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説得の丸投げと事情聴取


オルガが例の2匹の前で、話を切り出し始めた。

様子を伺うことにしよう。


「バルバル、ベネネズ。あんたら掟はどうしたんだぃ?」

「オルガクルガ様・・・ですが、ヤツ・・・アレは変な、卑怯な行いであなたを殺したのですよ?」

「そうです!汚い手を使ったんです!そんなのアイツが先に掟を破ったようなものでしょう?」


「汚い手ねぇ・・・。それを言ったらあたし等のほうが汚い手を使ってるんだよ・・・自覚は有るのかい?」

「そんな!?ギュギュパニは弱い。だから粛清しなければならないはずです!」

「そうです。それに私達は、集落のヤツ等が襲ってくる可能性もありました!私達のほうが不利だったんですよ?卑怯ではない!」


「・・・困ったねぇ。あたしはそんなつもりで来たんじゃないんだよ・・・全くウチの族長は・・・あんた等にいらないことを吹き込んでくれたみたいだけど、あたしは、ギュギュの様子を見て本当に弱いなら連れて帰るだけでよかったんだ。鍛えなおさなきゃいけないからね。」

「尚の事です!。今からでも遅くないでしょう?」

「そうです!今なら全員でかかればアノ卑怯者は何も手を出せません!」


「・・・本気で思ってるのかい?あたしがアイツを侮ったと・・・お前たちはあたしが間抜けだと思ったかい?・・・アイツはね。あたし等が束に成っても勝てない化物だったんだよ・・・ったくそれ知ってりゃこんなことにはならなかったのにねぇ・・・本当にしくじっちまったねぇ。」

「何を言ってるんですか?あんな小さくて弱そうなヤツ・・・どうにでも成ります!」

「そうですよ!今度こそ殺せます!あの小さいスキクを殺せばきっと折れるでしょう!」


「ベネネズ・・・それやったら、ヴァレヴァレが無くなる。無くなるどころじゃない。恐らくスキクがこの大陸から居なく成るよ。ザウスもね・・・ありゃそんくらいの化物だ・・・オルデゴ以上のね。手を出しちゃだめな部類だ。そんな考えじゃ、何時まで経ってもそのまま野垂れ死にだねぇ。まぁあたしには関係がないことだけどねぇ。」

「どういうことですか!?あんなチビがオルデゴ?バカなこと言わないでください!」

「そうです!」


「まぁ、話を聞きな。あんたらは此のままだと死ぬ。だけど、アイツは死者さえも道具として扱う。ありゃ呪術師なんだよ。それも太古の本物の呪術師の一匹と変わらない。とてつもなく厄介なんだ。お前たちは、これで死んだら次の時代が待ってると思ってるだろうが、それさえ引き止めて、好き放題されちまうんだよ。尊厳なんて無くなるんだ。ありゃ怒らせちゃだめなんだ。理解できないならそこまでだけどね。」

「な・・・何を言ってるんですか?呪術師?あの食い扶持泥棒のような連中の事でしょう?たかが知れてます。」

「そうです。呪術師なんてやる事がないヤツがやるような者。それがなぜ?」


「ここまで話していても、まだあたしの言葉を理解しないのかい?名を捧げたのはその程度の覚悟だったのかい?あたしゃ、あんたらをアイツのおもちゃにされるのが不憫でならないんだよ。だからこうしてアイツに従ってるんだ。あたしのためと思って分かってくれないかねぇ?」

「何を言ってるんですか?オルガクルガ様」

「そうですよ。今からでも遅くありません!」


「・・・もう遅いんだよ・・・あたしはもう死んでる。この体もギュギュの体だ。今はギュギュが休んでるから使わせてもらってるけどね。あのこが目覚めればあたしはまた物の中に逆戻りだ・・・悔しいねぇ・・・ポンピカ・・・あんなに強いやつが居るとは思わなかったよ。悔しいねぇ・・・。」

