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勇者の愛猫  作者: 海堂 岬
本編
17/43

第16話 シュザンヌ視点 わたくしとテオドール様

 紆余曲折はございましたけれど、わたくしとテオドール様は結婚いたしました。


 勇者テオドールは亡くなったと公表され、国葬まで営まれた後です。立派な慰霊碑もあります。


 今更、取り消すなどできないと、わたくしもテオドール様も考えておりました。


 わたくしが平民であれば、テオドール様が勇者テオドール様でなくとも、何も問題なかったのですけれど。わたくしの父上は、臣籍降下した王弟です。身分が問題になりました。


 伯父様、いえ、国王陛下とお父様の悪ふざけ、と申し上げてはいけませんね。伯父と父、仲の良い兄弟のご尽力に、わたくしもテオドール様も言葉を失いました。


 テオドール様は崖から身を投げられたものの、元勇者の身に残されていた神の御加護で、大怪我だけは免れたそうですの。地元のヤギ飼いに助けられ、長く彼らのもとで療養した後に、ようやく王都に帰り着き、元婚約者のわたくしを、訪ねて来てくださったことになりました。


 テオドール様も唖然としておられましたけれど、王都から遠く離れた僻地のことです。少々の創作くらい、人は気にしないものだと、陛下もお父様もおっしゃいました。


 屋敷で父と兄を補佐するテオドール様は、あまり公の場にでることもありません。色々な噂もあったようですが、概ね、陛下とお父様が発表なさった内容に落ち着きました。


 勇者テオドール様の慰霊碑は、今は記念碑になり、人々に大切にされています。


 お父様は念のため、崖周辺に暮らしているのは、羊飼いか、ヤギ飼いか、将又(はたまた)牛飼いかを、部下を送り、確認させました。お父様の部下達は、崖も確認に行きましたけれど、そそり立つ岩肌に、テオドール様がおっしゃるような、岩棚などなかったそうです。


 テオドール様は、なにもおっしゃいませんでした。けれども、わたくしや両親同様に、神様の御加護をお感じになったのではないでしょうか。今も教会でのお祈りや、寄付を忘れません。優しいテオドール様は、ご自身と同じ立場の子供達のためにと、孤児院の改革にも熱心でいらっしゃいます。


 最近、わたくしの夫、テオドール様は、一人でお祈りにいかれるようになりました。


「ただいま帰りました」

夫は帰るなり、真っ先に、わたくしのところに、駆けてきてくれます。


「おかえりなさいませ」

夫は、わたくしの大きなお腹に手を添えました。

「元気にしていましたか」

「えぇ」


 お腹の子は、今日も元気に動いています。

「どんな子がうまれるか、とても楽しみです」

無邪気な夫の笑顔に、わたくしは前から気になっていたことを尋ねました。


「もしかしたら、わたくしのように、猫に変化してしまう子供かもしれませんよ」

わたくしのことばに、夫が、満面の笑顔になりました。

「そうしたら、あなたとふたり、ふわふわで、とてもとても可愛いでしょうね」


 夫の言葉に、わたくしはとても嬉しくなりました。


<本編完>(別章テオドール視点に続きます)

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