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第二十話 おかしな本屋

 僕たちが支度を終えて外に出ようと一階に降りるとさっき倉庫に向かったラヴァ達とすれ違う。

 ラヴァはさっき僕たちが見てた冷蔵庫を大変そうに抱えていたのが印象的だった。


 外に出ると少し太陽が落ちてきていて少し急ぐ必要がありそうだ。

 そういやどこに本屋があるとかなんも知らないな。

 少なくともここにくる道中では見ていない。


「そういやどこに本屋とか図書館があるとか知らないで来たけどそもそもこんなとこにあんのか?」


 ライアンもそう思っていたみたいだ。こんな戦場最前線で本屋は営業しないだろう。

 すると前からサラスとルレアが近づいてくる。


「あら、これからお出かけ?」


「はい、そうなんですけどちょっと困ってて。お二人は帰りですか?」


「うん。特に目的はなかったんだけど散歩しようと思って。」

「困ってるってどうしたの?力になるよ?」


「それがですね、本屋ってあるのかなぁって。」


「本屋?見たかなぁ。」

「あれ、あったんじゃない?なんかポツンと立ってたじゃん。あれの中多分本屋だったんじゃない?」

「あ、ほんとだね!ちょっと不気味だったから気をつけてね。」


「ありがとうございます。気をつけておきます……。」


 不気味?まぁなんもないだろう。


 僕たちは二人に方向を教えてもらい、歩き出した。


「不気味ってなんなんですかね?不審者とかがいるのかな……。」


「まぁいても勝てるだろ。」

「ルーファスでも連れてくればよかった?」


「ははっ、確かにあの人なら誰が出ても勝てそうだね。ま、三人もいるし大丈夫じゃない?」


「そうだな。さっきの蛇レベルがきたら全力で逃げればいいだけだしな。」


 本当に何が来ても大丈夫だろう。

 そういや、この街には魔族は出ないのだろうか。みたいなことがしょっちゅう起きてるのであれば相当危険な街だが……そうならないための僕たちなのかもしれない。


 

 本屋に向かう道中、いろいろ街を見た。


 サングラスをかけたルーファスに引けを取らないぐらい怖そうなおじさんがやっているパン屋さんとかほぼ廃墟のようでちゃんと営業している大型スーパーなど少し治安が悪いだけで街としてはきちんと機能しているようだ。


 ここにわざわざ残っている人たちは何を思ってこんな所にいるのだろうか。

 誇り?一族の伝統?イカれた興味?周囲からの義務感?


 僕には到底理解できない。

 ルーファスやオッドくんなら理解できるのだろうか。


 

 そんなことを考えながら歩いていると普通の古本屋みたいなサイズの建物が見えてきた。二人に聞いてたとおり少し不気味だ。外壁には蜘蛛の巣が張っており他にもかなりボロボロな箇所がある。周りには何も建ってなく解体された跡だけがある。

 おそらく二人が言っていた物はあれだろう。

 近づいてみる。

 

 近づいてみると扉には『open』と書かれた看板が吊り下がっている。


「やってるみたいだな。入ってみるか。」


 ライアンが扉に手をかけ開ける。

 ギシギシと音を立てる。

 

 中に入ってみると人の気配はなく本棚がぎっしりと詰められている。本棚の中にはところどころ本が抜かれた跡があるがそれでも貯蔵数は多い。

 外壁よりかは綺麗になっているが最近は掃除されていないんだろうなぁ、と思った。

 店員さんはいるのだろうか。

 本を見る前にレジを探す。   


 レジはすぐに見つかったがそこに人はいなく奥にもいそうにない。カウンターの部分だけが綺麗でその奥は埃が積もっている。


 するとレジのカウンターに一枚のメモを見つける。


 それには『店内の本は自由に持ち帰っていいです。持ち帰る場合は対価として店内を軽く掃除していただくだけで構わないです。店主より。』と、書かれていた。

 

 僕は二人を呼んでそのメモを見せると、ライアンは「なんだそれ。」と訝しげに見つめ、オッドくんは「そっか。だから綺麗なんだね。箒はどこにあるんだろ。」と、箒を探し始めた。

