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第六話 昼休憩 (2)

 僕たちは六人で会議室のような広間に向かった。

 部屋に入ると既に全員が揃っていて食べ始めている。

 

 僕たちも食べ始めようと言おうとしたらサラスが前に出て手を何回か叩く。


「ちょっとみんないい?みんなさ、まだ自己紹介まだだから食べながらしない?」

 そう呼びかけた。

 僕たちは不思議な緊張感に包まれれるがそれは杞憂だったようだ。


「いいですね。私たちもそんな話が出ていた所です。」

 と、水色の髪の毛をした美形で長身の男性が答える。その勢いのまま、

「では、私からしましょうか。私の名前はリファイグレード・ルシエル。気軽にリファイと呼んでくれて構わない。私は主に氷魔法を使う。以前はこの国の軍にいたのだがもしかするとラヴァくんは知っているかもしれないが……。色々あって辞めたんだ。そこを詮索するもしないも君たちの自由だしそれを話すのは私の気分だ。ラヴァくんも気分が良ければ話すといい。以上だ。」


 リファイグレード・ルシエル、リファイはそう言って挨拶を終えた。リファイの容姿は顔は爽やかで髪の毛はさらさらしていて綺麗だ。身なりも悪くなく一見貴族のような立ち振る舞いだが所々ボロボロで貴族ではないと思う。貧乏ではないだろうが。

 以前は軍にいたと言っていたが何があって辞めたのだろうか。もしかして人殺し……いや、この人はそんなことをするような顔に見えない。まぁ、詮索するのは自由って言ってたし頃合いを見て聞いてみよう。

 そして、ラヴァくんという名前が飛んできた。

 その見た目からしてあの人だろう。


「じゃあ、俺の話が出たってことで次は俺でいいか?俺の名前はラヴァ・リーリァ。知っている人もいるかも知れないが、俺は以前隊長の補佐をしていた。リファイと同時期だな。そして、戦争の時にとんでもない失敗をしてしまい、そのまま責任を取って辞退だ。俺のは聞かないでくれ。頼む。」

 ラヴァさんはそう暴露した。暴露と言っても内容は言っていないが本人の表情を見る限りこの範囲でも言うのがやっとだったのだろう。これは絶対に聞かない方がいいだろう。きになりはするが我慢しよう。


「すまない。少し空気を悪くしてしまった。じゃあ次は俺の対戦相手のシニスターくん頼んだ。」

 そう言うとラヴァは足速にその場を立ち去る。

 それと入れ替わりでシニスターと呼ばれたルーファスよりも体格が良い、斧を持っている男が前に出る。

 

「シニスターだよろしく。俺はさっきの二人と比べると出身とかはないが、強いていえばhmyurnd……」

 

 なんだ?舌がもつれたのか「強いていえば」以降の言葉が聞こえなかった。


「詮索されたところで俺もよくわからないから勘弁してくれ。まぁ、そんな感じだ。」


 ん?言い直すこともせずに最後まで言い切った。詮索するなみたいなことも言っていたしみんなも気になってはいるようだがそれまでのようだ。

 それにしてもみんな言えない過去があるな。サラスさんやルレアさんも何か訳ありのようだし、コキジさんが遠い目をしたのもきになる。オッドくんの爪もきになる。

 ルーファスも殺人をしたようだし。

 何かあった方がいいわけではないが隠したい過去がないと言う点でも差がつけられてるような気がしてしまう。

 そんなことを考えていると場は「次誰にする?」みたいな雰囲気になるがそこで部屋の扉がバッと開き、


「そろそろ始めるぞー。」

と、ウィリアムが少しキレながら伝えてくれる。

 僕はその言葉に少し焦って大きく口を開けて残りを食べて完食する。

 他の人は既に完食しているようでもう移動し始めている。

 それに続くように空の弁当箱をゴミ箱に押し込んで部屋を出る。

 

「お前がこの隊に入るのはおすすめしねぇよ。」

 部屋を出てすぐに後ろから声がかけられる。声変わりの途中みたいな声質。

 声の方向を見ると片手をポケットに突っ込みながら空いているもう片方の手で会議室の扉を閉じるオレンジの髪の毛の小柄でヤンチャそうな子供がいた。背中には身長よりも長い槍を携えている。

 それにしてもどういうことだ。なぜ、それをわざわざ言ってきた。

「えっと、どうして……かな?理由も教えてくれるかな?」


「は?そんなのお前も薄々感じてんじゃねーの?お前は弱いんだよ。この中の誰よりもダントツに。」


「そんなの、君に言われなくてもわかってるよ。わかりたくなかったけどね。だからって!なんで諦めなきゃいけない。この軍のルールは君も見ただろう!?弱いことは諦める理由にならないはずだ!」


「まぁ、そうなんだけどさ。俺はお前のメンタルと命を気遣ってんの。わかる?このままお前がここにいたら劣等感から消えちゃうんじゃないかって。それと軍全体のレベルをお前に合わせるわけないからお前にとっては毎回死にかけちゃうんじゃない?そこらへんまでちゃんと考えてた?」


「それは……そうかも知れないけどさ……。」


 この子の言っていることは全て正しくて見知らぬ僕を気遣ってくれているのもわかる。少し口調が荒いだけで根はとんでもなく優しいのだろう。でも、だからこそそんな子に言われたという事実が僕を斬りつける。

 本当に僕はこの軍で死んでしまうかも知れない。この先、劣等感に耐えられなくて逃げてしまうかも知れない。

 でも、僕はここで諦めることこそ本当の死なんじゃないかとも思う。

 僕と仲良く話してくれたルレアさん達やお母さんやお兄ちゃんに顔が見せられない。家族は手紙の事を気にしないで優しく迎えてくれそうだけど、僕が許さない。

 「それに劣等感に負けて逃げるのと今怖くて逃げるのでは何が違うのだろうか。

 僕には逃げると言う選択肢はない。死んでやる。戦場で死んでやる。

 それが僕の人生の僕の望む選択肢だ。」


「ふーん、そっか。それが君の答えなんだ。ま、いいんじゃない?バカ雑魚なりの答えっぽくて。死ぬのはいいけど溺れないようにね。」


「うん。心に留めておく。ありがとう。あと……もしかして声に出てた?どこから?」


「それに劣等感に負けて逃げるのと今怖くて逃げるのでは何が違うのだろうか。ってとこ。あ、あとさ、多分俺と君の歳近いから子供扱いしないでね。」


「あ、ごめん。何歳なの?僕は今年十九になったけど……。」


「やっぱり、俺も十九だな。ま、分かればいいんだ。とにかく、気をつけろよ。じゃーな。さっき、自己紹介してなかったけど俺の名前はライアン。よろしくな。」


 そう言うと小走りで僕を追い越してすぐに見えなくなってしまった。

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