甥と伯母の攻防戦
初エッセイです。
「駄文を書きましょう」という素敵な言葉に触発されて、勢いで書いてしまいました。
ある日、妹から甥(6歳)と姪(1歳)の面倒を見てほしいと言われた。
コロナ禍で、子連れでは歯医者さんに行くのも一苦労らしい。
私によく懐いてくれている子たちなので、癒しを求めて二つ返事で引き受けた。
基本、平日に休みのある私。たまには仕事と家事から解放されて、ちょっとだけのんびりできるかなぁ。なんて、期待しつつ妹の家に行ったのだ。
最初は、普通にゲームに夢中だった甥っ子が、ニコニコしながらやって来る。ちょこんと隣に座って私を見上げた。
「どうしたの? ゲームはもうおしまい?」
「うん! ねぇ、おばちゃ〜ん」
「なあに?」
「おばちゃん、あそぼっ!」
「何したいの?」
「グルグルしようっ!」
「……え」
甥の言うグルグルとは、ただひたすらに自分で回転するだけの遊びだ。昔、『ぐるぐるバット』なる体力勝負の遊びがあったが、それのバット無しバージョン。
「おばちゃんね、ちょっと疲れちゃってるから。それじゃないのがいいなぁ」
とやんわり断る。
三半規管が弱い私には、罰ゲーム以外のなにものでもない。
「えー! だいじょうぶだよっ」とキラキラした瞳で私を見る。
くっ。ま、眩しい。
「いや、おばちゃん年だし……ねっ? そうだ、オモチャで遊ぼうよ」
頼む、諦めてくれと切に願う。
「えー! おばちゃんは若いよ! うん、ママより若いし、かわいいよっ」
はい? 唐突に何を言い出したのかと思ったら
「だからね、グルグルしよ〜」
ニコッと笑みを浮かべ、ぐいぐいと私の手を引きながら無邪気に言った。
ちょっと待て、甥よ。
私は叔母じゃなくて、伯母だ。君のママより若いはずないだろうが。
しかも、可愛いとか言ってくれちゃって。そもそも、私を若くて可愛いと思っているなら『おばちゃん』ではなく『おねえちゃん』と呼ぶよね?
まったく。
どこでそんな人を煽てて、意のままに動かす術を学んだのか? おばちゃんは君の将来が心配です。
暫くのらりくらりと躱していたが。下の姪も両手を広げて「んっ、んっ!」と抱っこポーズで加わってきた。
当然、2対1で敵うわけもなく……。
ええ、やりましたよ。姪を抱っこしたまま、甥と一緒にグルグルを。
「ただいま〜。……!?」
シーンと、あまりに静かな状況に驚く妹。
遊び疲れて爆睡する姪と、再度ゲームに夢中になっている甥。そして、二人の横でグッタリの私。
子供とは、飽きずに延々と同じことをねだる生き物だと忘れていた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫じゃない。気持ち悪い……」
そう答えるのがやっとで、甥が手に入れたかもしれないイケメンスキルについては、妹に伝えなかった。
昨今のちびっ子は、どこでそんなスキルを手に入れるのだろうか? 幼稚園か学校か。はたまた自然に覚醒したのか?
タブレットを使いこなす1歳児の姪は、甥を超す強敵になりそうだ。
取り敢えず……甥が反抗期を迎えた頃、今日の話をたっぷりと聞かせてあげよう。
「あの頃は、あんなにおばちゃんを可愛いって言ってくれたのに〜」と。
キラキラのばばあスマイルをお見舞いするからね。
ふふ、今からちょっと楽しみだ。
戦いはまだまだ続く。
その頃にはコロナが終息し、希望があふれる未来になっていますように。
お読み下さり、ありがとうございました。
私にとって、エッセイジャンルは読ませて頂くばかり。とても敷居が高く、ビクビクしながらの投稿です。