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術と符


なんか方法あるかな?

精霊さんは言わば霊体とされる状態で勘が鋭いとか、

霊感とか言ってる能力が無いと通常見れないわけだし、

僕が見れるのも訓練と言うか、素質的に気が大きかったり、

色々条件が揃っているからと言える。


つまり霊感的な物が有ればいいんだ。


符術というか霊符や護符に見鬼の効果が有れば何とかなりそうだ。

幸い、見鬼の札の作り方は分かる。


ただし描くための墨とか色々必要。

どうするかなぁ。


「ちょっと、精霊さん。付き合ってくれないか?」

”なんじゃ?何をする気じゃ?ワシへの教えはほったらかしか?”


・・・ウウダギファーストなんだよ。

僕は。


「ウウダギも精霊さんを見たいんだってさ」

”見ればいいじゃろう?”


コイツ話しわかってないや。


「精霊さん。じゃぁ、新しい講義だよ。」

”そうか!フフフ。 それならそうと先に言えばよかろう!”


気分がコロコロ変わるおじいちゃんだなぁ。

まぁいいや。


墨を作るのは無理なので、

炭をペン代わりにちょっとやってみようと思った。

なので、炭が保管されている屋根付きの小屋まで行く。


道中、ウウダギと二匹で傍からは見られているだろう。

だけど僕とウウダギの間に一匹、

踊り出しそうなほどソワソワしてる年寄りがいるんだ。


落ち着かないよね。


小屋で細い炭を取り、

近場にある乾燥している大きな葉を一枚手に取る。


「ウウダギ。よーく見てるんだよ?」

「?うん」


見鬼には、幾つかの決まりごとがあるとされている。

一つは霊感つまり勘所がなければそもそも認識が出来ないわけだ。

それがないといけない。

二つめに感じたとしてもそれを目で捉えることが出来なければならないわけだ。


基本普通の人間というかスキクもそれは出来ないわけだけど、

稀にそれが見えるまでの条件が整っている者が居る。


逆に捉えれば、其の条件を整えれば誰でも見れるということに成る。


また、気は霊体つまりヴァンを構成する物であるため気を感じることができれば、

少なからず霊感成るものが芽生えるわけだ。

ウウダギは既に霊感は持っていると言える。

ならば、視力への補助を促す事。

今回は符による補助を試みてみようと思ったわけである。


符とは、ソレ単体では効果が無い。

どんな符でもだ。


例えば、護符と呼ばれる物は、

主に守りとされる事に使われるのだけど、

守りというのがどんなものかに関わらず、

ソレを身につける。あるいは、使うという動作が必要に成る。


霊符と呼ばれる物も同様なわけだ。


と、成れば・・・その符を使うあるいは身につけるという行為はどんなものか?

と、問われれば、起源が同列な事柄と同じ扱いが適切なわけだ。


まぁ言わんとする所は、道教や仙道で使われる符が気と同列の起源な為、

自然と、大陸とかで使われる物を利用することに成る。


符とは、書物のことを指すわけで、

例えば、前にも精霊さんに話した木簡などへ文字をえがく事で形となす。


そう、書くんじゃないんだ。

描くわけだ。


僕がじいちゃんから教えてもらった符の文字。

ぶっちゃけ文字に見えなかった。


そう。文字に見えないんだ。

でも文字なんだ。


なぜか?


それは印象や象徴を目で捉えて脳に刷りこみ。

要点を明確にする事で気を扱える者であればソレを補助として扱えることに成る。


要約すると、ある程度認識出来る文字が並んでおり、

何を言わんとしているのか分かる程度でありさえすればいい。


ソレよりも気を動かす上で、

その文字をたどる事でどうやって気をコントロールするのかという点を、

明確にしなければいけないんだ。


精霊さんが前も言っていた事。

実際僕も思っていること。


文字読めなきゃ使えないんじゃね?


