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デカイんだってさぁ。と、咆哮


パパムイが小声で僕に話しかけてきた。


『なに?』

『ありゃ・・・デカすぎる』


やっぱり大きかったみたい。


『パパムイはバロバロを見たことが有るんでしょ?』

『ああ、見たことが有る・・・が、彼処までデカイのははじめて見た』


じゃぁ、ことさら大きいわけだ。

・・・やめない?

怪我してからじゃ遅いよ?

他の食べ物沢山あるんだしさぁ?

それに僕は肉より野菜派だしね。


『ポンピカ・・・あのデカイ二匹の気を引けないか?』


・・・囮?

パパムイ?

僕を囮にする気?

えっ?

親友だと思ってたけど・・・違ったのかな?


『・・・気を引けなくもないけど・・・追いかけられたらどうするの?』

『大丈夫だ。彼処まで体がデカイと走る速さはそれ程じゃない。それに器用に手は使えるけど、木の上に登れば追っては来れないぜ』


・・・それを囮っていうんだよ?

パパムイ・・・。


まぁ、しかたないか。

パパムイは狩り専門だ。

間違っても囮専門ってわけじゃないんだしなぁ・・・。


ってか、親友も囮に使うっていう常識・・・問題有る気がしないでもないなぁ。


それにここでまごまごしてると、展開が進んでしまう。

それが望んでない場面へ進んだら目も当てられない。


う〜ん。

やるかぁ。


『パパムイ。ちなみにだけどさ?』

『ん?』


『アノ大きな二匹を引けば良いんだろ?』

『ああ、理想はそうだ。ちっこい二匹を奪えれば成功だろう』


・・・わかった。

やろう。


『じゃぁ。後少しまってて。それと、ウウダギはここでパパムイに着いてってくれる?』

『わかった。アブナイは危険、気をつけて』


『うん。行ってくる』


そして、僕一匹で皆とは反対の位置まで移動する。

バロバロを中心にパパムイ達とは反対側へ、

大きく周回して位置へと到着する。


さて・・・。

周りを見るとすぐに木へ登れる場所が有る。

まぁ、確認したからこの場所を選んだわけだけど、

タイミング合わないとマズイからなぁ。


さてと、遠目でパパムイが顎をクイッとすくい上げて合図を送ってくる。


やるしか無いか。

さて・・・。

どうやって、バロバロたちの気を引くかだ。


取り敢えず、体を表せて、

それから声でもかけてにじり寄ってみるかなぁ。


・・・そうだっ!

面白いことを考えたぞ!


獣には獣だ。

獣って言ったら咆哮だよね?


幸い僕らスキクは獣に近いだろ?

なら・・・。


咆哮位使えるんじゃないか?

きっと気を引くくらいは出来るだろ?


でも、ただ叫んだだけでは意味がない。

ならば・・・。


僕は呼吸によって大量の気を上気道から下気道へと流し、

さらに肺へと落とし込む。


同時に声帯へも気を集中することで、

声に気を乗せるような事が出来ないかと思ったんだ。


できそうだな・・・。

さて、いくぞっ!


シュゥゥゥゥゥ!ジャグアアアアアアァァァァァ!


信じられないような重い音が喉の奥から絞り出せた。

肺に溜まっていた気も一気に声として外に放出させた。


僕の咆哮、上手く行った気がする。

大気の振動がヤバイ。

何ていうかジェット機が側をいきなり通り過ぎた様な感じだ。


周りの木々は細かく揺れて、

枯れている葉っぱ類はものの見事に地面を目指した。


地面に茂っている草も僕を中心に僕を避けたいとでも言うようにそっぽを向いてる。


・・・あれ?ヤバかった?

咆哮・・・咆哮に気を混ぜるの危険だったのかもしれない。


まぁいいや。

目的のバロバロはっと・・・。


ブフゥッ!ブフゥッ!ブギャァァァ!


雄の一匹が僕へと走ってくる。

気を引けはしたようだ。


「パパムイ!今のうちだ!そっちを片付けてくれ!」


返事がない。


「何をやってるんだっ!予定道理に行動してくれっ!」


そこまで言う頃には目の前に巨体が迫ってきていた。

ヤバイ!とおもってすぐに手近な木へと飛びつきササッ!と登った。


それに気づいたバロバロの雄が僕が登る木に突進をかけてきたものだから、

掴んでいた木が物凄く揺れる。


その拍子で、僕は掴んでいた枝を離してしまい、

地面へと落ちる。


落ちる瞬間に見た。


パパムイ達・・・ありゃ気絶してるなぁ。

バロバロの子供連中は倒れてるし、雌のバロバロなんか立ったまま白目をムイてる。

かろうじて、袋の中の子供がモゴモゴ動いて入る様子だったけど、役には立たないだろう。


・・・ウウダギ・・・しっかり耳に手をやってるけど、そのまま倒れてる。

パレンケはデデンゴに覆いかぶさる様に倒れ込んで、

デデンゴに至っては失禁してる様子。震えていないことから気絶だ。

イイオオは顔を伸ばさないでそのまま地面に前のめりだ。


パパムイは腰を中腰にまで伸ばした所で、固まった状態だ。

微動だにしない。


ダメだなぁ。

咆哮は危険だったね。


ズサッ!