 箒はレジのすぐ横にあったらしく、僕たちに「あったよ!」と嬉しそうに報告している。

 僕は小声で


「まぁ、従っておけばいいんじゃない?」

 

 とライアンに告げる。ライアンは「それもそうか。」と納得した。


 

 僕たちは別れて本を探す。


 僕としてはそんなに本は嫌いじゃないができれば難しくない小説が読みたい。何か具体的に欲しい本はない。


 ここは辞書から幼児向け絵本までさまざまなジャンルを取り扱っており、歴史書などもあった。


 小説は当然いくつかあり、僕は『エウニカ伝説』という本と『無謀な勇者の勇敢な死』という本を手に取った。

 

 

 二人もどうやら目当ての本は見つかったらしくよく見えないがライアンは三冊ぐらい、オッドくんは四冊も抱えている。


「これで掃除すればいいんだな?」


 ライアンは慎重に確認する。


「うん、多分!」


 それに反してオッドくんはいつまでも無邪気に返事する。


 一度本をレジのカウンターに置いて箒を手に取る。箒は四本あり無事全員が手にすることができた。


 

 僕らは床や本の上、本棚の隙間など掃除した。僕はさっきの光景が気になり、レジのカウンターの向こう側も掃除することにした。


 カウンターに少し身を乗り出して手の届くところまで箒を伸ばす。

 

 するとすぐに奥から物おとが聞こえる。

 なんだ?誰かいるのか?敵かもしれない。一応二人を呼ぶか……いや、ここで助けを求める声を出したらそれこそ敵認定されるかもしれない。僕はすぐに少し身を引き、箒を手から離す。


「カウンターの先は大丈夫ですから、えぇ、近づかないでください。」


 聞こえてきた声は中年の少し掠れた声。声からは痩せた男性なのかなという印象。


「はい。わかりました。すみません。」


「なんだ?なんか言ったか?」


 ライアンが近づいてくる。


「あぁ、いや。なんかここ掃除しようと思ったら奥に人がいて『大丈夫だから近づくな』って。」


「人がいるのか?おーい。ここって本当に掃除するだけでいいのか?」


 ライアンがそう問いかける。だが返事はない。


「おーい。いるなら返事してくれ。不安なんだよ。代金はいいのか?」


 さらに声を投げる。


 すると、物音が聞こえ、奥から声の主が現れる。


「なんだよ、うるせぇなぁ。それでいいって書いてんだろ。文字読めねぇのか?」


 さっきとは打って変わって高圧的でしっかりと芯のある声だ。本当に同じ人か?

 外見は全体的にだらしなく髪が伸びきっており髭も生えている。服はかなりボロボロ。ただ、太ってはいないが痩せているわけではなくご飯は食べているようだ。 


 ――そして、口元にはたくさんの赤い液体が付いている。固まってはなく新しいもののように見える。

 血……だろうか。


「はぁ、わかりました。」


 ライアンは珍しく恐怖したのか穏便に済まそうとする。

 しかし、


「なんだお前。そんなに口元が気になるか?」


 男は僕を見て聞く。


「えっと、あ、赤いのが付いてますよ……。」


 声が震えてしまう。


「あぁ、そりゃ血だな。見苦しかったか。すまんな。なにしろうまそうな蛇が落ちてたもんで。」

 

 男は意外に開き直って優しい雰囲気を出す。それにしても蛇……。白の災禍だろうか。


 っていうか魔族って食べれるのか?蛇だからまぁ食べれないこともないとは思うけど。


「あ、お前らは絶対に食うなよ。普通に『侵食』されるぞ。」


 侵食?なんだ。聞いたことがない。魔族を食べるとその『侵食』されてしまうということか。

 侵食が何かもわからないしなぜこの人は平気なのかもわからない。


「みんなー掃除終わったよ〜。あれ、このおじさんここの店長さん?こんにちは。お邪魔してます。」


 オッドくんが合流する。オッドくんは何も警戒していないようで挨拶さえしてみせた。


「あぁ、いらっしゃい。」


 男は笑顔を見せるわけではないが友好的に接した。


「そういうことなので僕たち帰りますね。ありがとうございましたー。」


 箒を元の場所に戻して本をもちスタスタと店を出ていくオッドくん。それにつづいてライアンと小さくお礼をして店を出た。

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