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寂しさ  作者: 冷凍槍烏賊
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平凡な人間

 親友の教室内での立場が悪くなった原因は、本人の不用意な発言だった。ある地味なクラスメイトの両親の仕事を馬鹿にするようなことを言って、そのことを教師に咎められ、学級裁判で袋叩きにあった。それまで全然人に責められたことのないような子だったから、それにとても大きなショックを受けて、人が変わったようにおとなしくなってしまった。誰と話していても委縮してしまい、おどおどしていた。

 そんなふうに変わってしまった彼女を心配して、彼女の少し過保護な両親がイジメじゃないかと心配して学校側ともめて、しかもそれがクラスの噂として広まってしまった。彼女と関わると、イジメの加害者だと疑われかねないということになり、彼女は露骨に避けられるようになり、彼女自身も他人を避けるようになった。

 私もそうして避けられるようになった友達のひとりで、とても寂しい気持ちになったが、私自身集中しなくてはいけないことがあったので、それについて改善する機会を得られることはなかった。


 インターネット上で、有名人が何かしら問題発言をしたり、何か軽率な行動をしたことによって炎上するたびに、私は小学生時代のこの出来事を思い出す。

 正直なことを言えば、私は知りたくないし、関わりたくない。あらゆる罪や恥について、無知でいたいし、無意識的に避けられる人間でいたい。しかしそういう心理が、結果として過ちを犯した人をさらに孤立させる結果になるという事実が、私の胃を苦しめる。


 何か悲しい出来事を知るたびに、私は世界がもう少し優しければいいのにと思う。

 でもそう思う私は、ただ自分が傷つきたくなくて、あらゆるものごとに対して無気力な無関心を貫くだけの、この世界を作っている大多数の平凡な人間なのだ。

 「無害ないい人」でしかない自分。誰にも罰されたくないから「誰も罰しない人」でいようとしているだけの自分。

 心のどこかで、自分もまたどこかで罰されるべきなのではないかと思っている自分。


 行き場のない痛み。チクチクと、突き刺すような、誰かが誰かを無自覚に傷つける言葉。それに喜んでいる無感覚な私とよく似た別の人たちの楽しみ。そういったものを、好奇心から知ろうとしてしまう自らの愚かさと迷い。

 矛盾だらけの人間社会と、それと似た問題点を抱えた自分という存在。

 どうすればいいのだろう?

 無力さと愚かさだけが、自分という存在に含まれるもっとも確実な要素だと思う。


 赦したいし、赦されたい。

 すべての人が、赦されていてほしい。過ちを犯した人のすべてが、赦されていて、その人がもっとも自然な形で、誰も傷つけず、幸せに暮らしてほしい。

 そんなもっともありふれていて、非現実的で、面白みのない理想を思い描いてしまうのが、まさに自分という人間が無力で愚かで善良な、平凡な人間であることを示しているのだと思う。

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