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ベベビドの腕の数とスキクって・・・


なんか用なのか知らないけど、一度ベベビドの腕の本数を確認したい。

だって、作る速度可笑しいもん。


「なに?ベベビド」

「む〜。この間ポンピカに教えられた物だ。もう一度聞きたいんだが」


「どの話?」

「ほれ・・・。勝手に動くとかそういうやつだ」


「自動の?・・・水車のこと?」

「そうそう!それだ!ハネとか言うのは作れた気がするんだがな、何分でかくできちまってな・・・これで良いのか知りたかったのと、あとはココだ・・・なんていったか・・・カムだったか?それも聞きたい」


なるほど・・・っていうか、水車も作り始めちゃったの?

やっぱり腕の本数が他のスキクより多いんじゃ・・・。

二本しか無いのはわかるんだけどね。


「ねぇ?」

「ん?なんだ?」


「ベベビドってどうやって物作ってるの?」

「???変な事を聞くな?・・・どうやっても何も普通に作ってるぞ?ポンピカに教えられたとおりにな」


う〜ん。

それは分かる。

分かるけどね・・・どっちにしても早すぎるんだよ。


「そう言えばスプーンとか作るのにどのくらい時間かかるんだい?」

「はぁ?スプーンか?・・・すぐに出来るぞ?」


「実演して見せてよ。ちょうど僕スプーンを新調したかったんだ」

「構わんが・・・。カムの話しはどうする?」


「じゃぁ、カムの話しをしながらでいいじゃん」

「ふむ・・・。それもそうだな。わかった材料はっと・・・この木でいいな」


歩いている最中にみつけた、木を無造作に拾い上げたように見えるけど、

ベベビドの手の中に有るその木は完全に乾いているのが分かる。

地面に落ちていれば、すぐに乾くものでもないし、どんな仕組みだ?


「じゃぁ、スプーンを作るとするか。 で?カムの事だが、水車が回ってジクってやつが回るんだったな?そのジクってやつが回ると卵型の板が回転して出っ張りが引っかかって、物を押したり出来るんだったな?」

「うん。そのとおり、覚えてるじゃん」


「そうか・・・・。うむ、出来たぞ?これでいいか?」

「・・・早くない?」


「?何を言っている?普通だぞ?」

「いやいやいや。早いって・・・自分で早いって思わない?」


「・・・そんな事いわれてもなぁ・・・木工は俺しかやらんだろ」

「そーなんだけどね・・・ウウダギはどう思う?」


「ん?普通」

「ウウダギも確か、紐とか作らせるとすごく早いよね?」


「うん。普通」


なるほど、スキクは普通じゃないわ・・・。

器用とかそういうところじゃない。

作業の工程がすぐに染み付いて、効率化していっちゃうんじゃないかな?

めちゃめちゃ何でも早く作れる。


慣れればそれこそ早業の如くだ。


こりゃ、人間世界が有ったとしたら表に出せないぞ?

もし金属加工で、そんな事やられれば、

生産効率の基準がロボット生産並に成っちゃう。


ヤバくない?

ヤバイよね?


もし僕が中身だけじゃなく外見も人間で、ここに侵入してきたら・・・。

宝の宝庫だろ?


