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ドラゴンさん、クソゲーの有用性を再確認する

 百鬼神妖オンラインが『クソゲー』と呼ばれる理由は、大きく分けて二つある。


 ひとつは操作性。


 VRゲームにおいて、操作性ってやつはかなり大事だ。脳裏に描いたことがそのまま反映され、バーチャル世界で動けるのが理想。そして、そのうえでリアリティがあればなおよし。


 百鬼神妖オンラインはファンからかなり期待されていた。世間でも注目を浴びていた。大きな期待が寄せられて……そして企業のほうもそれに応えようとした。


 それが思いっきり空回りしたのだ。


 なぜか?


「百鬼神妖オンラインでは、翼のある種族が地雷なんだっけ」


 幻想科学に基づいて、骨格からなにから全て作り上げたその手腕はまず間違いなく見事だったと思う。


 でも、そのせいでプレイヤーの大半が『空を飛べなかった』のだ。


 バーチャル世界において、突然翼という自分の知らない器官を与えられたプレイヤー達は、生まれたての雛鳥のように空を飛ぶ『方法』を知らなかった。そも、方法を知らないとできなかった。


 そしてさらにクソ要素となったのが、『オート飛行』がなかったということ。


 全部マニュアル操作しかなかったのだ。だから、せっかく翼のある種族でスタートしてもスタートダッシュを切るどころか、足枷になるという事態が起きた。


 これにはファンが大激怒。当たり前だね。苦情殺到で、一週間後にはオート飛行モードなどの各種機能がアップデートされた。


 が。


「これもクソだったと」


 なんと、飛行モーションに羽ばたきすらなく、ただ翼を広げたまますーっと移動していくというシュール極まりない絵面のオート飛行モードが爆誕。

 障害物でぶつかることもあって、とてもゲームを遊ぶ目的では使い物にならない。そして、圧倒的にダサい。


 これも苦情殺到。

 さらに一週間後にアップデートが施され、ようやく燃え広がった不満が鎮火すると思いきや、なんとちゃんとした飛行モーションは課金アイテムとなっていて、大炎上した。さもありなんって感じ。


 クソだよね。うん、クソだね。

 けど、百鬼神妖オンラインのやらかしはこれだけではなかった。


 ふたつめ。

 プレイヤーの力がアイテムや武器防具の耐久値を上回っていると、持ったときに耐久値が削れること。


 力の強い戦士あたりが遠慮なく果物ナイフを持ったら、バッキバキに砕けて壊れてロストしてしまう……っていう、明らかにヤバい地雷があった。


 ゲーム内なのに力加減が必要なのである。

 これが決定的な致命傷となり、みんなから大変期待されて世にお出しされたゲームは、発売から一ヶ月後には立派なクソゲーとして名を馳せたのだ。


 現在もテレビCMでアピールしているところに哀愁を感じる大爆死っぷり。もう遅いとしか言いようのない、ある意味必死な戦略が涙を誘う。


「でも、この一年経たずにサービス終了しそうなクソっぷりだからこそ! オレ達に需要がある!」


 そう、力加減。実質それは手加減だ。

 力加減が必要になるこのゲームは、手加減を学ばせたいオレ達にとって最も理想的な練習台になると言っても過言じゃない!!


「ああ、これで細かい修繕費とか備品の買い替えが必要なくなる……リアルマネーのほうに打撃が入らない……! なんて素敵なんだろうね!」


 細かい屋敷内の備品。扉のドアノブ。包丁。エコバッグに地団駄を踏んだ時の道路の破壊。


 力加減のできない子達によって必要になる『後始末』の数々……! これでもう、お金がなくて泣くことはないんだ……!! 人間界に潜り込めて、さらに稼いでいる子達の貯金を借りるハメになる必要なんて……もうなくなる!!


「ゲーム万歳!!」


 天井を見上げてガッツポーズ。

 視線を天井からテーブルの上にズラすと、そこには書類タワー。


「ふぅー……」


 上司たるもの、落ち着いてゲームに集中することもできやしない。


「よし、分身を探してやらせよう」


 実に雑極まりない解決法だった。

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