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こころ〜希望と絶望の摩擦〜  作者: 鈴本 貴宏
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唐突は再び

 今日は何としてでも公園に行かなくてはならない。そんな重圧を胸に6月の、ジメジメした梅雨のたまたま晴れている日に長袖長ズボンにフードのあるパーカーで、ネックウォーマーまでした完全防備で出かける事に決めた。母に公園に行くと告げる。


「いってらっしゃい。でも、あんまり長い時間は駄目よ」


少しいつもより明るい声で、だが僕には頑張るな、と言っているような気がする。


玄関を出て庭と歩道との境界線で少し止まってしまった。家の敷地内はなにかのバリアーで守られている気がしていて安心しているが、一歩外に出ると外界は僕にはジャングルに見える。


そこには色々な肉食動物がいて歩行者はワニやサイ、自転車はライオンやチーター車はゾウ。僕みたいなウサギはいつでも殺せるぞ、と威嚇しているようにしか見えない。


そんな危険地帯に踏み込むのはとても怖いが、普通の人はみんなやっているのだから自分も、と勇気を出して一歩外に出る。出てからは多少怖いがなんてことは無いただの道。


こんな怯えてどうする、とパンっと頬を強く叩き公園へ向かう。


不思議なことに公園の入り口の並木道、ここに来るとなんだが木々に讃えられているようで誇らしくなる。いつのまにか先程まで感じていた不安感や緊張感は、どっかに行っていた。


そこを抜けてからが本番。

いつもの花畑に行くと流石にスズランは枯れてしまってどこにあったかさえの分からない。

もう見ないようにしようとしていたが、実際枯れてしまっていると分かると見続けておきたかったな、と思う。


辺りを見渡すと、公園の反対側に紫陽花が咲いているのを見つけた。

次は紫陽花を見てみようか、そう思いぬかるんだ道を水溜りを避けながら歩いた。

ここのところカーテンを閉めていたので昨日雨が降っていた事を今になって気がついた。


紫陽花まで100mほどになった頃、見覚えのある人影に気がついた。


カメ爺だ!

カメ爺とはこの間写真クラブに勧誘してきたおじさんのことで、背負っていたカバンが亀の甲羅みたいでカメラとかけてカメ爺と勝手に命名していた。


あだ名をつけるほどには気になる存在になっていたのは事実で、少し話してみたかったったが、またしつこく勧誘されては困るので180度旋回して公園の出口の方へ向かおうとした。


「おーーい、君ーー」


まず、声をかけられた事よりこの距離で僕を認識できる程、覚えていた事に驚いた。

一歩、二歩と遠ざかろうとする。


「おーーい、そこのフードの君!」


また呼ばれてしまった。

周りを見てもフードの人はいない。

更にこちらに向かって歩いてきてしまっては無視しようがない。


「なんですか?」


そう言いながら足取りは重りでも付けているぐらい前に出ない。そんなことは気にしていない様子でカメ爺はズカズカとこちらに向かってきた。


「最近ここに来てなかったけど何かあったのかい?」


そんなに僕に写真クラブに入って欲しいのだろうか、まあそれはさておき体調が悪かったなど一度しか会ったことない人に言っても仕方ないな。

適当に、はぐらかしておこう。


「たまたまです、用事があって」


「じゃあ、また公園には来るの?」


そう期待交じりの声でじーっと見つめられて、来ないとは言えない。


「えぇ、来ますよ。日課なので」


パァーッと明るい表情になった。


「じゃあ、この公園でやる時だけでいいから写真クラブに参加してくれない?」


「えぇっと......どうしようかな」


不意の提案に驚きはしたが、この公園の時だけだったら僕にはなんの問題も無いし、そんなに考えてくれていたのに断るのも申し訳ない。


「まぁ、この公園でだけなら」


手のひら返しをするようではずかしかったが、快諾した。


「ホント!よかった、ありがとう!」


すると、いきなり握手を求めてきた。

握手など何年もしていなかったので恥ずかしかったが、断るのも悪いので一応手を出した。

力強く握られた手に少しの痛みを感じながら、これからはこんな事を定期的にしなくてはいけないのかも。早くも後悔してきた。


「じゃあ、3日後にここで会おう」


と言ってこの日はご機嫌で帰って行った。

僕はまた公園を出ると、恐怖心が蘇ってきて小刻みに震えながらもなんとか家に戻ってこれた。


なんと二人の対照的なことか。

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