34)小宮参りお茶壺道中
【こみやまいりおちゃつぼどうちゅう】
椿事叢々
鎮守の杜は
朱塗り靄々
濡れ鳥居
「……(まだ来ないなぁ)……(ああ、もぉ、待ち切れないよぉ)」
「ゴメン! お待たせっ!」
「もぉっ! ……逢いたかった」
「オレも……」
「さ、はやくっ! ねっ!」
「おぅ! ガッテンだ!」
呼ばれても行かぬと昼に呼ばうなら
行く幾度なく逢瀬目合い
よばれてもいかぬとひるによばうなら
いくいくどなくおうせまぐわい
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ずいずい ずっころばし
ごまみそ ずい
ちゃつぼにおわれて とっぴんしゃん
ぬけたら どんどこしょ
たわらのねずみが こめくって ちゅう
ちゅう ちゅう ちゅう
おっとさんが よんでも
おっかさんが よんでも
いきっこなしよ
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行きつ戻りつ
奥着く小宮
子孳利木標を
打ち掛けて
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なんべんやっても とっぴんしゃん
やめたら どんどこしょ
こたつのこねこが ころんで にゃあ
にゃあ にゃあ にゃあ
とだなのねずみが
それきいてたまげて
こしぬかしたよ
いどのまわりで おちゃわんかいたの
だぁ〜れ
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よばれればひるにもよばうひでるなか
よがりいくどもいくといいいく
夜脹れれば昼にも酔這う日照る中
寄雁往く渡も生く途唯々逝く
已まず延々
篠突く時雨
明けて暮六つ
鎮守社
「……凄かったな。もぉ煙も出ねぇよ」
「やだっ! ……もぉ。」
「へへへ……さ、帰ろっか」
「ふふふ……うん!」
【椿事 ちんじ】珍しい出来事。思いがけない出来事。
【叢々 そうそう・むらむら】草が生い茂っている様子。草が斑に生えている様子。
【靄々 あいあい】雲や靄が集まりたなびく様子。和やかな気が満ちている様子、藹藹。
〔蕊 ズイ〕しべ、雌しべ、雄しべ。ヒモや房の端につける飾り。
〔隧 ズイ〕道、地中へ続く道。墓の道。
〔焚 や-く〕火をもやす。火でもやす。
〔洶 わ-く〕水がわき出る。さわぐ、どよめく。
〔赭 シャ〕赤褐色。赤土色。赤茶色。
〔湛 タン〕たたえ-る。水が満ちている。厚い、豊か。耽る、溺れる。沈む。
〔洶く わ-く〕水がわきでる。さわぐ、どよめく。
〔薯 ショ〕イモ(芋・藷)。
〔涌 わ-く〕底の方から表面に現れふきだす。
〔爛 ラン〕ただれる、くさる、にくずれる。うれすぎる、まっさかり。あざやか、はなやか、かがやく。
〔窈 ヨウ〕おくぶかい、かすかな、ひそかな。おくゆかしい、しとやか、あでやか。
〔妄 モウ〕つつしむところがない、せつどがない。むやみにする、みだりに。
〔搓 よ-る〕よる、よじる。ねじり合わせる。(両手で)もむ、こする、こすりあわせる、すりもむ。
〔嬪 ヒン〕女性の美称、ひめ。後宮の妃妾の位階。
〔瀉 シャ〕水が流れ落ちる、そそぐ。吐く、腹が下る。
〔沮 ショ〕はばむ、ふせぐ、さまたげる。くじける、ひるむ。澤、湿地。もれる、もらす。
〔怩 ニ〕はじる、はじらう、はじ入る様子。
〔弥 ヤ〕ひろくゆきわたる、あまねく。いよいよ、ますます。
〔漿 ミ〕液、汁。どろりとした液体。おもゆ。
〔萬 マン〕(≒万)よろず。
〔哮 コウ〕たける、おおごえで叫びわめく。
〔獅 シ〕獅子、シシ、ライオン。
〔蘯 トウ〕ゆれうごく、ゆらぐ。しまりなく、わがまま。とろける。
〔燠 オウ〕赤くおこった炭火。
〔夥 カ〕非常に盛ん、賑やかに繁盛している。数か多い。
〔耽 タン〕度をすごしてたのしむ、むちゅうになる。




