ドラゴンさん、山に放り出される
飛行のチュートリアルも難なく終わり、いざゲームの世界へ!
一瞬の浮遊感があって、最初の仕様なのか瞑っていた目を開く。すると、そこは緑の奥深い森の中だった。
「……あれ、森?」
このゲームでは、平成から令和辺りの時代に近い街並みと、その周囲にある多くのダンジョンで成り立っているそうだ。だから、最初に降り立つのはどう考えても街中だと思っていたのだけれど、どうやらそうではないみたい。
初っ端からネタバレ情報を見て始めるのもなんだしって思って、仕入れておいた情報はゲームの概要をさらっと書いたものくらいだ。さすがに中身についての詳細は知らない。
「えーっと、メニュー開いて、装備とお金とアイテム……」
抑えきれないこれからへの期待から、ゆるゆると尻尾を振りつつまずは自分の状態の確認から始める。
装備は標準的な布の服シリーズに、武器が初心者のクロスボウ。完全に初期装備って感じの見た目だ。肩がけの旅人っぽいマント? いや、ストール? がオシャレ要素かなぁと思う程度で、中に着ているのは平民っぽい服装。
オレの正装が軍服にストールだからちょっと新鮮だ。いずれば自分で装備を作って現実のと似た装備になりたいものである。ゲーム内だとコスプレ感が強くなるかもしれないけど、実際のオレを知っている人なんていないんだし問題ないだろ。
さて、困ったな。セーブはどうやらメニューからできるようだけど、まずは街を探さないとどうにもならない。
初期スポーン地点が街以外だなんてこと、あるんだなぁ。
いや……。
「尻尾とかツノとか翼とか、あるからなぁ」
よく考えれば、この世界観だと亜人以外は人間に良く思われていない可能性が高い。
アニメでも、街中に幻想種がいたらまず陰陽師や呪術師みたいな人が集まってきて退治しようとしてくる!みたいな流れがあったし、もしかしたらまずは人間と紛れて歩いても問題にされないように見た目をどうにかする必要があるのかも。
ほらー、こういう不親切なところがあるからクソゲーって言われるんだよまったく。他人事だから別にいいけど。
フィールドやダンジョンだとプレイヤーキルができるゲームだし、一応用心はしておいたほうがいいかな。死んだらセーブした地点か、事前に登録しておいた地点から開始らしいし。
所持アイテムには低品質の回復アイテムが各種10個ずつ。それと『地点登録の宝珠』がひとつ。
お気に入りの場所を見つけたらこの宝珠で地点登録して、そこでリスポーンできるようにしておけばいいんだろう。
なら、まずは周囲を探索して適度に運動しながら拠点探しかなぁ。
旅人のマントを押し上げて薔薇色の翼を開く。
「先に空を飛んで地理の把握に努めようかな」
メニューのマップは、大まかな地図としてはちょうどいいんだけど、山で拠点を探したいからもっと細かいところを知りたいんだよね。
オレはそうして、その場から一気に上空へ躍り出るのだった。