雨の日に
三題噺もどきーにじゅうなな。
注意※虐待をにおわす表現がちょこっとあります。※
お題:野良猫・マグカップ・すみっこ
ザアアア―
(雨すご…)
大雨の降る中。
僕は家へと向かっていた。
傘はさしてはいるものの、たいして意味がないように思える。
歩く度に、パシャパシャと水が跳ねる。
(明日も雨かなぁ…)
そんなことを考えながら、1人静かに歩いていた。
―低気圧のおかげで、頭が痛い。
住んでいるアパートが見えたところで
バシャ―
自分の足元ではなく、アパートの方から水の弾ける音が聞こえた。
野良猫か何かが歩いているのかと思ったのだが。
アパートの階段の下に、子供が倒れていた。
(!?)
とっさに近寄り、体を起こす。
「大丈夫か……?」
声をかけては見るも、返事はない。
―が、意識はあるようで、一応の反応は見せた。
この雨の中、ブランケット1枚で居たのか、体が冷えきっていた。
そのブランケットらしきものだって、びしょぬれで、汚れていた。
(とりあえず、風呂に入れてあげるか。)
:
その後、嫌がるのを何とかして風呂に入れ、体を綺麗にした。
小さな抵抗は、とても栄養が足りている子供のものではなかった。
(マグカップどこやったかな。)
体が冷えているので、暖かい飲み物を飲まそうと、マグカップを探していた。
部屋のすみっこに逃げてしまった彼に声をかける。
「ねえ、ココアは飲める?」
コク―と、顔を縦にふった。
風呂から上がると、落ち着いたのか、抵抗はしなくなった。
けれど、やはり、警戒はされている。
「おっけー。」
自分のと、彼のを作り、テーブルの上へと置く。
「どうぞ。飲みなよ。」
恐る恐る、こちらに近づき、マグカップを手に取る。
「あついから、気を付けて、」
ふーふーと、冷やしながら、少しずつ、ココアを飲み始めた。
そんな彼を見ながら、僕もココアを飲む。
(うわ、久しぶりに飲んだらちょっと甘いな…。)
と言うか、何で家にココアがあったんだろう―
大方、母親が送ってきた仕送りか何かに入っていたのを、適当においていたのだろう。
そう思いながら、ぼーっと彼を眺めていた。
―突然、ポロポロと涙をこぼした。
「ど、どうしたの?どっか痛い?」
子供とあまり接することが無いため、対応に困惑してしまう。
小さな彼は、フルフルと、首を横に振る。
しかし、彼はココアを飲みながら、大きな雫を零し続けていた。
こんなに小さな子供だ。
抱えきれないモノなんて、たくさんあるだろう。
大人のぼくでさえ、あるのに。
ココアを飲み終え、彼は
「ありがとう―。」
そう言った。
とっさに言われ、どう返すべきなのか分からなかった。
「お兄さんは、やさしいんだね。」
彼は、そう言って微笑んでいた。
酷くこけた顔。
その顔を見て、彼が今までどんな扱いを受けてきたのかを思う。
―先程、風呂に入れた時、体は酷い怪我でいっぱいだった。
それで、抵抗したのだろう。
どうすればこんなになるのかと、想像もしたくないほど、酷かった。
「お兄さんは、僕の怪我を見ても気持ち悪いとかいわないんだね。」
体を洗ってあげている時、ぽつりと、そんなことを呟いていた。
僕は、聞こえない振りをしたが。
「僕は、やさしくなんかないよ。」
そう言って、彼の頭を撫でた。
少し、びくりと体をこわばらせたけれど。
驚いた顔をした後、とても嬉しそうに笑ったのだった。