「オルガ・・・クルガ様?」

「何を言ってるんですか!死んでません!ここに居るじゃないですか!」


「バルバル・・・あんたは、本気であたしに着いてきたね。だから分かるだろう?」

「くっ!・・・オルガ様・・・」

「!?おい!バルバル!何を弱気になってるんだ!オルガクルガ様はまだ居るだろう!」


「ベネネズ。あんたは、名をあたしに捧げたけど・・・そりゃ演技だろう?族長の企みだってのは知ってるんだ。だけどね。他所の集落に攻めてそこで慈悲を願う立場なのにそれも放棄するってのは・・・流石に甘くないかい?族長はなんて言ったんだい?あんたを見捨てる代わりにヤツはなんて言ったのか教えな・・・でないとアンタは無駄死にするだけじゃ済まない・・・恐らく・・・死も道具にされちまうよ。覚悟はできてるんだろうね?次の時代もなく、ただ、永遠に道具として扱われる世界だ・・・それと引き換えにするほど価値が有ったのかい?」

「・・・」


「それにね。あたし等が負けたのは事実だ。すでにヴァレヴァレがこの集落に統合すると決まっている。すでにこちらへ向かっているそうだよ・・・。もうヴァレヴァレが無くなっちまうんだ。だけどだ・・・。ここで生き延びてこそ、あたし等ヴァレヴァレの命が続くというもの・・・。どんな対価があろうが、すでに策は潰えたと見て良いんじゃないかい?どうだい?」

「・・・かもしれません・・・ですが・・・子が・・・」


「そうかい・・・子が取られたのかい?誰だい?族長じゃないだろう・・・」

「・・・はい。・・・貢献度が2位の・・・エメルルです。」


「そうかい・・・あれは族長の秘蔵っ子だったねぇ。策を練るのが上手いって話だけど、雌なんだもう少しおしとやかにしてれば良いものを・・・とんだ事してくれたねぇ。」

「・・・どうすればいいでしょうか?」


「そんなの知るわけ無いだろう?・・・ただ、あたしが言ってもどうにもならないだろう。ならば合流する他ない。エネメルルが何かをする前に子をかっさらう。それしかないだろうね。」

「・・・生きれば・・・それが出来ますか・・・?」


「生きなければ出来ないだろうねぇ。まぁ、この集落はよほどの魔獣が出ない限り安泰だ。ポンピカがいるからね。それにギュギュから聞いたよ。あの体で普通のクウォンの3倍はある”エルラ”を殺したらしい。集落に来た鳥が言ってた話しが本当なんだそうだ・・・。まず数でも勝てない、強さでも勝てない。そうなればどうにもならないだろう?ポンピカにその話相談しな・・・オルデゴよりずっと心根は優しいやつだからね。」

「・・・わかりました。掟に従います。」


「バルバルはわかったかい?」

「はい・・・。ですが・・・オルガクルガ様は?どうされるんですか?死者としてここに居るんですよね?」


「・・・あたしは・・・すでに・・・物に成っちまったんだよ。」

「・・・ポンピカですか・・・」


「そうだ。だからこんな風にならないためにもあんたらはまともに生きなきゃならないだろう?」

「わかりました。俺も掟に従います・・・。」


「わかりゃいいんだよ。まぁ、話し込んじまったけどね。・・・生きていれば、いいことも有るさ。」

「はい・・・」

「・・・」


そこまで話し、僕の方を向く。

話しを他の4匹も聞いているわけで、しかも四匹はすでに従うと言っている。

これ以上話をしても意味ないかな?

取り敢えず一見落着か?


「ってことだ。ポンピカ。これでいいかい?」

「うん。上出来。助かりました。でも物にしちゃうとか言われてもねwそうした方がギュギュパニにはいいだろ?そう思っただけだからね。悪意はないよ。ただ、いまの話でわかたのは、ヴァレヴァレの族長とその周りは締め上げないとだめっぽいね。ベネネズがうちの仲間に成るって事なら子を取っているやつは敵だ。徹底してやるけどね。・・・それでいいだろ?ベネネズ。この集落で子供と一緒にのびのび暮らしてくれるだけでいいんだ。いい話だと思うよ。」


「ああ。願ってもないお誘いだ。だが子供は最優先だ。何とか成るだろうか?」

「相手次第かな?まぁほぼ僕が先手取れるし、いざってときはまたいろいろ卑怯な手も使って、子供だけでもかっさらうから気にしないでいいよ。」


「言い方が一々卑怯なんだよ!アンタは!・・・ったくギュギュが、こんなにも消耗したのは半分はアンタが日頃から心配をかけているせいだからね?分かってるんだろうねぇ?」