つぎの瞬間地面へと叩き込まれる。


仰向けに木から落ちた僕の横にバロバロの雄が木に突撃したままでいる。

・・・息はしているけど、どうやら錯乱してる状態のようだ。


真横に居る僕に気づいていない。

息づかいが物凄く荒いし、何より目が血走ってる。


僕を見てない。

横っ腹ががら空き・・・。


やっちゃって良いんだよね?


ズドンッ!


気を練り込んだ、掌底をバロバロの横っ腹の心臓近くへと叩き込むと、

あっさり口から吐血して倒れ込んだ。


取り敢えず、バロバロの雄の息を確認すると、

既に事切れていた。


まぁ危険は去ったなぁ。

取り敢えず、彼処の気絶してる雌とにトドメを刺そう。

ついでにバロバロの子供たちは前足と後ろ足を結んで置けば、

起きても運べそうだ。


それから安全を確保したら、

パパムイ達を起こせばいいかな。


さて・・・作業に取り掛かろうかなぁ・・・。


”ポンピカよ。今ものすごい叫びが聞こえたんじゃが・・・”


・・・後ろに立たれるの嫌なんだけどなぁ・・・。

ってか精霊さん着いてきちゃったの?


「・・・その叫び声・・・僕がやったんだ・・・”咆哮”って名付けるよ」

”ホウコウ・・・随分、奇怪な術じゃな?アレでは近くの者が皆気絶してしまうだろう?”


そうね。

現にバロバロの雄意外・・・僕も対象かな?

気絶したんだ。


諸刃な術だなぁ。


”しっかし、こりゃ偉いことに成っておるな?どうするのじゃ?”

「・・・バロバロの雌を殺した後、バロバロの子供たちを拘束して、パパムイ達を起こすよ」


”そうか・・・しかし、驚いたぞ。ワシも意識が遠のいたからのう”


精霊にも効いちゃうんだ・・・良いこと聞いた。


精霊さんが、僕の周りをウロチョロしながらだったけど、

作業を進めた。


雌も立って気絶しているので、

心臓へと浸透発勁を入れて殺し、

ウウダギの縄で、子供達の足を縛った。


三匹居る子供達の内袋の中に居た一匹は袋から出す時、

まだ、お腹にへその緒が着いており雌親とくっついていたのだ。


でも、仕方ないのでそのへその緒を切ってやると、

すぐに衰弱してしまった。


さらに作業を進める。

取り敢えず、ウウダギを起こす。


なぜパパムイからじゃないのかと言うと、

隣で喚いているのが居るからだ、

さっきバイバイしたのになぁ・・・。


ウウダギの事が好きに成っちゃったのかな?

あげないからね。


耳に両手を当てたまま横倒しに倒れているウウダギをうつ伏せにして、

背中の肺の位置に有る脊椎を指で探る。


両方の肩甲骨が一番狭い位置にある脊椎の辺りに少し刺激を与えると、

ウウダギが、息をゲホゲホ言いながら吹き替えした。


意識も取り戻したみたい。


「ウウダギ大丈夫だった?」

「・・・耳。怖い」


怖かったのかぁ。

悪い事しちゃったなぁ。


「もう、あの術は使わないよ」

「うん」


なんだかチーンって感じのウウダギがいたたまれない。


「ポンピカ。皆も起こす。手伝う」

「ありがとうね。ウウダギ」


ウウダギと一緒にパパムイ、イイオオ、パレンケ、デデンゴを起こす。


「・・・ポンピカ」

「ん?」


「何だあの叫び声」

「ビックリしちゃったでしょ?僕も自分でやっててビックリしたよ」


「あんなのが出来るなら先に言ってくれ、でないと、囮に使えないだろ?」

「・・・」


囮っていう感覚は有ったんだね。

っていうか分かってて、囮につかったの?


・・・親友じゃなかったのかなぁ?