って言う点のことだ。

半分正解で半分不正解という厨二な返答しか出来ない。


だけど、文字が読めなくとも文字個々の印象がどんなだか判ればある程度OKなのだ。

まぁ、ウウダギに限っては、僕が知りうる限りの文字を既にマスターしているから、

実際今こうやってデタラメに見える文字の個々を読み取れているのだけど・・・。


「ウウダギ。この文字は読むわけじゃないんだ。意識しないでいい。だけどこの葉っぱに意識を同調させるんだ。気の練習でも似たような事やったろ?」

「うん。キやった。僕大きく成る前にはあまりやらない。」


「大丈夫。この符には、僕の気が通してある。だから少しずつでいいから慣れるようにしてみてご覧」

「うん。わかった」


明確なものはない。

気なんて気のせいと言われればそうであると言える。


まぁ、ぶっちゃけ補助の符なんだからそんなに気張らなくていいよ。

他にも方法はあるんだからね。


”おい。まだか?何をしておるのか聞いてもよいのか?”


またぁ・・・。

おじいちゃん辛抱くらいしようよ。

永遠の時を持ってるんだよね?

前言ってたよね?


もう少し気長に構えてくれないかなぁ・・・。


「精霊さん。今ねウウダギが精霊さんを見たいって言ったんだ。だからその為に符を作ったの」

”フ?なんだそれは?”


「簡単に言うと、術を使うための補助と言えるかな?」

”?補助?”


「うん。ウウダギはまだ、精霊さんを見ることが出来ないでしょ?」

”??いや、見えておるのではないのか?”


・・・え?

なんでそう思った?


「ちょ・・・そうなの?」

”うむ。たまに視線を感じることがあるが、大概はこのチビスケだからな”


・・・ウウダギ見えてるのかな?

今物凄く気のコントロールに集中してるから声を掛けれない。


「ま、まぁ、様子観よう」

”ふむ・・・。フか・・・はじめてじゃなぁ”


また精霊さんの興味が変な方向にスイッチオンしちゃった気がするけど、

静かにしてるうちは楽でいい。


しばらくの時間ウウダギが気を練っては、

符に流してみたり確認したりとアレヤコレヤしている。

其の横で、少し暇になっちゃった精霊さんがちょっかいをかけようとするので

僕がソレを止めるという不毛な時間がすぎた。


ウウダギはある程度やって、確認が済んだのだろう。

僕の方をみて、葉っぱを額へと乗せる。

そして、器用に落とさない様に座ったかと思うと、

瞑想を始めたんだ。


すると、あっという間に目を開き其の目は精霊さんを見据えているのがわかった。


”ほう・・・。見えたのか・・・”


精霊さんも確認したようだけど、

やっぱりウウダギ見えてなかったんじゃないか?


「ウウダギ。 精霊さん見えた?」

「うん。羽ついてる。変」

”変とはなんじゃこの小僧”


「変」

”じゃから変では無いと言うておろう!このバカ弟子がっ!”

「精霊さん。ウウダギにちょっかい出さないでね。それから弟子じゃないからね」


”うぐっ!!”


「変・・・。でも、面白い」

「そうだね〜!ウウダギ! 精霊さんって変でウザくておもしろいね〜!」

”ぐぐっ! いらぬ言葉が増えておるようじゃが?”


「セイレイサン。 僕ウウダギ」

”ふむ・・・。ポンピカよりまともなスキクじゃな。 挨拶が出来よる”

「えっ?僕挨拶しなかったっけ?」


”いや、一度も・・・じゃが、それはどうでも良い。ワシは今面白いものを見た。このフじゃ。どうなっておる?”

「どうなっておる。って言われてもねぇ?」


”この文字はなんじゃ?なんと書いてある?”

「符に関する話しがしたい?それとも術の話し?」


”ふむ・・・。 今は目の前のおもしろき現象からじゃ”

「ポンピカ。フ楽しい」

「そうだねぇ〜!ウウダギが楽しんのならなんでもしてあげちゃうよ〜!」


”ワシは、ほったらかしか?”

「符の話しって結構面倒なんだよね。そもそもこの符を精霊さんが使えないんだ」


”ふむ・・・。文字に力をもたせる行為なのか?”


・・・きーてねーのかよ・・・。


「いや、そうなんだけど、ザーザースって文字の文化ないでしょ?」

”ん?いや、ザーザースには此のような文字を扱う者はおらぬが、古き者は扱っておった”


「・・・精霊さんはそれを学んでる?」

”それは当然じゃろ?プンタも学んでおるはずじゃ”


なるほど・・・そりゃそうか。


「じゃぁ、古き者の文字を教えてよ」

”ふむ・・・。それはちと厳しいかもしれぬ”


「なぜ?」

”ワシには、地面へ描くことが出来ぬからだ”


・・・そりゃそうか・・・霊体だもんね。


「言葉で表せない?」

”無理じゃな”


前途多難。


「まぁ、いいや。なんにしてもいきなり符の話しから入ってもわけがわからないだろうしさ」

”そういうものか?”


