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勇者の愛猫  作者: 海堂 岬
本編
12/43

第11話 公爵視点 猫のシュザンヌ

「待ちなさい」

妻の声のあと、沢山の足音が廊下をかけていった。階段を駆け下りていく集団の先頭に、長い毛をなびかせ疾走する猫が見えた。


 シュザンヌだ。ようやく猫に変化出来たらしい。シュザンヌは常々、思いがけないときに猫になってしまうことを気に病んでいた。そのシュザンヌが、なんとか猫になろうと奮闘している姿は微笑ましかった。


「やはり、追いつくのは無理ですわ」

しばらくして部屋に戻ってきた妻の手には首輪があった。猫に変化したシュザンヌが屋敷に帰ってきた時に、使っていた首輪だ。


「出来ればつけて欲しいと、シュザンヌに頼まれていましたけれど。今回は、すっかり猫になってしまっているようです。私の言葉に、耳も貸してくれません」

妻はすっかり息を切らしていた。


「何故、確かめるだけなのに、わざわざ猫になるのですか。必要ないでしょう」

「わかっていないのね」

息子の言葉に呆れた妻に、私は沈黙を選んだ。

「猫の姿で彼と一緒に居た時間のほうが、長いのよ」

そういうものなのか。私は、思った言葉を口にはせず、息子と目を合わせるに留めた。


「あなたの将来が心配だわ。私は義理の娘が来てくれる日を楽しみにしているのに。可愛いしっかり者の義理の娘を、あなたがしっかり繋ぎ止められるか、本当に心配です」

妻からの思わぬ攻撃に、息子は肩を竦めた。


 シュザンヌが探し人を見つけたと、報告があった。  


 私と妻は、部屋で、シュザンヌとテオドールが来るのを待っていた。あれこれと取止めもない考えが湧いてきて、落ち着かない私とは対象的に、妻は紅茶を楽しんでいる。


 家長の父上に任せますと、退席していった息子が羨ましい。家長のわたしが席を外す訳にはいかない。私は、ジリジリとしながら、待っていた。


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