専従して何かをやらせれば、好きだから延々とやり続ける上に、

大量に作り出すわけだ。


コリャまいった。

この大陸から外に出せないだろこれ・・・。


まぁ、今はあまり関係無いし、

何より集落を大きくする上で種族的な特徴が見て取れたんだ・・・。

良しとするしか無い。


「そうか・・・。まぁ、普通ならいいか」

「そうだぞ?ポンピカだって、何をやらせても早いだろ?何よりその知恵が羨ましい」

「ポンピカ。早い。好き」


ウウダギに”好き”って言われると、

悪い気はしない・・・どころか、うれしいからあまり悪いことは考えないようにしよっと。


「そ、そうだね。うん。木工は慣れてないから少しビックリしただけだよ!は、はははw」

「ふん。まぁいい。それより手が空いたなら、水車とカムの試作を見てくれないか?アレだけは俺一匹じゃ分からねーことばかりなんだ」


「そうなんだね。わかったよ。で?水車は何処?」

「ギュギュパニとイイオオとパパムイに運ばせてな、川の上流まで持っていった。付いてこい」


付いてこいってさぁ・・・。


しばらく、ベベビドの後を追う。

ベベビドの後ろ姿を見ながらウウダギと二匹でついていくのはいいんだ。

良いんだけど、前を歩いてるベベビドの脇に挟まってるカムらしき板・・・分厚いし、デカイ。

しかも重たそうに見える。


「ベベビド?その板重くない?」

「ん?そうだな。まぁ、重い方だな」


「そう?そういう物?」

「ん?何を言っている。これは木だぞ?石じゃないんだ」


ベベビドの勘違いの方向性と僕の質問の意図が全く噛み合いません。


幾ら石じゃないと言ってもあの大きさの板は、

小脇にかかえてホイホイ持ってける重さじゃないだろ?


ベベビドは少し木に対する認識を改めてほしいかもしれない・・・。


いや、ほっとこう。

其のほうが良い気がする。


ベベビドの後に付いて歩くと、

少し集落から離れて、

少し高い位置に有る小さな滝?斜面に有る川へ着いた。


後を付いて歩いていれば歩いている最中に必ず目にするだろう。

驚きの光景。


僕は目の前の光景がちょっと、信じられない感じだ。


「ベベビド?これ何時作ったの?」

「ん?何を言ってる?この間だ」


何も聞かされてません。


僕が呆然している中、

ウウダギが僕の脇腹をツンツンする。


振り向くと、ウウダギが何か言いたそう。


「どうしたの?」

「あれ、この間、作った。僕見てた」


えっ?ウウダギってずっと僕の側にいなかった?

何時見たの?


「ポンピカ。そんなことは良いからさっさと中にはいれ」

「あ、うぅん・・・」


ベベビドに案内されて中に入る・・・ってかさ?

この小屋何時作ったの?結構大きいよ?


小屋じゃないよ?

中をぱっと見たけど、カムで動く臼とかもうできちゃってるんだけどー。


ベベビド一匹でここまで作ったの?

他三匹位使ったにしても早くない?

可笑しくない?


「ポンピカ。これだ。ほら、川の上を木の家で覆ったんだ。下に川が流れているだろ?」

「可笑しくない?こんなの作る暇ないだろ?」


「うぅん?なにを言ってる。作ったんだから仕方ないだろ?」

「いや、でもさぁ」


「そもそも、こんなヘンテコな家を作る必要が有るんだって、言い始めたのはポンピカだろ?」

「・・・」


反論できないだろ!

それ言ったら、僕が言ったもの全部作る予定とか言ってるの?


・・・あれ?

ベベビド・・・もしかして、作るつもりなのか?

えっ?


「ちょ・・・ベベビド?僕が言ったもの全部作ってるとか言ってないよね?」

「?何を言ってる?作るに決まってるだろ?」


あー。

そうか、ちょっと冗談交じりに言ってしまった元世界に有ったものとかを、

もう再現する気マンマンだったんだね。


ってか冗談が通じないのかぁ・・・スキクだもんなぁ。

しかたないかなぁ・・・。


これ一匹で作るの命削る作業じゃない?

大丈夫?

なにか美味しいものでも作ってあげようか?

元気出るものでもさぁ。


「ベベビド・・・疲れてない?」

「はぁ?なんで疲れるんだ?俺はちゃんと食事は摂ってるし、寝ても居るぞ」


うん。知ってる。

夜は皆ちゃんと寝てるしね。


ふぅー。

どうやら僕はスキクの事を誤認・・・侮っていたんだなぁ。


まぁいいや、出来ちゃってるもんは仕方ない。

ちゃんと使おう。


「でも、ここって川とか氾濫しないの?ミニョルンとかで」

「どうだろうな?ミニョルンの時この辺がどうかは知らんしな」


「どうしてこんな所に?」

「ちょうどよかったからだな・・・。川幅がちょうどいいだろ?」


確かに・・・ってか家の中に橋が架かってるような構造で、

橋の下には、滝から流れる勢いの良い川が・・・。

しかもそこそこ深そう。


これクウォンとか出たりするんじゃないか?


