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牧場とゆで卵


再度、集落に戻った。

ホントはギュギュパニのところに顔を出したかったけど、

意外に時間を食ってしまったようだ。


「ウウダギ。 何か食べるかい?」

「う〜ん。うん!クダモノ」


今日は甘い物が食べたい気分なんだね?

いいよ〜。採ってきてあげよう。


ウウダギを集落に残し、ちょっと近場に有る果物を採ってきた。

マンゴーっぽいやつだ。


このマンゴーもどきは常に実が成っている。

何故だろう?


花も咲いていたりする。

普通、花が咲いた後、かれて、実が成って、そんでもって果物に成るんだよね?


それが一本の木の中で同時に起きるって可笑しいよね?

可笑しくないのかな?

可笑しい気がする。


ちなみに、このマンゴーもどきは木の幹がそれ程太くない。

僕の片腕程度の太さだ。

だけどそこそこ背が高い。

それでも、枝の先に連なって成る果実が重いようで、

頭を垂れる様に下へと下がってしまっている。


おかげで、取りやすい。


ベベビドに言って、ヴァレヴァレの連中にも取りやすいようにはしごでも作ってもらうかな。


「ウウダギ。採ってきたよ」

「ありがとう」


ちゃんとウウダギはコレの食べ方を知ってるからOK

薄皮を細い指で器用に剥いて、果肉を頬張る様子が、可愛らしい。

口の周りがベトベトに成ってる所も可愛らしい。


ちゃんと拭いてあげる。


ウウダギの木布でウウダギの口の周りのこびり付いた汚れを拭き取る。

拭き取る時の仕草も可愛いんだ。


長い口を僕の方に突き出して、拭いてくれという態度を取るんだけど、

ソレを少し焦らすと、喉が膨らみ始める。

あまり焦らすと自分で拭いちゃうので、

程々のところで口を拭いてやるんだ。

すると、目を閉じて、嬉しそうにするんだよね。


一通り拭き終わると、間食完了だ。


さて、つぎはどうしようかな?


「ポンピカ。アンキロ見たい」


アンキロ?

袋に入ってるじゃん・・・。

アンキロの子供のことかな?


「牧場行くの?」

「うん」


ウウダギは動物が好きなのかもしれない。

アンキロのことがとても好きだったからね。


ウウダギと二匹で牧場へと向かう。

遠くからシシブブとイイオオの姿が見て取れる。


シシブブは固定だからいいけど、イイオオって意外に何でもやってるよね。


近づき、牧場の様子が少し見て取れた。

其の時点で既にわかったことが有る。


ケルケオの子供。

孵っちゃってる。


首を上げても僕のヒザ下くらいまでしか無い小さな個体が、

シシブブの周りを飛べない鳥の様な動きで、チョコチョコと取り囲んだりしているんだ。


ケルケオってのは、随分成長が早いのかな?

今日孵ったわけでもないのか?


元の世界の動画でみたことが有るけど、

ダチョウの子供だって、一日くらいは座ってたはずだけどなぁ。


まぁいいか。

ってか、結構な数孵ったね。


ひぃ、ふぅ、み・・・全部で8匹か。


残りはまだかな?

確か全部で16個あったよね?

半分が孵ったわけだ。


多いよね?

それよりも、この数は、どうしよう。

大人のケルケオ入れて全部で現状10匹いるんだ。


シシブブが餌やりに悪戦苦闘するだろう。

まぁ、シシブブが最初から懸念してたとおりだけどね。


僕とウウダギが柵の所まで着くと、

シシブブとイイオオがげっそりした面持ちでこちらを見る。


大体分かる。

そりゃ労力半端ないよね。


「あー・・・。なんて言えばいい?」

「なんであたしに聞くのよ・・・。分かってたくせに」

「ポンピカ。こうなること知ってたのか?」

「ポンピカ。ケルケオの子供イッパイ」


三匹とも好き放題言い放つ。

そりゃ分かるけどさぁ・・・。


「シシブブ。手が足りないんでしょ?」

「当然でしょ!?見てわかんない?」


ちょっ・・・シシブブがキレッキレなんだけど・・・まるで、ねーちゃんみたいだ。

苦手だなぁ。


悪態を付きながらもシシブブは、

足元をウロウロするケルケオの子供に小さい虫をドンドン与えている。


イイオオはどうやら役に立たないみたいだ。

というか、多分あの動きは、

小さいケルケオを踏んづけてしまいそうで、

動くに動けないんだろう。


完全に不動状態だ。

ケルケオの子供はもしかしたら状態異常の魔法でも使うのかな?なんてねw


「なにニヤニヤしてるのよ!突っ立ってないで手伝いなさい!」


叱られた。

仕方ない。

手伝います。


シシブブの剣幕に押されて、ウウダギも大急ぎで小さいケルケオへの餌やりをはじめた。

見様見真似だけどね。


しかし、イイオオもそうだけど、シシブブはなんで一匹ずつあんなに丁寧に餌を上げてるんだ?

