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ゆで卵と埋立地


結局イイオオと二匹で4個ずつ孵らなかった卵を抱えて、

食事の場へと戻る。

卵を抱える時、成体のケルケオがジッと僕が抱えている卵をみていたので、

途中で側によって、匂いを嗅がせると、途端に興味をなくしてしまった。


どうやら、匂いで分かってしまうようだ。


「で?どうやって食べるのよ?」

「う〜ん。取り敢えずこの殻ごと茹でるんだ」


「茹でるって言うと、鍋の中に水入れて、やるやつよね?」

「そう」


「殻って、溶けるの?」

「溶けないよ。溶けないけど、茹で上がると中身が固まるんだ」


「中身が固まる?中身ってあのドロッとしたやつだよね?本当に固まるの?」

「固まるよ。取り敢えず鍋に入れよう」


鍋に8個の卵を入れて、茹でること30分位。

殻も厚そうだし、何より鶏の卵より大きい。

多分30分でも中まで火が通っているかわからないくらいだけどね。


まぁ、大丈夫だろう。

完全に腐ってはいなさそうだ。


出来上がったゆで卵を僕とウウダギ、シシブブとイイオオで4個ずつ分ける。

一個でも多分お腹いっぱいになりそうだけどね。


・・・余ったらギギリカかパパムイにあげよう。


「こうやって割るんだよ」


カツガツと石のある場所に卵の側面を叩きつける。

結構力が居る。

殻が思いの外厚いようだね。


硬い石へと当てること、

ちょっと掛かったけど、

なんとか割れ目が出来た。

そこから鋭くはない人間の爪しか持たない僕の指でも割れてよかった。


なんとかベリベリと殻を剥いていく。

中から出てきたのはツルンとした少し青みがかかったゆで卵だ。


青み掛かってるのはなんだろう?

腐敗してたかな?


まぁ、匂いからするとそうでもなさそうだ。

もしかしたらケルケオの卵ってのは中身が青いのかもしれないね。


「こうやって、中身が出てくるよ」

「・・・本当に中身が固まるのね?しかもツルツル・・・なんだか可愛いわね」

「そうだな・・・コレすごく良い匂いがするけど・・・取り敢えず、一口お先するぞ」


そこまで言って、イイオオがまっさきに口へと入れた。


スキクは何度でも言うが、

基本的に丸呑みなんだ・・・。

しかしイイオオはどうやら剥いたゆで卵を口の中に放り込むとすぐに噛み砕いて、

胃に流し込んでいく。


そして、僕の方を見て、ウンと言う合図が来た。

食べれそうだね。


「ウウダギも食べよう」

「・・・ケルケオ・・・」


ウウダギはケルケオ好きなの?

アンキロじゃないの?


「ウウダギ。この卵は孵らないんだ・・・。だから、他の動物に食べられるくらいなら僕らで供養しよう?」

「・・・わかった。食べる」


ウウダギが口の中に放り込・・・まない。

っていうか、少し大きかったので丸呑み出来ないようだ。

仕方なく口の横から齧るように割って食べた。


そして僕の方を向くと、ウンと頷く。

どうやら気に入ってくれたようだ。


シシブブもそれを見て、口の中に放り込んだ。

今まで、シシブブの好きな食べ物って言えば肉だったけど、

多分、順位が変わったんじゃないかな?


シシブブの表情が何時になく緩んでいるのが分かる。


イイオオはそれを見て、

自分の手元にあるもう一つの卵を見ては、シシブブを交互に見比べた。


そして、早々に二個目をムシャぶり返しているシシブブに自分のゆで卵を渡したんだ。

その時のシシブブの目の輝きって言ったらすごかった。


今まで女帝の様につめたーい目をしている時が多かったのに、

なんと言うか、イイオオに見惚れているようなそんな感じだ。

まさに今、シシブブとイイオオの周りには花が咲いているだろう。


まぁ、色々言うけど、ドピンクだわ。

ウウダギが見てるから程々にね。


そんなこんなで、卵の試食を終えて、

イイオオとシシブブは仲良くまた、

牧場へと向かっていく。


その姿を見送った、僕とウウダギは次に埋め立て場所へと向かった。

ここには大抵、手の空いているヤツが来ていたり、監督をギギリカがやってたりするんだ。


ほら、今日もギギリカがやってる。


「ギギリカ。状況どお?」

「あ、ポンピカ。状況でしょ?まずまずかな?」


やっぱり専門とかじゃないと進みが悪いのかな?


