41)よいまちのばら
──「ん〜? アレ? ココはドコだ? ……ま、その内に知ったトコロに出んだろ」
【宵待野薔薇】
千鳥足取り
覚束ず
曲酔い彷徨う
碑嶐之森
夜分の露慈雨来
藪睨み
細流の音
秘め匂い
魔の差し招き
まろび入り
花摘む花を
艶魅を科す
らっかろうぜき
いやとわいうも
あらがいよわく
あしひらく
宵酔夜露
濡れそぼつ
芳し野薔薇
口付けて
慕い水蜜
滴りに
火照る時化混み
明かす宵
【酔色交痴応番楽】
宵待に見えねど見得て月掛かる
薔薇濡れ咲く屋号宿なし
──月見酒を楽しむつもりだったが雨になってしまった。だが、心の内には月が輝いている。落ちぶれた自分に似合いのみすぼらしい宿の庭に咲く薔薇を愛でる夜。
〔宵 ショウ・よい〕夜。日が落ちて暗くなった時。
【薔薇】バラ、ショウビ。バラの花。
〔嶐 ル〕山が高い。
〔苛 カ〕さいな-む。きつい、きびしい、ひどい、むごい。こまかい、わずらわしい。いらつく。
〔弄 ロウ〕もてあそぶ、なぐさみにする、ほしいままにする。
〔喘 ゼン〕あえ-ぐ。息を切らせて苦しそうに呼吸する。
〔猥 ワイ〕節度なくみだらな事。入り乱れて秩序がない、やたらなことをする、みだす、みだれる。
〔鬱 ウツ〕晴れ晴れしない心持ち。草木が茂っている様子。物事が盛んな様子。
〔藻 モ〕水中に生える草の総称。
〔爛 ラン〕ただれる。まっさかり。
〔淤 ヨ〕水底にたまったどろ、おり。ふさがる、とどこおる。
〔泌 ヒツ〕液体がしみ出る。せまいすき間から水が流れ出す。
〔絡 ラク〕むすびつける、つなぐ、くくる、しばる。まといつく、からむ、からまる。
〔番 バン〕順序を決めて入れ替わる、またその役目。つがい、二つ組み合わせてひと組になるもの。「番目」、組み合った所、関節。
【時化 しけ】強い風雨で海が荒れる。嵐。