効率悪いよね?


「ねぇ?シシブブ」

「なによっ!」


ブチギレじゃんか!


「なんで一匹ずつそんなにチマチマあげてるの?」

「・・・」


無言。

もしかして考えてなかった?

というかテンパってたんじゃ・・・。


「あ、あー。えーっと。 箱を用意して、箱に餌詰めとけば、勝手に食べるんじゃない?」

「・・・。 そーゆーことは、最初に言ってっ!」


すごく睨まれた。


そっかー。気づいてなかったか。

まぁ、もしかしたら初めてだったのかな?


「シシブブ。 孵ったばかりのケルケオだよね?何時孵った?」

「今日の朝には彼処の小屋で騒いでたわよ」


声のトーンがぶっきらぼうだ。

イイオオに「箱を用意しろ!」と命令口調だし、

完全に女帝だなぁ。


イイオオに至っては、すごく怖い動物に吠えられたがごとく、

総毛立った状態で、ピューっとベベビドの元へ飛んでいく。


「こういう二足歩行の動物は孵ったばかりだと足の付け根に問題が起きやすいらしい。だからニ、三日位は両足をある程度以上は開かないように縛っておくといいって聞いたこと有るよ」

「・・・そうなの? じゃぁ、それもやるわ・・・。ポンピカお願いね」


さらっとお願い。もとい、命令された。

すごいなぁ。

シシブブには、かなわないよ〜。


・・・早くこの場から離れたい。


「ウウダギ。手持ちの紐有る?」

「持ってる」


「じゃぁ、それで縛ろう。一匹試しにやって見るから見ててね」

「うん」


そう言って、手近な一匹をつかもうと手を伸ばすと、サッっとすり抜けていった。

避けられた。


素早いなぁ。


「ポンピカ」

「ん?」


「逃げた」

「そうだねぇ」


「あんた達なにタラタラやってるのよ!さっさと縛りなさい!」


怒られた。

ウウダギまでビックリしちゃってるじゃん!

もう少し言い方きをつけてよねっ!


・・・とはいえ、流石に遊びすぎたかな?


「ウウダギ。ちゃんとやろうか」

「うん。シシブブ怖い」


ウウダギがそんな事言うもんだから、

シシブブからの睨みが僕に突き刺さる。

まさに「何子供に言わせてるのよっ!」って言ってる目です。


言わせたのシシブブだからね?

僕じゃないからね。


ケルケオの子供は思いの外素早い。

ただ、まだ走り慣れていないと言うか体力も生まれたばかりで、

無いにも等しい。

そのため一度逃げることに成功しても連続とは行かないようだ。


一度目はフェイントをかけて二度目にサッとすくい上げるようにして、

懐へと寄せる。


そして、ウウダギの持っている紐である程度足を離し、

その状態で両足に輪を架けていく。


8匹全部をやるのに相当時間かかるかと思ったけど、

なぜかシシブブから離れるような個体がなかったのが幸いしたのか、

スムーズに結び終えた。

結び終える頃合いを見計らった様にイイオオが低い底の箱を持ってきた。


それに餌を入れて、シシブブの足元へ放置。

エサ箱の完成です。


もちろんエサ箱から餌の虫が飛び出さないように、

ある程度纏めて潰して食べやすくもしておいた。


さて、シシブブの手も空いてきたし、

シシブブの興奮も収まってきたみたい。

はなしはこれからって事かなぁ?