そんな事を思いながら少し坂に成っている埋立地までの道のりを歩く、

次第に視界が広がり埋立地の全貌が見えてくる。


そして絶句した。


絶句したっていうか、今登ってきた坂だけど、

今までそんな坂に成るほどの傾斜が付いている場所なんかなかったはずだ。


流れのままそのままに歩いたけど、

そもそもが可笑しい。


「ねぇ?随分地面高くなったよね?」

「そう?あたしは毎日見てるからぁ・・・わかんないわよ?」


いや、でもさ?

坂出来るくらいだよ?


今皆が飲み食いしてる場所から相当高いよ?


どうして、ここまで積み上げることが出来た?

だって、そんなヒマ無いでしょ?

有ったのかな?

あれ?僕だけ時間が緩やかだった?


何日か寝過ごしたかな?


分かんない。


「そ、そっかぁ。それに既にこんなに平らな面を・・・結構広いよね?」

「うん。結構ヴァレヴァレの子も手伝ったのよ?それに何よりパパムイが凄かったわ」


パパムイが?

年中狩りしかして無いアイツが?

頭が足りなくて何言ってるかわからないアイツが?


・・・ですか?


「パパムイは、今・・・?」

「久しぶりに狩り言ってるわよ。最近ギュギュパニに言われてずっとここの手伝いしてたの」


なるほど。

ギュギュパニに言われたらやるしか無いだろ・・・。

でも進み過ぎじゃない?


「今はね。ポンピカがやれっていったソクリョウを取り入れたから随分キッチリりつくれるの」

「測量?あのなんちゃってをちゃんとやってたの?」


「うん。ヴァレヴァレの子はあまり使えないんだけどね。言われたことはちゃんとやろうとする努力家なの。ソクリョウも言えばちゃんとやるように成ってるわよ。」


へぇー。

昨日今日でできるように成っちゃうものなのかぁ。

どっかで、脳みそでも交換したのかな?ヴァレヴァレ達。


「でも昨日はコレほど、高く積み上がってなかったよね?」

「そう?」


「だって、測量も昨日教えたよね?」

「・・・そうね・・・なんでだろう?一日って結構時間あるからじゃない?」


・・・あるように思える?

僕の感覚だと、元の世界と対して変わらないんだけど・・・。


でも目の前にはできちゃってるわけだし、

どっかでその作業がどうやって行われているのかをジッと見ているわけではないので、

ベベビドの件もそうだけど、なんか皆の動きや速度が見ている時と見てない時で違うのかな?


そんな気がしてならない。


まぁ、できてる物をとやかく言っても仕方ない。

この調子なら来年までの間にヴァレヴァレが合流してもより大きく集落を形成できそうだ。


もしくは・・・。

ギギリカってかなり優秀?

ウウダギだけじゃないのか?


まぁいいや。

あまり考え込んでも意味ないかなぁ。


「ねぇ、ポンピカ」


なんか、声のトーンが落ちたな?

なんか相談かな?

隣のウウダギもギギリカを見ている。


「どーした?相談?」

「うん。パパムイの事なんだけど・・・」


パパムイ?

昨日まで手伝ってたとかいってて、

狩りができなかったからイジケたか?


「最近、森の中で変なスキクを見るって言ってたの」


・・・敵的な話し?

ヴァレヴァレのおかわり?


