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19)こちょうのゆめ
湯治の旅先での事。ゆったりと寛いでいると、不意に気配のして──
【糊寵の誘酩】
旅行き湯気場
照絮竪菓味
遊翔けも楚々る
黒揚羽
朱輝に溶沸せて
誘辺り揚羽
恵る丘谷
杜の奥
揚羽川岸で
示す潺
湿して咲かす
花彼岸
舞いて躍るは
香魅黒揚羽
満ちて開くは
曼珠沙華
白樹葉朶染め
匂艶揚羽廻る
曼珠散らして
流渦に堕し
蝶を追い 花を咲かせる 谷湧蒸れに
湯迷の姫琴 嬉媚千乱急る
とらえるちょうの
はなさかせれば
ちるもはてなく
はなさかせ
ひがんのはなの
みつすいたてて
まんじゅからまり
あげはちょう
【娘酊の愉鳴】
「……ねぇ、もっと」
──釣られ籠められたのは果たして…………いや、いまはただゆめのまにまに
〔絮 ジョ〕蚕の繭を水にひたして裂いて作った綿。真綿。→柳の花や雪片のたとえ。
〔潺 セン〕せせらぎ。水がさらさらと流れる様、その音。
〔朶 ダ〕枝、花のついた枝。枝垂れる(しだれる)、花や実が沢山ついて垂れ下がる。垂れ下がっている物、状態。
〔漲 チョウ〕みなぎる。水の勢いが盛んになって満ち溢れる。溢れんばかりに満ちる。




