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ウウダギの教えはキツイとヴァレヴァレの状況少しわかった


ヨロヨロとした後、ギュギュパニが周りを確認して首をかしげている。


「ポンピカ。あたし今なんか変じゃなかったかい?」

「ああ、まぁオルガが表に出てただけだよ。言い聞かせたから安心して」


「・・・あんたはアレだねぇ。何でも出来るんだねぇ。」

「?そうでもないけど・・・。まぁいいんじゃない?オルガも結構おちついてたよ。それより身体の調子が良さそうなら明日から採掘場にでも言ってくれて構わないよ?」


「いいのかい!?」

「楽しそうだねw」


「ああ、楽しいねぇ。久しぶりに石と語れるなんてねぇ。」

「うん。むしろ建材が足りなくなるかもしれないし、色々あるから採掘は続けてほしいんだ。」


「わかったよ。じゃぁ。明日のためにも身体を休めるとしよう。また話に来る。」

「あいよ。 あ、それから気功はちゃんとやってね、オルガが衰弱してたよ。」


「ん? ああ、それか、わかったよ。ちゃんとやっておく。」

「ならよろしく。」


ギュギュパニが自分の場所へ戻っていく。

僕は引き続き、食べ物を探してウロウロする。


ある程度つまめるものが整ったので、

ウウダギの袋に詰め込み、

肩へ担いでウウダギが作業している所へ向かった。


しばらく川を目指し歩いていると遠くで5匹のスキクが蠢いているのが分かる。

その手前にきれいに並べられているレンガを発見した。

レンガはまだ乾いていない。

つまり今、レンガを粘土からこねて形を整えて干しているんだ。


それにしても随分出来上がっている。


更に近づくと、ウウダギが仁王立ちして支持しているのが分かる。

まるで、周りに居るスキクをそれはもう手足の様に動かしているんだ。


正直すごいなぁ。 って思った。


「ウウダギどう?」

「あっ。 ポンピカ」


ウウダギが僕の方をニッコリしながら見る。

ニッコリしているようだ。

まだ表情は読み取れないけど声となんだか雰囲気がそうだからね。


まぁ、ウウダギがニッコリしてるならいい感じに動いてたのかな?


「ポンピカ様! どうにかしてください!」


なんだか一匹が必死に僕の方へ擦り寄ってきて、足にしがみつく。

なんだろう?


「ポンピカ様! あの子おかしいんです!」

「何とかしてください!」

「ポンピカの子供でしょ! なんとかしてよ!」


なんだか、言われ放題だけど?

ウウダギ何かやったのかな?


「・・・ウウダギ?どうした?」

「?僕なにもしてない。このスキク。皆何も出来ない。教えた」


あー。ウウダギの教え方はかなり独特だからねー。


なるほどと、納得する。

けど僕の足にへばりつくイヂジンや縋るように見てくるヒュルル。

「うごけん!」と言わんばかりのオルギュス。

「もうどうにかしてよ!」といいたげなセルセルで辺りが混乱している。


さて・・・そうしたものかなぁ。


「レンガできたの?」

「まだ、出来てない。」


唐突に僕がそんな事言うものだから助けられると思っていた、

4匹のスキクが絶望を表す。


「ウウダギ。随分沢山できてるようだけど?」

「だめ。満足しない。」


ウウダギは完璧主義。

妥協はしません。


なるほど。

そりゃまいるわ。


そう言って、他の4匹に目をやる。

皆、「この世の終わりです。」って言ってる。


「4匹共、ご苦労様だったね。慣れない事させちゃったけど、ここ迄できたんだありがとう。取り敢えず皆で休憩しながら少し何か食べよう」


すると、4匹の顔色が変わる。

なにか食べられるようだと思ったんだきっと。


僕はウウダギをチョイチョイと呼んで、焚き火の準備をした。

随分前、採掘場から出てくる石の中に、

鉄の結晶というか鉄分が多い石があるのを見つけたんだ。


そして、その石に乾いた石をカツンと当てると、火花が散るのを発見。

つまり火打ち石だ。


それを使って、ウウダギが火を起こす。

棒を使っての摩擦熱とかはもう古い!

今の時代、着火だね!


カチンカチン!


