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寂しさ  作者: 冷凍槍烏賊
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不幸じゃない

 空の唇はいつもより少し青みがかっていた。ニヤッと笑って私に語り掛ける。

「この世にお前の居場所はない。見てみろ。お前の学校にいる奴らはみんな前向きだ。この世の中の役に立ちたくて仕方がないようだ」

「うん。まったく、その通りだ。彼らにはうんざりだ」

「じゃあどん底の奴らを見てみよう。連中は何を見ても不平不満。自分より程度の低い奴らをまったく逆の論理でイジメてる。お前は連中とも仲良くできないだろう?」

「まぁできないね」

「じゃあその中間は? 一番必死な層だ。日々生きるために賢明。両方のいいところと悪いところが薄まった形で内在している」

「一番不快な連中だ」

「だがお前に一番似ている」

「……そうだな」


 そんな世界では生きられないよ、と私はひとりごちた。でも生きているのは事実じゃないか。生きられているし、少しずつ前に進んでいる。奇妙な感覚だ。別に不幸じゃない。




 芸能人が不倫した 名前しか知らないやつだ

 家族がその芸能人を悪く言った 私は何も考えず相槌を打った


 戦争はまだ終わらないらしい 感覚がマヒしている

 何人死んだって悲しくもならないしひどいとも思わない

 この世はそんなもんだって思ってる

 心の悪魔が語る

 お前の身にそれが降りかかったとき 同じ様に思うことができるかな

 できないだろうなと直感する でもできてしまったらどうしようと思う

 いつも通り日常のことをやって いつも通りこの世にうんざりして

 家族が皆殺しにされた翌日にそれができたとして それが人間としての欠落や優越と何の関係があろうか

 ただ必要以上に苦しんでいないだけ得なんじゃないか



 不幸じゃない 不幸じゃない

 そう私は不幸じゃなくなった

 それを望んでいたかどうかは定かじゃない

 これが不幸と不幸の間のモラトリアムなのかもわからない

 これが永遠? うんざりだ でも不幸じゃない



 何も望んじゃいないし 何も変わらなくていい

 私はただ息をしている ゆっくりと ゆっくりと

 この世を静かに呪ってる 自分が不幸だからじゃない

 この世が不幸だから その不幸が自分に降りかかってくることが決まっているのはわかってる でも今は降りかかってきていない

 まるで倒れることがわかっている建物の中にいるかのように

 私はそこでゆっくりとコーヒーを飲んでいる

 死んでいく人を眺めながら

 自分の番のことを想像しながら



 永遠の財宝 永遠の冒険

 世界は有限で 幸福は一瞬で

 不幸は解釈次第で 心は肉体に結びついていて

 それをよしとした そうであれと願った

 この世界には光があるから 十分な量の

 私たちはそれを浴びて一日を始める資格を持っていた

 たったひとつ、それを思い出しただけなんだ

 私が不幸じゃなくなったのは


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