「動物・・・クウォンとか大丈夫?」

「ん?クウォンはこんな所にはいないぞ?集落に近いからな」


そっか、一応下調べみたいなのはしたんだね。


「でも、よく橋を架けれたね」

「そうだな。俺はまだ水が怖いからなぁ。ギュギュパニとイイオオとパパムイが協力してくれた」


パパムイは水を克服したのは知ってる。

ギュギュパニもなんだかんだいって大丈夫そうだった。

イイオオ・・・漁する時、嫌でも水に入る・・・なるほど。


力持ち三匹が適任だったんだ。

いいチョイスしてたね。


「そんなことより、カムの事だ。ここに取り付けてみたが、どうだ?」

「どうだって言われてもね?水車の羽の向きとかちゃんとしてるの?」


「ふむ、じゃぁ、ココを見てくれ。一応試しに回したりはしてるんだ」


ベベビドが指し示す場所って言っても中央の橋の川上側に水車が一個設けられていて、

既に動いている。

しかもブレもなく一定のリズムで、回っているから不思議だ。

普通は色々試行錯誤するもんだ。


なんで一発目から作れる?

僕はこんな動きをするといいよとか、そんな位しか言ってはいはずだ。


「でもなんで、こんなに正確な物を作れた?それも一発目で」

「あー。其のことだがな?水車自体は俺もしっかり考えたんだ。だけど水の動きは不規則だろ?とてもじゃないが俺では考えが至らないんだ。だからウウダギに相談したら水車のジクってやつがブレるのを抑えるようにって色々話をしてくれたんだ。しかも水の動きを計算したみたいでな・・・ありゃポンピカが教えたんだろ?」


そんな複雑な事教えれませんよ?

それこそ、大学とかで学ぶ流体力学とかそこら辺の話だよね?

僕は精々、高校生どまりだ・・・。

あれ?ウウダギの方が既に頭よくないか?


ウウダギをチロリと見る。

ウウダギが僕の方を見返してくる。

可愛い顔をしている。

どうやら褒めてほしいみたいだ・・・。


うん。褒めるしか無いだろ?


「ウウダギよく計算できたね?凄いよ!僕もここまで計算出来ないからね。さすが!」

「大丈夫。僕ちゃんとできる」


フンフンと鼻息が荒い。

小さい鼻から鼻息が漏れるのがちょっと微笑ましいです。


「まぁ、いいや。で?羽の様子見たけど問題なさそうだね」

「そうか?頑丈に作っちまったからなぁ。少し重いんだこのハネも水車もな」


重いのによく動いてるね?

水のちからが強いのか?


「重い物を動かすのは、あれだ、なんだったか・・・テイコウとか言うのがかかるんだろ?動きにくいやつだ。それを解消するための工夫もポンピカが言ってただろ?なんだったかなぁ・・・べあべあ・・・ベアリングとか言ってたな。木で作ると滑りがよくないんだ。だからギュギュパニに滑りがいい石でジクの回る所の部品を作ってもらったんだ。ここは流石に俺一匹じゃ無理だったしな」


随分饒舌なベベビドにビックリした。

普段あまり喋らない職人気質なところが有るのに、

出来たものを自慢するときは饒舌なんだね。


まぁ、それにしてもベアリングの部分良く出来てる。

これって、ベベビドだけじゃなく、ギュギュパニも加工の技術が桁外れに成ってるんじゃないか?


あっれー?

なおさら外に出せないだろ・・・。

ザーザースってこんなにスペック高いの?


この分だと・・・他のスキク達も目を離してる間にドンドン進んでいっちゃうんじゃ・・・。


まぁ、いいことだけどさ?


そうなると、根本的なところで疑問が浮かぶんだ。

なぜ古き者やプンタはスキクをコントロールして、文明を発展させなかった?


もしかして、コントロール出来なかった?

いや、そんなこともない。


きっと、コントロールは出来るはずだ、

でもソレをしなかった。


何故だ?


なにか見落としてるのかな?

何故だろう?


・・・幾つか予想は出来る。


話しによれば、古き者ってのは異星人だと思う。

そして、ザーザース全体が共通で認識している事でも有るけど、

古き者はザーザースを労働力として創ったそうだ。


そう、創ったんだ。

つまり創造主って言われれば、神様だろう。

間違っちゃいない。


と、成れば、異星人たる創造主の古き者は、

労働に耐えうる性能を求めただろう。


幾ら技術体系や、思想や何やらが元の世界の人類と違うものだとしても、

宇宙の物理法則まで曲げることは出来ないだろう。

そうなると物理学や化学なんかの科学知識が有って当然だし、

其の中には生物工学も有るだろう。

つまり、遺伝子工学か何かを利用して、僕等ザーザースを創造したわけだ。


そう考えると、偶然でこのスペックを手に入れたわけではない。

ベベビドみたいなスキクが欲しい古き者がいたんだ。

そして、ギュギュパニや他の特化した能力が必要になったんじゃないかな?