「まぁ、でも結果全部と構えることが出来たからな!良しとするか!」


機嫌は良いようだ。

今度またパパムイに咆哮してやろっと。


周りで騒いでいた精霊さんはずっとウウダギの側で、

イヤに優しい目を向けている。

当のウウダギは其の視線を少し邪魔に感じているようだ。


まぁ、騒いだりしてないから良いけどね。


「なぁ?なんでラマナイ様がいるんだ?」


パパムイはもうハッキリ見えちゃう感じになっちゃった?

どうやら精霊さんの発する言葉までくっきり聞こえてしまうらしい。


霊感かぁ・・・制御出来ないと厄介なんだけどね。

まぁ、有るなら有るで使いみちは色々だけどね。


まぁいいか。

取り敢えず、狩りは終えたんだ。

さっさと集落に運ぼうか。


「さて、皆!バロバロって旨いんだろ?集落へ持って帰って帰ってたべよ」

「ポンピカ。言わせてもらうが、この量どうやってこの匹数で運ぶつもりだ?それも考えてパパムイは、親だけ引き離すつもりだったんだが・・・」


・・・そういうの前もって言ってくれるとうれしなぁ。

でも殺っちゃったわけだしさぁ?

喜ぼうよ。


・・・運び方なんて皆何か知らないけど、

たまに凄い力だすじゃん?

それで乗り切ってくれない?


「・・・じゃぁ、だれか集落から匹数集めてきてよ・・・ここで解体して集落に運ぼう?」

「・・・それしか無いですね。わかりました。僕とデデンゴは役に立っていませんから戻って誰か呼んできますよ。」


パレンケは自分の立ち位置が分かるタイプだなぁ。

イイヤツだ。


「じゃぁ、お願いします」


すると、デデンゴが自分が気絶して失禁しているのに気づいたらしく、

それをウウダギが見ていたことに羞恥心をくすぐられたようで、

股に手を当てて、したを向きながらパレンケの後を付いて戻っていった。


デデンゴには悪い事したなぁ。


「なぁ?それにしても何なんだ?あの叫び声・・・」

「ああ、僕が大声で叫んだんだよ。ほら、バロバロの気を引くためにさぁ・・・」


「あの叫び声は今思い出しても頭がクラクラするんだよなぁ」

「パパムイじゃないが、俺も正気で居られなかったぞ?流石に集落ではやるなよ?」


なんだか、お説教タイムに突入しそうだなぁ。

まぁ、回避しよう。


「ああ、悪い悪い。所で皆が来る前にバロバロの解体を始めちゃわないか?」

「そーだな。それにしてもあの親のバロバロは二匹とも普通のバロバロよりふた回りくらいはデカイな?なんでだ?」


「そんな事僕に言われても知らないよ」

「俺もわからねぇ」


・・・どうやら特殊な個体だったらしい。

殺っちゃ不味かったかな?


”何をお前ら言っているんだ?”


そうだった、精霊さんが居たんだった。


精霊さんはウウダギの横で、

スカスカな手でなんとかウウダギを撫でようと必死に成っていながらも、

僕等の会話を聞いていたらしい。


「精霊さんなんか知ってるの?」

”うむ。これは、稀に起こる事なのだがな。俗に言う『オパンパル』と言う物じゃ”


なんだろう?

聞きなれないけど、どうしてもオマルとパンパースがくっついたような発音に聞こえる。


・・・精霊さんって下ネタ好き?

精神年齢は小学生くらいですか?


「そのなんていうか、言いづらい感じの名前はなんなの?」

”うむ。オパンパルとはな?稀に生き物に想いや生命力が凝り固まる事で起こるとされている”


なんだろう?

普通の返しできたよ?


「ふーん」

「へー」

「おい?お前ら何を話してる?そこに何か居るのか?」


イイオオだけ符を外しちゃって使ってないものだから見えないし、

そもそもイイオオは符を使っても聞こえないからね。


「セイレイサン」


簡潔すぎて何も言えないなぁ。

ウウダギはズバッと派だしね。


「セイレイサンってのはさっきのか?ラマナイ様だよな?」

「うん」


”ふふふ。ウウダギはかわゆいのう。とても良くできておる”

「精霊さんの子孫は多分パパムイだと思うよ」


”なぬ?なぜそう言い切れる?”

「なぜって言っても、そっくりだから」


「ちょ!なんでこのスケスケと俺を一緒にするんだよ!」

「ちょ!おまっ!またぶり返すだろ!その言い方やめろよ!捌けなくなるだろ」

「パパムイ。言っちゃダメ。セイレイサン泣く」

”ぐぬぬ!パパムイとやらがワシと似てるとは到底思えぬぞ!”


この場が段々、混沌としてきたので、

パパムイと精霊さんだけ残して、さっさと捌く作業へ入った。

なんにしても付き合っていたら埒が明かないからね。


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