ドラゴンさん、百人抜きならぬ百匹抜きをする
「お、お約束のボアっぽいものみっけ……っと」
上空から覗き込むと、のんびりと歩いている魔物を発見。でっぷりと太った体に、マンモスのように長くて湾曲した牙。どことなく真っ先に倒したくなる突進生肉のような見た目をしている。
なんなんだろうね、あの伝統。
普通のオフゲームでも、狩りものだと確実に突進で妨害してくるボア系の敵が出てくる。日本人はイノシシが嫌いなんだろうか?
「矢をつがえてっと」
まずは試しに一回、弓矢で狙い撃ってみることにした。弓矢程度なら、自国で守護竜やっていた時代に戦争とかでよく使用していた。目も常人よりはいいほうだし、外すことはないだろう。相手も動かないことだしね。
「大当たり〜!!」
矢を放った音がわずかに聞こえたのか、顔をあげたボアっぽいやつの額にさくっと刺さる。
クリティカル!と会心の一撃を示すログが流れてふむと頷く。ボアは額に矢を食らって絶命したようで、その場でポリゴンとなって砕け散っていった。
あとには、キューブのようななにかが地面に残っている。
「ドロップ品かな?」
フルダイブのVRゲームははじめてだけれど、普通にゲームはたくさんしている。故にそれがなんなのかはすぐに察しがついた。
周囲を警戒しつつ、地面にふわりと降り立ってキューブを回収する。
キューブを手にした途端、視界のログに生肉を三つ入手と書かれた文字が通り過ぎていった。ドロップ品で合っていたらしい。
それと。
「やっぱボアってどこでも生肉扱いなんだね……」
その扱いの雑さに涙を禁じ得ない。オレが同じ立場だったら、種族の地位向上を目指して奮闘するだろう問題だ。ボアが主人公だったっていいじゃない。クソ雑魚だからこそ輝くと思うよ。オレはドラゴンなのでそれ以上に輝くけど。
「他にもなにかいないかな〜」
そうしてオレは、空をくるくると縁を描くように飛んで、周辺の魔物を一匹残らず上空から仕留め続けたのだった。
数はゆうに百を越えるだろうか? レベルが10に上がったのと同時に、パンパカパーンと気の抜けた効果音が鳴る。
この辺のセンスのなさも、もしかしたらクソゲーたるゆえんかもしれない。
――――――
称号を獲得しました。
【スナイパー】
【天空の捕食者】
――――――
お?