そう考えると、ザーザースはすべて古き者の欲しい能力を持ち得ている可能性が有る。

ダブったりするかもしれない。

でも数は多いほうがいい。


それに古き者は労力を必要としていた。

それはもう大量のパワーが必要だったんじゃないかな?


何故、ソレが言えるか・・・。

ザーザースは一年で成体に成る。


一年でだ。

しかも多産なのに二年目から産み始める。

ありえないだろ。


知的生命体がそんなに繁殖力が強くて、

しかも育ちが早い。

ウウダギの様に脳の活性が強いんだ。

だけど寿命が短く感じる。


だからバランスが取れているのか?

違うだろう。


実際はそれ程人間と変わらない寿命だと僕は踏んでいるんだ。

今の状況では子供が産まれる際、孵る可能性も低ければ、

成体に成る前に死んでしまう数が多いだけ。


ソレさえ解決すれば、

人間以上のスペックの労力を極めて短時間で補給出来る種族って言える。


繁殖力も繁殖回数も多い知的生命体が、

この大陸だけで収まっているのも、

死んでいく個体と生き延びる個体のバランスが取れているからにすぎない。


もし、其の点が崩れたら・・・。

あっという間にこの星はザーザースだらけになるだろう。


環境への適応能力はまだ確認できていないけど、

恐らくその知性が育っていけば、自ずと技術力でカバーしてしまう。


そして、其のサイクルも伸びも早い。

つまりソレを育てない古き者やプンタは・・・。


ワザと、としか言えないだろう。

何処かで見落としてるんだ。

僕はまだすべてを知っているわけじゃない。


文明を発展させて知識と技術が育っていけば、

きっと古き者やプンタの意にそぐわなく成る。

そう言う事なのかもしれない。


でも既にプンタは初期の半分にまで数を減らしている。

手が届かない地域だって有るんだ。

今まさにココ、この集落がデットスポットなんだ。


そのデットスポットで何かが起きたらどうするんだ?


・・・何か・・・起きちゃってるんじゃない?


う〜ん。


「どうした?ポンピカ。 何を難しい顔してるんだ?」

「ん?ちょっと考え事したんだ」


「何を考えていた?」

「いやぁ・・・。もしかしたら僕は結構プンタや古き者に反旗を翻したんじゃないかってね」


「?何の話だ?穏やかじゃないな」

「そ~なんだけどねー」


「ふむ・・・。まぁいい。ソレより水車のハネだ。 アレでよかったのか?」

「ああ、とてもよく出来てる。軸の工夫も完璧だと思う。ただし、これからドンドンこの集落は技術が進むんだ。そうなるとこの水車も老朽化する前に新しい形や物に取って代わると思う」


「ふむ・・・。まぁこれができているのなら俺は難しく考える必要はないと思うがなぁ?」

「そうだね。難しく考えすぎるのが僕のダメなところかもしれないね」


「ポンピカ。難しくない。わかりやすい」

「ウウダギがそう言ってくれるならいいかなw」

「お前は本当にウウダギには甘いなぁ・・・」


さて、もどるか・・・。

どうやらカムを取り付ける作業は終わって、

既にバッコンバッコンと音を立てて、

カムが動き、

カムからの力で持ち上げられた杵が石で出来た窪みの臼の中を突いている。


もうこれでいい感じがする。

きっと米とかも乾燥させて粉が作れるだろう。

小麦が見つかれば、小麦粉が作れて、パンが作れる。


更に食料の改善がすすむ。


帰り際にベベビドが残っていた。

まだやることが有るらしい。

程々にしてほしいものだけど、多分無理だ。

きっとドンドンとアイディアが膨らみ、

魔改造がすすんで、終いには僕でもわかんないものが作られるだろう。


もう、ほっとこう。


挨拶して帰り際にベベビドがボソっと口にしてた。

「それにしてもコレ、何に使うんだ?」

・・・使い道知らないで作っていて、これだから始末に負えない。


・・・今度ギアについて教えてあげよう。

面白いことに成るかもしれない。


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