表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
思懋涅丹  作者: 漉緒
12/57

12)もえる なつ

 ──夏の或る日の事、私は鉄道に乗っていた。




【もえる なつ】




摘花睦梨川(つかむつりかわ)   初弖梨(そでなし)

若木(おさなき)匂樹(わき)   新香気(にこげ)()

露谷酩輝(つやめき)青精(あせ) (かお)()

(さそ)われ()ちる  夢現(ゆめうつつ)



 摘花睦梨川の初弖梨の樹。若木の発する何とも芳醇な香りに、私は夢現な気持ちとなり酔いしれるのだった。






()うは空蝉(うつせみ)   緋芽琴(ひめごと)

(こた)える蠱笑(こえ)も  (あや)かしく

()()()()の 雅繰(まさぐ)りに 

()ちて(たか)ぶり  ()めやらず



 いつの間にやら、目の前に妖精がいた。琴の音の様な声の美しい妖精との問答に私の心は激しく昂ぶり、時の経つのも忘れて楽しむのだった。






蒸漬美(むつみ)婉沾(えんてん)   丘裾野(おかすその)

()れて(まみ)れて  染乱(そら)入道(にゅうどう)

(ひら)いた夥灑(かさ)に  夕立(ゆうだ)ちの

荒突(あつき)熱濔勢(あびせ)て  若艶(もえ)娜罪(なつ)



 炎天の下でも初弖梨の樹のある丘の裾野は強い湿気に濡れ匂って美しい。にわかに入道雲が湧き立ち、激しい夕立ちに見舞われる。傘をさしていても豪雨と熱気でずぶ濡れになってしまったのだった。








 ──ふと我に返った私の目に映ったのは、袖無しの…………



「…………すごかった」




 ──燃える様な暑さの夏の日の事。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 残暑お見舞い申し上げます。 とある田舎の夏風景が目に浮かびますね。走っている電車はきっと一車両で単線でしょう。 [気になる点] 辿り着いた古い旅館の一室。。。 わざと冷房もつけずに何度も『…
[一言] うぉぉぉぉぉい! いったいどこまで……!? どこまでやってしまったのでせうか……!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