高い音を立てて、火花が散る。

そして、細くて柔らかく乾燥した繊維の束に火がついた。


すると、周りから「おぉー」と歓声が上がる。


ヴァレヴァレの連中は火を怖がる。

まぁ、この集落も少し前は火を毛嫌いしていたわけで、

違いはないとは言え、最近ではパパムイやンダンダ、

ギギリカなんかがよく火を起こしているからそれ程忌避はしていないはずだ。


でも、一度火事を起こせばきっと怖さが分かるはず。

一応声は掛けているから無理はしないと思うけどね。

スキクはウソをつかない上に素直だからなぁ。

言われたことを素直に守るんだ。

そこに思考が挟まったりしない。


なんと言うか善良だよね。

火事騒ぎが起きるのはずっと後の話かな。


「ウウダギ火がついたね」

「うん。 バッタ焼く!」


ウウダギは袋の中でもぞもぞしている物体が、

バッタだとわかったんだろう。

目の色変えて欲しがる。


「じゃぁ皆で少し休憩で食べようね」

「うん!」


ウウダギは元気。

元気印だ。

可愛いなぁ。


他の四匹も焚き火の側へ座る。

僕の膝の上はウウダギの場所。


大きくなってもまだまだ小さいウウダギが膝の上にチョコンと座っている。


「皆の分もちゃんと獲ってきてるからね。 それと、水分補給の為に果物も有るからね」


そう言うと、ヒュルルが頭をかしげる。


「ポンピカ様。 クダモノとは?」

「様はいらないよ。 果物ってのは木に実る果実のことだよ。」


「木になる種の事ですか?」

「種って言えばそうだけど、可食部分は、大抵種の外側だよ。」


「外側・・・。 なるほど」


なんか理解しました風に成ってるけどヴァレヴァレは草、植物を口にしない。

つまり果物はないんだ。

今日の物は、先日食べてみせた果物とは違う。


元の世界で言えば、柑橘系の物かな?

種がかなり大きいんだけど、房を作って、其の中に可食部分がちゃんと有る。

ミカンとかと同じ構造をしていて、驚くことに酸っぱくない。

めちゃめちゃ甘いのに水気が多い。


ただ、この果物の皮は触ると特に柑橘系特有の匂いがキツくて、

誰も手を出さなかったんだ。

食べるのは動物、特に鳥類がよく食べていた様子。


僕は外見が柑橘系の実だとわかったので、そのまま口にしたけど。

最初これを口に入れる様子を見ていたパパムイが、

「臭いのによく食べれるな!?」って驚いていた。


その後、「臭くない」といって、房を一つつまんでパパムイの口の中へ放り込むと?


パパムイの事だ。分かるだろ?

大好きになってしまった。

しかも「俺は甘いの苦手なんだ」とか言っている始末。


いつものように面白いなぁ。

パパムイって。


ギギリカはこの果物より、とても良い匂いの花が咲く木。

まるでローズの様な匂いを漂わせる木に実るりんごの様な実が好き。


花を見ても良し、実を食べても良しの優れものの木の実。


その実も数は少ないけど紛れている。

ウウダギはもっぱらバッタに目がない。

果物で美味しいって食べるのは僕が最初に与えた果物。

マンゴーの様な味のする黄色い実だ。

渋い皮を剥いたやつ。


この集落では皆が何かしら果物を食後に食べたりする習慣が有る。

というか、そんな習慣がついた。

きっと、デザート気分なんだろうと思う。

言われなくてもそんな行動を取ったんだ。

面白いよね。


ヴァレヴァレ達はどんな行動を見せてくれるんだろう?

たのしみだなぁ。


とか言ってる最中に枝にさしたバッタやその他の昆虫が焼きあがる。

不思議と、この辺の昆虫はスカスカじゃないんだ。

実がイッパイ詰まっていることが多い。


そんなもんだからウウダギもバッタの中身、

プリプリした部分を好んで食べているんだ。


食べ慣れるとエビに近い。

他の昆虫はそれぞれで味が違う。


中には、貝の様な味の昆虫も居る。

ゲンゴロウのような形で、

木にへばりついているタイプなんだけど、

これがなかなか木から離れない。


木を揺すったり衝撃を与えても落ちてこない。

なので、見つけたら手でむしり取るしか無い。

動きはそれ程素早くなく、見つければ簡単に獲れる。

だけど、ヴァレヴァレ達にはきついだろう。


殆どの場合木の上の方に居るからだ。

木登りができないヴァレヴァレにはきついのも当然。


このゲンゴロウもどきも焼いている。

焼くと、黒光りしていたのが、赤黒く変色する。

なんっていうか、油もジワジワするんだ。


昆虫油って事かな?