「シシブブ?随分切羽詰まってたね?」

「?当たり前でしょ?ケルケオの子供なんて初めてなんだし・・・育てるのも随分難しいって聞いてるのよ」


「難しいの?」

「そうよ。小さいうちは、気温に気をつけたり、湿気にも気を配らないとダメらしいわ」


「それも親の教え?」

「そうよ?この集落ではケルケオを育てるのって随分やってなかったらしいのよ。だからあたしの親も育てたことはないわ・・・だから不安なのよねぇ」


なるほど、そんなに頻繁に飼育できてれば苦労はないってことか。


「普通はね?多くても3匹程度で飼育し始めるものらしいわ」

「今8匹居るけど?」


「だから、焦ったんじゃない・・・もし、あの数の卵全部孵ってたら卒倒してたわよ」


なるほど・・・。

実際倍以上だからね。


「それにしてもポンピカ。 よく足が悪く成るって話を知っていたわね?」

「ああ、それも例の知識ってやつだよ」


「ふーん。まぁ知ってるスキクが他に居るのは安心できるわね」

「そうだね」


シシブブは、アンキロの卵の様子を見ている。

例によってケルケオの成体が温めているわけだけどね。


シシブブが作業してる間もせわしなくつかず離れずなかんじで、

ワキワキとしているケルケオの子供達。


これって、インプリンティングだっけ?

鳥とかって孵って始めてみた相手を親と思うみたいなヤツ。


絶対その子供たちはシシブブを親と思ってるよ。

・・・本当の親を目の前にしてね。


「そう言えば、他の卵は?」

「あー・・・。言いにくいんだけど、残りの卵は孵らないわ」


「なんか有ったの?」

「中身がなかったのよ」


中身がない?

どんな意味だろう?


中がスカスカって事かな?


「殻だけだったの?」

「そーじゃないわよ。なんて言えば良いのかしら?卵だけど孵らない物なのよ」


・・・あー。

無精卵の事か。


「なるほど、無精卵ってやつだ」

「ムセイラン?」


「そう。鳥とかこの場合だとケルケオもそうだけど、オスの種がメスの体に入ってない場合でもメスは卵を産むんだ。それが無精卵ってやつ」

「ふーん。それでかな?彼処の右の少し小柄なケルケオの親居るでしょ?」


「うん」

「あの子まだ、オスと交尾してないのよ。不思議だなーって思ってたのよね」


・・・未経験でしたか・・・。

小柄のってのは、群れの順位が一番だったっぽい個体だ。

チャンスがなかったのかな?


それとも何か有ったのか?


まぁ、今と成っては仕方ないけどね。

ケルケオの生態を考えると、

小さな群れ、つまり家族を作って生活するタイプに見えた。

そうすると、ハーレムの天辺であるボスの子供で全部が埋まるはずだけど、

何かのきっかけで、チャンスが訪れなかったのかもしれない。

だけど、まぁ、そんなことは関係なく時期が来れば卵を産む習性なのかもしれない・・・。


なるほど、わかった。

鳥とかわんないのかぁ・・・。


しばらく卵取り放題ってことかな?


「ねぇ。そうすると一回の交尾で何回まで卵に命が宿るかわかる?」

「・・・。わからないわ、いままでこうやって、飼育することは有っても交尾させたりなんてしてこなかったんだしね・・・。というか、ポンピカは繁殖させるって言ってたよね?できるの?」


「出来なくないと思うよ?それに無精卵が作られるっていうのなら・・・無精卵は食べ物になるよ」

「食べ物?卵を?食べるの?どうやって?」


「すごく疑問が多そうだけど、その孵らない卵を回収しよう。卵ってわりと保存効く物だから火を通せば多分まだ食べられるよ」

「・・・卵をねぇ・・・」


「美味しいんだよ?」

「そうなの?」


「ウウダギも卵食べたい?」

「うん。ポンピカ食べるなら食べる」


「ウウダギもこう言ってるし、食べよう」

「いいけど・・・イイオオ。どうしようか?」

「なんでこのタイミングで俺に振るんだ?好きにすればいいだろ」


「そーだけどー・・・」

「卵はとても栄養が豊富なんだよ。ジンを患ったスキクとかにもいいし、何より天然の薬とも言えるかな?それくらい素晴らしい食べ物だよ」


「シシブブ。コリャお前が食べなきゃダメだな・・・尻尾、早く治るといいな」

「イイオオ・・・。んもぅ・・・子供が見てる所でぇ」


・・・なにこれ?

なんで突然ピンクな世界?


ウウダギ居るんだから少しは自重してよね。


そしてウウダギさん?

なんか興味津々だけど、まだ早いからね。

もし、良いパートナー連れてきても、僕は許さないからね!

可愛いウウダギは渡しません!


フンフンッ!


「・・・ポンピカ?なに興奮してるの?変よ?」

「ああ、確かにな、ポンピカ。卵を採っていこう」


何が変で、何が確かなのか教えて欲しい。

取り敢えず息を荒げたのは謝る必要あるか?


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