「そーだよ。だって符ってのは術を使うための補助だったり手引書だったりするんだ。」

”ふむ・・・。 では、フを扱うためには術を知らねばならぬわけだな?”


「そういう事。だけどザーザースの術を僕はあまり知らない。だから僕の知ってる術を少し教えるよ。其の上で符について話そうか?」

”ほう。 それが良い。”


「じゃぁ、手っ取り早くいくと、今ウウダギが使った『見鬼』という術についてだ」

”ケンキというのか?それはなんだ?”


「『見鬼』ってのは鬼を見るすべ。 つまり術なわけだ」

”またオニか・・・”


「僕の世界じゃ、ヴァンや精霊なんかは全部鬼って表現するんだ。だから鬼でいいんだよ」

”ふむ”


「さて、『見鬼』の術ってのは実際どんなものかについてだ」

”生きてる者はそう簡単に精霊を目に映すことは出来ぬだろう?それを可能とする物だろうとワシは考えたが?”


「その考えは、ある意味で正しいと思う。だけど正確じゃない」

”正確ではないか・・・。続けてくれ”


「『見鬼』の文字があるんだ。要約すると見るという字と鬼を指してるんだ。意味は分かるよね?」

”そのままなのだろう?オニを見るという”


「そうなんだ。見るんだよ。 つまり見る事しか出来ない。」

”見る事しか出来ない・・・か・・・目を飛ばすのと同じというわけか?”


「似てるね。でも少し違う。もっと細分化されてるんだ。見る事しか出来ないんだ」

”ふむ・・・。続けてくれ”


「術ってのはさ?何かをやりたい事なんかを達成するための行為の事なわけだけど、呪術と称される物ってのは、呪う行為を呪術というんだ。何がいいたいかと言えば、術ってのは”すべ”なんだよ。」

”ふむ”


「精霊さんならどうやる?見えない相手に自分を見せる方法はどうしたらいいと思う?」

”う・・・う〜む・・・。 ワシは自然に見える素質がある者を見極める事にしたのだ。結果お前が現れたのだ”


「そうか・・・。まぁ、それも一つの術といえる。言う成れば、素質がある者を見つけ出すという行為の行き着く先に望んだ結果があっただけだね。」

”うむ。それ以外で、ワシを認識できる方法が思いつかなかったからな”


「じゃぁ、もう少し思案してみようか?」

”思案?”


「もし、精霊さんが素質の無い目の前のスキク、例えばウウダギに自分の姿を見せたい時どうする?」

”それはぁ・・・。 無理じゃろう?素質がないのだからな”


「でもそれを可能にしたいんだ」

”う・・・うむぅ・・・。 わからぬ”


「此の場合、なぜ素質がある者と無い者で見える見えないが別れるのかをまず考えるんだ」

”む? 素質がなければ見えない者は見えないのではないのか?”


「じゃぁ素質ってなんだろう?見える素質ってどんなものなんだろうね?」

”ワシは、素質を判断する時の基準としておるのは、生命力の大きさじゃ。 さらにその想いを見極めておる”


「その基準は本当に正解かな?」

”正解であろう?現にお前が現れたのだ”


「僕が現れたのは偶然かもしれないよ?」

”・・・続けろ”


「僕が言っているのは、精霊さんが長い年月を一匹で過ごしている中で、何匹が精霊さんの姿を見て取れる者が現れた?その頻度は?」

”・・・生きておるスキクの中では、お前が初めてじゃ”


「もしその基準が正解だったらもっと現れても良かったんじゃない?それに生きて居るっていう条件で言えば僕が唯一なんだよね?」

”そうじゃ”


「じゃぁ、その条件は見る見ないの条件ではなかったかもしれない。現に僕が精霊さんを認識したのは、狭間へと意識を飛ばした時だ。」

”ふむ・・・。 つまり、生命力や想いは見る見ないに関係がない? そういっておるか?”