「どんなやつとか言ってた?」

「それがさー。あたしにも確認して欲しいって言われたからついていったんだけど・・・」


「ついていったけど?」

「あたしにはわからないのよ」


「スキク居たんでしょ?」

「違うの。パパムイが彼処だ!って言ってるんだけど、あたしにはわからないのよ」


「遠くなの?」

「遠くじゃなかったわ」


「森と同化してる様な感じだった?」

「それならあたしでも分かるでしょ?ちがうのよ。パパムイだけが見えるみたいなの」


・・・もう少し話を聞こう。


「はぁ〜・・・。とうとう、パパムイ可笑しくなっちゃったのかなぁ?頭が足りないのが原因かなぁ?」


違うと思うけど、ここはあえて何も言わない。


「ポンピカも一回パパムイに言い聞かせてあげてほしいのよ・・・そんな変な事言ってないでこっち手伝ってよってさぁ」


多分、変なこと言ってません。

それ、ギギリカだけが見えないやつだ・・・。

主に精霊さんだなぁ・・・。


「パパムイはそれ見てなんて言ってるの?」

「なんだかね?パパムイが言うには、そのスキクが居ると狩りが出来ないんだってさー。騒がしいらしくて、小さい動物も逃げていっちゃうらしいのよ。迷惑なんだって言ってるの」


精霊さん・・・迷惑なのは僕の前だけにしといたほうが良いかもしれないぞ。


「ポンピカどう思う?パパムイ可笑しく成っちゃったよね?」


大概ギギリカも酷い物言いだけどなぁ・・・。


「多分可笑しくはなってないよ」

「なんで?」


「ウウダギもそう思うよね?」

「セイレイサン。変」


直球のウウダギ節。


「ウウダギもポンピカもそのスキクの事知ってるの?」

「知ってるっていうか何ていうか・・・」

「セイレイサン。変」


ウウダギが精霊さんは変だという事から離れない。


「・・・そのスキクってウウダギが言ってるセイレイサンってやつなの?」

「あー・・・うん。本当の名前はあるんだけどね・・・というか、多分ギギリカは見ることができないんだと思う。集落の中で見ることが出来るのは・・・パパムイは見れたみたいだけど、僕とウウダギ・・・あとは条件さえ合えば、ヴァレヴァレの連中と族長とギュギュパニくらいかな?」


「・・・なんであたしは、見えないの?」

「えーっと・・・精霊だから?」

「セイレイサン。生きてない」


ウウダギが直球すぎる。


「セイレイサンって生き物じゃないの?パパムイはスキクだって言ってるけど・・・」

「あー・・・えっとね。昔はスキクで間違いないかなぁ?」

「セイレイサン。昔死んでる。生きてない」


そのものズバリですね。


「なるほど・・・。そういう事なのね?パパムイも見れるように成ったって話?」

「ギギリカとはそんな話あまりしてなかったはずだけど・・・なんで知ってるの?」

「話した」


ウウダギがギギリカより早くネタばらした。


「・・・ウウダギに聞いたからよ」

「・・・なるほど。まぁ何がどうなってパパムイが見れるように成ったかわからないけどね」


「・・・あたしも見れる?」

「まぁ、色々やんなきゃ見れないと思う・・・」

「ギギリカ。見れる」


ウウダギのお墨付きでたね。

符でもつかうか?

ギギリカも気功やる?

見様見真似で習ってたりするのかな?


「あまり、こっちの世界には足突っ込まないほうが良い気もするよ?」

「なにそれ・・・そんなに危険なの?」

「セイレイサン。変。羽が着いてる」


ウウダギの意図するところが段々わからない。


「羽?? パパムイは年老いたスキクだっていってたけど?」

「ギギリカの話しからすればやっぱり精霊さんで間違いないとおもう」

「羽着いてる。変」


・・・そこまで、変ではない気もするけどね?

