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短編 83 縁側タヌキ

作者: スモークされたサーモン


 玉にはこういう話も書きたくなるんです。


 玉には。




 うちの家には縁側がある。今時珍しいと言えるだろう。別に田舎という訳じゃない。北の大地なだけだ。冬になるとマイナス十五度を下回るだけで。


 北の大地だが都会エリアになる。ビルとか見えるし。熊は出るが、都会とはそういうものだと聞いている。蝉もいないが北の大地なのだから当然だ。


 蝉時雨? なにそれ何て読むの?


 まぁそれはどうでもいいのだ。もっと重要な事があるのでな。


 今、縁側にタヌキが来ている。


 来ているというか寝てる。


 縁側でぽかぽか陽気の中、お腹を見せて寝ているのだ。


 中に誰かいる。


 そんな感じで大の字だ。


 たまに足先がピクピク動く。


 なまらめんこい。


 お腹もふもふ。


 うちの縁側にタヌキが寝ている。


 とりあえずハラミと名付けた。何となく旨そうだがタヌキの名前だ。


 最近よく縁側に来て寝ているから名前を付けた。何で縁側で腹を見せて引っくり返っているのか、全く意味が分からないが可愛いので良しとする。


 夏なので毛はそこまでもっさりしている訳ではない。もっさりしてるけども。


 縁側に我が物顔で寝ているタヌキのハラミ(たまにピクピク)。


 平和を感じる。近所で熊出没の知らせがあったが……ここは平和な世界だ。


 ハラミの腹毛にダイブしたい。


 その誘惑は凄まじい。


 腹枕でも可。


 しかしハラミは野生のタヌキだ。野生を全く感じないけど。


 人との接触は彼の為にもならないだろう。


 ……見てるだけで癒される。


 でもやっぱり触りたくもある。悩ましいタヌキめ!


 この夏はハラミの夏となった。スイカをあげたらもりもり食った。




 秋になった。


 ハラミはまだうちにいる。


 縁側で腹を見せて寝こけている。


 毛はもふもふになりつつある。夏の五割ましだ。超もふもふ。


 最近は野良猫もハラミと一緒に縁側で寝ている。もふもふの毛は暖かいのだろう。


 冬に向けて小屋を作成中である。勿論ハラミの小屋だ。もう飼うことにした。関係各所には書類も出した。ハラミはうちの子になったのだ。


 もはや野良タヌキではない。


 これも何かの縁なのだろう。うちの縁側で腹を出して寝ていたタヌキ。ハラミが来てから家族の時間が増えた気がする。


 ハラミにそんなつもりは無かろうが、こいつのだれきった姿に自分も家族も癒されていた。


 分裂しかけていた家族がハラミによって少し戻った気がする。歩み寄ることの大切さをハラミに教えられた。感謝している。だからそろそろ風呂に入れたい。

 

 ハラミ入浴大作戦は家族全員によるミッションとして着々と計画中だ。ハラミはバナナが大好きなので餌で釣れば簡単に行けそうな気はする。


 問題は……野良猫の方だ。こいつは……どうするか。なんでタヌキと仲良く寝てるんだろうか。


 まぁこいつも一緒に飼ってしまえ。小屋はそれなりに大きいので問題はあるまい。流石に熊は飼えないが。


 ……熊は来ないよな? フラグを立てたつもりはないぞ?




 そして……冬が来た。


 縁側からタヌキは消えた。


 猫も消えた。


 雪がしんしんと降る縁側は真っ白な世界をただ眺めるのみとなったのだ。


 ハラミとロースはコタツにいる。


 ハラミはコタツの中で十分に暖まると涼むためにコタツの上でひっくり返る。


 腹丸出しだ。たまに舌もだらりと垂らしてる。そこに野生は皆無だ。もはやタヌキにも見えない。

 

 コタツの上にはミカンも置けなくなったがいつももふもふがある珍しい冬の光景となった。


 野良猫は牛柄だったのでロースと名付けた。こいつもコタツで温まると外に出て伸びる。ハラミがコタツの天板を占拠するのでロースの定位置はコタツ布団の上になる。


 今年の冬は家族がコタツに集まった。みんなが笑顔だった。みんながハラミの腹毛を堪能した。ロースもおまけで撫でといた。


 秋に作った小屋は狐に占拠されたが……まぁそれも北の大地あるあるだ。あれもあれで可愛いのだが流石に飼うわけにもいかない。


 縁側でハラミと狐が窓越しに見合っているのを見て不思議な感じがしたものだ。


 ハラミのもふもふボディに狐もドン引きしている気配を感じたのだ。


 ハラミよ。お前はどこまで、もふもふになるのだろうか。


 いつもなら長い冬が今年は呆気なく終わりを迎えた。


 


 春が来た。


 北の大地の春は四月ではない。五月だ。


 雪解けを考えると四月でも良いのだが春っぽくなるのは五月になる。


 縁側にまたタヌキが現れた。猫もいる。


 だが今年は少し様子がおかしい。


 毛玉の数が増えたのだ。


 ハラミは珍しくへそ天ではなく体を猫のように横向きにして座り寛いでいた。マダムポーズと勝手に名付けている。


 そのもふもふなお腹には、もふもふ毛玉がもちもちと蠢いている。


 ハラミの子供だ。子狸だ。


 ハラミは、いつの間にか相手を見つけて妊娠していたのだ。


 そして冬の間にぽこんと産んだ。もふもふタヌキファミリーである。


 何故かロースも一緒になってお乳を飲んでいる。


 ……まぁハラミも怒ってないので多分良いんだろう。


 平和だ。


 こんな平和な光景を見れるとは思っていなかった。


 家族もみんなにこにこしている。


 ハラミ……ありがとう。


 お前にそのつもりは無くとも……お前のお陰で家族はまた家族になれたのだ。これからもずっと一緒に生きていこうな。


 

 でだ、それはそれとして……旦那は誰なんだ? 一体いつの間にそういう事をしたんだ?


 お父さんは怒らないから教えなさい。怒らないから。




 今回の感想。


 赤ちゃんタヌキ達の名前が気になりますねぇ。


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