」
子供たちが頬を膨らます。
「お母様はずるくはないよ。僕のお手伝いをしてくれたあと、休憩をしているだけだからね。ほら、練習してごらん」
子供たちが、子猫になった。子供たちのほうが、妻よりも変化の術を上手く使える。
「おいで」
僕の膝の上には、妻が陣取っている。場所が足りないのか、子供たちは、僕によじ登ってきた。
「おやおや。これではお仕事ができないよ」
目を覚ました妻が、子猫まみれの僕を見て笑った。ふわふわの妻を、僕は抱きしめた。
<テオドール視点 完>
「勇者の愛猫」 本編は完結です。ありがとうございました。
テオドールの友人の魔法使い(魔王討伐の旅をした仲間)が遊びに来て、シュザンヌの兄(実はかなりの腕前)と意気投合して、テオドールのささやかな(いや、ちっともささやかじゃねぇよと友人魔法使いより)お願いを叶えてあげる話をまたいずれ、投稿できたらと思っていましたら、完成したので5月15日から予約投稿しております。
月、水、金の週3回7時~の予定です。
これからもお付き合いをいただけましたら幸いです。
この作品の他にも投稿しております。是非、お目通しをいただけましたら幸いです。
【完結済】本編 前日譚集 があります。
かつて、死神殿下と呼ばれた竜騎士と、暴れ竜と恐れられた竜が、竜の言葉がわかる人の子と、出会ってからの物語
https://ncode.syosetu.com/s1096h/
【完結済】マグノリアの花の咲く頃に 第一部から第四部まであります。
本編と短編で、シリーズ化しております。
第一部https://ncode.syosetu.com/s0801g/
第二部https://ncode.syosetu.com/s2683g/
第三部https://ncode.syosetu.com/s2912g/
第四部https://ncode.syosetu.com/s5831g/
前日譚と後日譚もございます。
【突然増える予定です】
ある日思いついた短編達
https://ncode.syosetu.com/s4037g/
【(今のところ)毎週土曜日19時に投稿中 エッセイ集】
人がすなるえつせいといふものを我もしてみむとしてするなり
https://ncode.syosetu.com/n4307hy/
これからもお付き合いをいただけましたら幸いです。