30)かいがかんしょう
──遠く過ぎにし春思い
──回我感傷
【泉】
寝付けぬ春の 夜の帳り
小花巣の泉 恵美浮かべ
緻芙幸の磨蝋実 糯娜楽果な
匂生も経素祀玉 亦梦妄
忌飢立慾膨 益欠きは
赦牲剥諾 夥し
──思春期の夜。寝付け無いままに微睡み見た幻想的な夢は、しかし堕落退廃的でもあった。
【世界の起源】
春厨ニ 至極羞恥の 杭弄瀝絞
謝誠度々 世界の起源
──真面目に素直に感謝を欠かさなかった純情な少年時代を思い出すと汗顔赤面の至りである。
【噴く業の自涜】
泉世界の 起源とも
幻視萠草 福幸富咲と
惑悸も美衣無素 丘湿華り
艶魅の湧醴酩は 濡れ唆嗾
凡夫煩悩 具足也
意馬心猿の 如何とも
和離去過裏の 賤州里に
煮凄催散 焼燃燬
──幻想の原初世界。その美しさを思い描き憧れて感涙を溢す一方で、どう仕様もない人間の業深さに翻弄される少年時代であった。
──快餓旱腥
〔芙 フ〕芙蓉、木芙蓉。蓮の美称。
〔磨 マ〕みがく、磨き上げる。
〔蝋 ロウ〕ロウソク(蝋燭)の原材料。
〔糯 ナ〕餅米。
〔娜 ダ〕しなやか、たおやか。美しい様子。
〔梦 厶〕夢。
〔瀝 レキ〕したたる。したたり。しずく。
〔悸 キ〕動悸。心臓がドキドキする事。
〔唆 サ〕そそのかす。けしかける。欲望を刺激して事をさせる。教えて悪い事をさせる。
〔嗾 ソウ〕けしかける。そそのかす。
〔凄 セイ〕すさまじい。すごく、すごい。
〔催 サイ〕せきたてる。せまる。うながす。もよおす。
〔旱 カン〕ひでり。旱魃。
〔腥 ショウ〕生肉。生臭い、生臭さ。汚らわしい。