昔、インディアンって言われるネイティブ・アメリカンの絵を教科書で見た時。

頭に羽の飾りとか被ってたからね。

まぁ、文化的な何かとかおもうけど・・・詳しくはわからないからウウダギには言わない。


そこまで話していると、項垂れる姿でパパムイがこちらに坂を登ってきた。


「ほら、噂をすればってやつね」

「ギギリカ。やっぱり俺頭が可笑しいんだと思うんだ。やっぱり頭が足りないとこうなるのか?」


唐突な会話で僕もウウダギもついていけない。


「今、その話してたのよ。パパムイが頭足りなくても、変じゃないって話しよ?」

「ふーん。じゃぁ、何なんだあれ?すげー迷惑なんだよなぁ」


パパムイって、

ギギリカの酷い話しに対して、

突っ込む事はしないんだね。


う〜ん。

パパムイには悪いけど、言っても聞かないだろうなぁ。


「パパムイ。そんなに気になるなら話しかければいいだろ?」


ちょっと無茶ぶりしてみたく成った。


「・・・ポンピカ?正気か?相当酷いぞ?アレ」


なるほど、パパムイがドン引きするくらい酷い有様だったのか?


「そうなの?でもパパムイなら出来るよ?きっと?」


更に無理強いを強要してみた。


「そうかなぁ〜?だって、アレは森の中でずっと奇声上げてるんだぞ?正気じゃないぞ?俺、そんな変なスキクにはかかわり会いたかねーもん」

「大丈夫だって・・・きっと?」


「・・・なんでポンピカは全部疑問で返すんだ?」


・・・そんなの・・・面白いからだろ?

わからないの?

やっぱりパパムイは足りないねぇ。


「う〜ん。僕じゃわからないからねぇ。聞いてみたんだ」

「そうか。でも、俺は争いが苦手なんだ。狩りなら良いけどな」


似たようなものじゃないの?

多分、精霊さんに体が有っても結構いい線いくとおもうよ?

なんて言ったって、頭は足りないけど、体動かすのはピカイチだからね。


「なぁ?」

「ん?」


「俺、頭が足りないけど、アレがポンピカやウウダギが言ってたやつだろ?セイレイサンとかいう」

「へー。よく気がついたね?すごい。凄い」


「そのセイレイサンってウザイとか・・・たしか、ポンピカも関わると、眠れなくなるとか言ってなかったか?」


あー。

そんな話したかもしれない。

まぁ、当たってるけどね。


「まぁ、其のとおりだけど」

「そっかぁ・・・。じゃぁ、しばらくは森での狩りはお預けかなぁ?」


なんでそうなる?


「なんで?」

「だって、あのセイレイサンだっけか?アレが居ると動物が寄り付かないんだ。それに狙った獲物が逃げちまうしなぁ」


そんなに、はた迷惑な事してるんだね。


「パパムイはどうしたいの?」

「ポンピカが知り合いってんなら、一言いってくれねーかな?」


無茶だよ。

精霊さんって僕の言うことあまり聞かないからね。

っていうか、なんでパパムイが居る所で、術の練習してるんだろう?

術の練習なのかな?

騒ぐ様な訓練ではないはずなんだけどなぁ。


でも、パパムイが困ってるしなぁ。

困ってる姿見るの面白いしなぁ・・・。

放っときたいなぁ。


「ポンピカ。セイレイサン言う。聞く」


ウウダギがなんだか確信もって言ってるなぁ。

どうしよう。

パパムイが言うなら放っとこうと思ったけど・・・。

仕方ないか。


「ウウダギがそう言うなら一言言っとこうか」

「なんで俺のときは即決しないんだ?」


「だって、パパムイが面白かったから」

「・・・ギギリカ。俺なにか悪い事したか?」

「してないけど、ポンピカの気持ちは分からなくないよ」


「・・・そうか。じゃぁいいか」

「別に気にする必要無いんじゃない?頭足りないんだし」


「そうだなっ!まぁいいか!はははw」


パパムイはいいなぁ。

なんだか何時も楽しそうだ。


しかたない。

パパムイから居る場所を聞いて、精霊さんに一言物申そう。


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