「・・・うそ?しらなかった。ごめんなさい。」


「・・・そうやってすぐ謝る・・・全く、気が抜けちまうねぇ・・・さて他の4匹にも話したほうがいいのかねぇ?そんな必要なさそうだけどねぇ」

「あ、今の話し聞いてたっぽいからいいんじゃない?オルギュス辺りはベネネズの監視かもしれないけどね。」


「!?」

「そうなのかい?オル」


「お、俺は!そんな・・・事は・・・」

「・・・はぁ〜。何だい。あたしの集団ってのはこんなにごちゃごちゃしてたのかぃ?しかもよりにもよって・・・あたしの子が?・・・どうなってるんだい・・・」


「まぁ、仕方ないだろ?何匹も居ればそれぞれ違った考えが有って立場が有るんだ。皆同じ方向を向いてるわけでもないんだから。でもまとまり具合でいえば良い方だったよ。勉強にも成ったしね。」

「ふん。お世辞はいいよ。はぁ〜!疲れたねぇ。さっさと木の上で寝る事にするよ。全く・・・ギュギュも大変だねぇ。こんな集落って知ってたら一言位声かけてやれたんだけどねぇ。」


「ははは。まぁ、いいじゃん。ってことで、皆さん元の世界に戻すよ。」


そういって、深刻そうな顔の6匹のヴァンを肉体へと押し込むように戻していく。

やはり自分の体に戻るという行為はスムーズらしく。

すぐに戻ってくれた。


現界にて、オルガは「疲れたから戻る」とだけ言って、木に登ってしまった。

残された6匹だけどまぁ最初から屈服してた4匹は素直だ。

残り2匹は瀕死・・・でも、目を開けて、

こっちを見て「掟には従う。この集落で生きる」と言ってくれた。


それを聞いたので手枷等の拘束を解いてやった。


「取り敢えず2匹は、元気に成ることが最優先だよ。それとオルギュスは少し話を聞こうか?」


気まずい顔をしているオルギュスだった。

まぁ、可哀想な役回りでは有る。


オルガの集団で、

ある程度信用を得てベネネズの監視をしつつ、

任務を遂行するっていう。

結構、辛い仕事のはずだけどね?


結果から見ると、尻尾を切り落として、言う事を聞かせたわけだし・・・。

それに、アノ時言ってたよね?

オルガクルガの子って・・・つまりギュギュパニの子であるパパムイと同じ位置のやつだ。

パパムイ!従兄弟出来たじゃん!

ん?従兄弟じゃないぞ・・・叔父さんかっ!

歳も近そうだしいいね!


まぁ、冗談はほどほどでいいけど。

オルガクルガの子なのにどうしてヴァレヴァレの族長の手先になった?

やはり、弱みを握られていたのか?

でも、名を捧げたとか色々と言ってたよね?

裏切っていたわけじゃない・・・。

もしかして、ヴァレヴァレの族長は、

ウソや陰謀を行えるスキクなんじゃないか?


もしその思考が正しければ・・・オルギュスの忠誠は真っ当なはずだ。

そして、何らかの誤解、錯誤を吹き込まれて居たのなら辻褄が合う。


オルギュスがさっき違うといいかけて辞めたのは、

オルガクルガが考えを改めない性格なのを知ってたからじゃないか?


ああなると、幾ら弁明しても結局、

変わらないだろうと分かってたからだ。


・・・オルギュスかぁ。

ありゃ可愛そうな事をしちゃったかもなぁ。

ってか、僕が適当にふっかけたら当たっちゃっただけだ。

当たりを付けてたわけだけどね。


当たりを付けた理由。

それはバルバル達や、その他との話の中で、

たまに出てくるヴァレヴァレの族長の性格というか思考の仕方だ。


何となくスキクとしての心の形が見え隠れしていたんだ。

恐らく、族長として、代々同じ役割を担ってきているんじゃないかな?

でなければ、戦や不測の事態、政治的な変化による一族の活動が妨げられかねないわけで。

きっと何回も何回も同じスキクとしての一生を過ごしているんだ。

その中で経験が蓄積されて、結局策謀を巡らすような・・・そういうスキクになったんじゃないか?