「それも半分正解だと思う。思うと言ったのは僕も確認が取れないからだ」

”ふむ・・・”


「まぁ、話が逸れそうだから戻すけど、恐らくは、見る見ないについて生命力や想いはあまり関係性が無い。もしくは薄いんだよ」

”ほう、成れば何が関係しておる?”


「さっき精霊さんは、生きてる者では僕一匹っていただろ?ってことは死んだ者の中には何匹か精霊さんを見た者が居るわけだね?」

”うむ。遥か昔の馴染みの中にはワシを認識する事が出来たスキクが何匹もおった”


「なるほど、最近じゃ皆無なんだね?」

”うむ”


「そうなると多分僕が思っている条件の方がより正確な可能性が出てきた」

”可能性? 条件とな?”


「皆、”一度は狭間へ行った事がある”って言う条件だね。」

”・・・ふむ・・・。 その条件だと確かにワシの状況にピタリとあたる・・・”


「まぁ、そう考えると、自ずと見えてくる物があるんじゃないかな?」

”見えてくる物か・・・つまり、一度は狭間へ自力で赴いた者を見つけるという事か?”


「それが、精霊さんの条件だね?でも今は、術に付いて話してるでしょ?」

”ふむ・・・。術か・・・狭間へ向かう・・・見るだけとなれば? なるほど、狭間の世界を見せると言う事か?”


「そうなる。こうなれば、生きていようが死んでいようが狭間の世界を見た経験から認識ができるように成る。つまり、有るという認識からそれに焦点を合わせる事が出来るようにするんだ。」

”では、先程の「見鬼」とやらは、気の操作を用いて狭間を見せるという術なのか?”


「惜しい!とっても惜しい。術としては及第点だよ」

”ふむ・・・。 惜しいか・・・はて?”


「術としてそれを行うなら自らはそうなってもいい。でもここで符の話しになるんだ」

”ふむ・・・。フの話になるのか・・・ウウダギは元々見えなかったのだろう?ワシは見えていると思っておったが”


「見えてなかったんだ。まぁ、結果そのヘンテコな羽飾りを見て変だと思ったわけだしね」

”この羽飾りは変ではないぞ?”


「ああ、そうだったね。まぁ話しがずれるから戻そう。符についてだ」

”フか・・・。フ・・・フ?”


「符っていうのは、簡単に言えば、木片や葉っぱ、作れるなら布や紙なんかを利用する物を言うんだけど、その中身っていうのが特殊でね。経絡を保存することに有るんだよ。」

”また新しい単語だ・・・ケイラク?”


「前にギュギュパニのときにも言ったんじゃなかったっけ?身体に流れる気の図面の事だよ」

”そんな事あったかのう?まぁいい。その図とやらはなんなのだ?なぜ其のような図を気で描く必要が有る?”


「まぁ、まってよ。経絡ってのは、要は身体の機能をそのまま体現していると言っても良いんだ。だから経絡の結節点なんかにあるツボって言われる場所を刺激する事で、身体の機能を活性化したり出来るんだ。これも言わば術に当たるけど、まぁ、其れは置いておいてだ。何をいいたいかと言えば、その経絡を模倣した図面があって、それに気を通せば、それが手本に成るんだよ。」

”手本?・・・なるほど、つまるところ、そのフを利用すると、次からはその術を使えると?”


「覚えたりできればね。出来るように成る。逆に必ず覚えるとも限らないだけど、これには副次的な効果が有るんだ。」

”副次的?”


「例えばウウダギに渡した符だけど、符ってのは本来それに気を流す作業が必要だから慣れた者しか扱えない。だけど、慣れた者が使えば、効果がそこに体現される。効果といったけど、今のウウダギの符はただの『見鬼』じゃないんだ、少し僕なりに工夫しちゃってるからね。精霊さんで言うところの目を飛ばすだけじゃなく、耳も飛ばす様になってるよ。つまり今の話はウウダギも聞いてるはず。だよね?ウウダギ」


するとウウダギが僕を向いて、コクリと頷く。

それをみて、精霊さんがいぶかしげに

ウウダギの額に有る漢字のオンパレードな物を覗き込んだ。


それに対して、ウウダギは葉っぱが大きいので、

本来なら見えないはずの精霊さんを認識して、

少しドン引きした感じで僕の方へと近寄ってきた。


そっと、僕の小脇に隠れる。


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