・・・昆虫から油とる?


考えておこう。


出来上がった昆虫の直火焼きと果物を振る舞う。

熱い物に慣れていないヴァレヴァレスキクの4匹は、

出された焼き立てをそのまま手で受け止めようとした。


だから、前もって「熱いからね?何かに取って食べようね?」

っていっても、目の前の食べ物になるとあまり頭が回らない様子。

イヂジンとセルセルだけはちゃんと言う事を聞くのだけど、

他の2匹はあまり言うことを聞かない。


結構、理性的なヒュルルとオルギュス・・・食べ物には特に弱いと見た。


結局パパムイのように「熱い!」とか「アチッ!」って言ってる始末。


「だから熱いって言っただろ?」

「そ、そうですが・・・」


「ほら、ウウダギを見習うといい。きれいに中身を食べるんだ。大丈夫奪ったりしないからゆっくり食べな」


そこまで言うと、心なしか安心したようで、ゆっくりと食べ始める。


「しかし、4匹は何を困ってたんだ?ウウダギは教えるのが厳しいんだ。それにまだ子供だからね。大目に見てよ。」

「はぁ・・・」


気の抜けた返事がヒュルルから聞こえる。

あれ?僕はウウダギが説明をきちんとできなかったからみんなで四苦八苦しながらだったと思っていたんだけど・・・ちがうのか?


「ウウダギ。どうやって教えてたの?」

「ん?粘土作る。水適量、練る。時間ちゃんとする。形の形作る。ちゃんと長さ決める。色々やる」


なるほど・・・意味がわからん。

やっぱりそういうことなんじゃないか?


「ヒュルル達は随分疲弊してるみたいだよ?」

「そう?僕は大丈夫。ポンピカの周り、皆これくらい出来る」


・・・そう言えばそうだ。

パパムイもなんだかんだ出来ちゃう。

結構優秀。

ギギリカは言うまでもない。

ンダンダも意外に器用。

ベベビドも器用、しかもウウダギと同じで完璧主義ミスが少ない。

イイオオは大雑把なところも有るけど、一度やると決めるととことんやる。

パレンケやパチャクケチャクのことは微妙にまだわからないけど、

それでも言われたことをきちんとこなす。

シシブブはそもそも自分で行動するタイプだから見てれば出来ちゃう。

ギュギュパニは力が有るけど本当に細かいことには向かない。

だけど集落のためとなれば必死だ。

文句も言わない。


ズズナドや族長・・・やらせてないけどきっと出来るだろう。

まぁやらないんだと思うけどね。


・・・ヴァレヴァレの集落って本当に戦関連のものしかやってなかったのか?


「ヒュルル。ヴァレヴァレって所はさ?誰が生産とか行ってるの?戦に関係ないスキクとかいるのかな?」

「いや、居ない。皆がすべて戦に関わっている。全員が戦える。引き換えに物を作るということをしない。多分、ウウダギが言っている事を俺等は理解が出来ないでいるんだ。クグナの使い方一つ取ってもはじめてだから」


なるほど。生産系がいないのか・・・どうやって食いつないでたの?

家が壊れたらどうする?


「でも生産は必須だろ?どうやって賄ってたの?」

「近くの集落と獲物を交換していたんだ。」


貿易?やってたの?

そんな集落が近くに有ったってこと?


「近くに集落が有ったって、どのくらい近く?」

「俺の足で半日は歩く。行って帰ってくるだけで2日かかるんだ。」


なるほど・・・貿易だ。

取引だ。

凄いぞ!


「獲物ってそんなに沢山獲れたの?獲れたのなら飢えるスキクが居ないはずだよね?」

「いや、色々有るんだ。獲った獲物は一度族長の元管理されるんだ。分配もここ最近少なくなっている。そして、殆どの獲物が集落の外へと出てしまうんだ。なぜだかは俺ではわからない。」


何となく状況が分かってきた・・・。

もう少し突っ込んできいてみよう。


「オルガクルガは族長と反りが合わなかったんだよね?其の上集落の中で孤立していたわけだ・・・飢えていたのって、オルガ派だけじゃないよね?もしくは、オルガ派を外に出す口実とか?」

「・・・ポンピカさ・・・ポンピカ。お前は、色々考えつくんだな?俺はそこまで頭がよくないが言われてみれば、そんな気がしないでもない。でもなぜそんな事を気にする?」


本気で言ってるの?