ベネネズの子を族長の側近と思われる、

エメルルとか言うのに攫わせたのも遠回しな策謀だった可能性が有る。


・・・これ、ヴァレヴァレの族長ってのは随分厄介なスキクだぞ?

もしかして、まともな合流はしない可能性が有るなぁ・・・少し、気を引き締めないとだめだ。


さて、オルギュスか・・・さっきの事で、随分口が固く成ってしまってるかもしれないな。


「ウウダギ。ちょっと頼めるかな?」

「なに?」


「あの2匹に米を使った食事を与えてほしいんだ。あまり、肉とか入ってない状態のやつね。」

「?」


「ああ、えっとね、衰弱していると、強い食べ物が逆に体を悪くする原因になるんだ。だから肉とか硬い食べ物は体力が回復してからじゃないと食べさせれないんだ。」

「うん。わかった。作ってくる」


そういって、ウウダギが大鍋の有る方へ走っていく。

いま、ウウダギが作るって言ったよね?

・・・まぁいいか。


「バルバルとベネネズはこれから少しずつ食事をして休むようにしてくれ。何はなくとも体力を取り戻してよ。また話しもしたいしね。」

「ああ・・・」

「はい・・・」


2匹が随分素直だ。

だけど声に力がないね。


相当体力が削られたんだろう。

そんなに成る前にウソ着いてでも自由に成ればいいのにね。


・・・不思議だなぁ。

ヴァレヴァレの族長はウソや策謀を巡らせる事が出来る。

なのに、その集落の他のスキク、ザウスは、そんなことが出来ない。

・・・いや?

エメルルは出来るのかもしれない・・・。

なるほど。


随分精神的なヒエラルキーがしっかりしてるんだね。

それに階級とかの単語が出たことも、

きっと向こうの族長が考えついて植え付けたものだろう。


支配統制だね。

こりゃ、なかなか骨が折れるなぁ。


「さて、他の四匹だけど、オルギュスを覗く三匹は自由にしてていいよ。昨日言ってた狩りでもしててくれ。用事があったら僕の方から何か言うよ。予定は色々立て込んでるからね。今の内にこの集落に慣れてほしい。」

「わかりました。」


ヒュルルが代表して答えてくれた。

そして三匹は、集落の中へと紛れていった。


さて・・・目の前には仰向けから肘だけで起き上がってこちらを見ているオルギュスが居る。


「オルギュス。そうかしこ貼らないでいいんだ。さっきのはカマをかけただけでね。まぁ、当たりは付けてたから分かってたという事に対しては否定しないけど・・・。ここじゃ他のヤツに聞かれるだろ?色々言い出せない事も有るだろう。一回皆の居ないところで、僕と話そう。」

「わかった・・・。」


声のトーンが随分落ち込んでる。

まぁ、そうだな。

信じていて、親であるオルガを裏切った様な印象を与えてしまった事が、

悔いに成ってるんだろう。


それから、僕はオルギュスの肩に手を回し肩を担ぎ、

少し皆と離れた位置へと移動する。


辺りを確認して、木の下へとオルギュスを下ろす。

背もたれの様に木を使ってくれと伝えた。


「さて、何処から話そうかなぁ」

「ポンピカ・・・」


オルギュスが話を切り出すようだ。


「なに?」

「さっきの事だが・・・」


「ああ、その事か、後でオルガに誤解だよって伝えとくよ。」

「!」


物凄く驚いたような顔をしている。


「どうしたの?どうせ、ヴァレヴァレの族長かその周りのヤツに吹き込まれたか唆されたんだろ?」

「・・・な・・・なんで・・・」


「そんなの態度とやり取りで分かるよ。僕が聞きたかったのは、そこじゃないんだ。」

「・・・?」


「そーだなー。オルギュスはオルガの子なんだろ?自分で言ってたよね?名も捧げてたようだしね。忠誠は間違いないだろう。それにアノ時オルガへ弁明しなかったのはオルガの性格を熟知してたからだろ?」