「えっ?ちょっと、逆に聞き返すけど、なんでヒュルル達はオルガについたの?」

「それは、親も同然だしな。更に恩義もある。何より戦いに置いては強くあるからだ。」


恩義ねぇ・・・それ別名、餌付けのことじゃないのか?


「もしかして、オルガ派はオルガ派が獲った獲物を族長に渡さず、みんなで分け合ってたのか?」

「!・・・そ・・・そうだ。なぜわかった?」


なるほど、生きるためにはオルガに従う方がよかったんだ。

獲物を分配しない族長の側よりいいねってやつだ。


「う〜ん。スキクは素直で善良なんだなぁって事だよ。」

「?話が見えないんだが?」


「いいんだよ。何となくわかったから」

「そ・・・そうか」


纏めるとこう言う事だろう。


オルガクルガがヴァレヴァレの族長と対立するきっかけというのが、

色々な原因があっただろうけど、一番の要因は、集落の飢えに対する懸念からだと思われる。


オルガクルガは意外に面倒見がよさそうだし、根心はとても母性的で弱い者に気を掛けそうだ。

ギュギュパニにもその性質が受け継がれているように思う。


こう考えると、集落の子供たちが飢えるのに対し見かねたオルガクルガが、

其の原因を作っている貿易に対して、物を申したんだろう。


当然、ヴァレヴァレの族長はそれを却下。

そうなると防衛の要であるオルガクルガは集落を抜けるという選択も有っただろうけど、

使命や、飢える子供たちに対して何かできないかという母性から、

その集落を離れることはしなかったんだ。

そして、オルガ派の集団が出来上がっていくんだ。


飢えを補ってくれたオルガ、

守ってくれるオルガ、

親以上に親であるオルガ。


そんな崇拝するべき対象が出来上がってしまったんだろう。

そこに危機を感じたヴァレヴァレの族長が今回のこの集落での出来事を利用して、

不穏分子を一掃すべく策を弄したんだ。


見事成功。


そして、ヴァレヴァレの集落に残っているオルガ派の集団を、

ヴァレヴァレ集落からこっちへ追放する事で、向こうは族長派の一個に纏まる。


そうして、数が減ったヴァレヴァレの集落は・・・その後どうなるんだ?


ふむ・・・。


もしかしたら食い扶持を減らす意味も有ったのかもしれない。

獲物を獲っても集落に持ち込まない連中には施しもなかったのかもしれない。

ヒュルルの言動からすると、其のような流れだ。


ヴァレヴァレの族長の考えでは既にオルガ派は居なくて良い集団だったのかもしれない。

そうなると向こうはその集団だけでやっていけると考えていいるはず。


なるほど。


恐らくそんな流れが有ったのかもしれない。

すべて憶測だからなんとも言えないんだけど、

そういう背景が見え隠れしているようだ。


「ヒュルル達も大変だったね。 ここでは、お腹いっぱい食べていいんだよ?」

「ポ・・・ポンピカ様・・・」


「様はいらないからね。」


ということで、少しお惨事的な間食をした。

それと、ウウダギにビシビシしごいてやってくれとこっそり伝えておいた。


なぜビシビシなのかと言えば、慣れない事とは言え、今後は似たような仕事が増える。

何時までも出来ないでは長続きしないだろう。

最初はキツくても後で、きっと感謝するはず。


そう思ってのことだ。

ちなみにウウダギのビシビシはヤバイ。


寸分の狂いも許さない上に、

工程を間違えると時間がかかってもやり直させるという・・・。

まぁ、心が折れる仕様だ。


・・・皆がんばれよ! 後に続く者の為に!


さて、僕は結構時間を費やした。

でもまだまだ見回らないとだめなところも多い。


次はケルケオだ。


ケルケオの卵がそろそろ孵化する頃だろう。

シシブブが動けないことも有るしなぁ。

ってか動いてるかもしれないけどね。


だって、スキクは治りも速いし、順応性にも優れている。

バランスもすぐに慣れるだろう。


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