「なんでそこまで?なんでそこまで分かるんだ?」


「はははw。そんな事ばっかり得意なんだよ。まぁ、前世の記憶が有るからだけどね。」

「・・・」


「まぁ、いいや。黙ってても仕方ない。オルギュスの心を開放したほうが、話も進むだろうしね。」

「開放?心?」


「まぁいいさ。そう言えば、オルギュスは尻尾大丈夫?僕がやった事だけど、悪いなぁとは思ってるんだ。」

「・・・ああ、もう痛みがない。体ってのは不思議だな」


「やっぱりスキクは治りが早いなぁ。でも、自分で立ったりとか、まだ出来ないんでしょ?」

「ああ、だから尻尾は、致命的だって言われてる。いくら生え変わるとしてもな」


「ふーん。そういえば、この集落にもギュギュパニの子供がいるんだよ?パパムイっていうの」

「?・・・」


「まぁ、血は繋がってないけどさ?オルガクルガの子供であるギュギュパニの子だ。ギュギュパニがオルギュスの姉弟だとすれば、パパムイはオルギュスの親戚に当たるよ。今度、仲良くしてくれない?」

「・・・そうか、たしかに一族だな・・・」


「うん。だけど、あまり気にしないでねwパパムイは本当に頭が足りないんだw無茶苦茶だけど根はとても優しいし、イイヤツだよ。」

「ふん。わかった。そのパパムイってのと仲良くしろだろ?」


「うん。お願いね。」

「ああ。構わない。」


そこまで話をして、僕は近場に有る甘い木の実を手に取って、

オルギュスに渡す。


「・・・なんだこれ?」

「ヴァレヴァレって草食べないって言ってたよね?」


「ああ・・・。だけど、ひもじい思いをしてる奴らは、こんなマズイ実でも口にするんだ。」

「はははwマズイ?本当に?」


「違うとでも言うのか?」

「オルギュスは食べた事ない?」


「・・・ないわけじゃない・・・だが確かに不味かった。」

「それはね。皮をちゃんと剥いてから食べないからだよ。」


そういって、器用に皮を剥いて、自分の口に放り込む。

甘い果汁と柑橘系とは違うけど甘くて残るいい匂いが鼻を通り抜けていく。

南国のフルーツと言ってもいいくらいだと思うけどね。


それを見ていたオルギュスが真似るように皮を剥いてツルンとした果肉を口にした。

すると、甘かったのだろう。

少し、顔のこわばりが取れたみたいだ。


「どう?甘いでしょ?」

「ああ!これは良い物だ・・・知っていたら集落の皆も飢えずに済んだはずだ」


なるほど。

大体流れがつかめてきた。


「オルギュスはさ?自分の集落の事どう思ってるの?」

「どう?とは?」


「例えばさ?小さなスキクが飢えで死に絶える中、階級の高い連中はそれを見ても施しをしないで、自分たちの食い扶持だけに必死だったとかだよ。」

「・・・知ってたのか?俺達の集落の事を・・・」


「ん〜。何となくだけどね。」

「・・・ここの集落は子供が少ないな?」


「うん。この間のミニョルンの直前にね、集団で”ジン”に罹ったんだ。それで大半が死んでしまったんだよ。幸い一匹は僕と一緒だったから事なきを得たけど、もう一匹は辛かったと思うよ。」

「?集会場に居たんだろ?」


「色々事情があってね。まぁ、ミニョルン前からあっちに有る避難所って場所に移動してたんだ。僕とウウダギとパパムイ、それからギギリカの四匹がね。」

「パパムイってのはお前の友か?」


「うん。生まれも一緒だしね。ずっと付き合ってる間柄さっw面白いやつだよ」

「ほう。そうか」


「オルギュスはさっき、オルガから聞いただろ?ヴァレヴァレの集落がこっちに合流するって話」

「ああ・・・」


「ヴァレヴァレってのは、数が多いの?」

「多いぞ。小さなスキクを入れると、100を超える。まぁ実際その中でちゃんと生き残れる小さなスキクのは10匹居るか居ないかだがな」


「随分少なくなるんだね?なんでだい?」

「そうだなぁ・・・。俺と同じ時期のスキクは当時生まれた時で、200を超えていたんだ相当多かったんだ。だがな、3ヶ月もしなう内に半分以下に減っていた。まだ、知恵が育ってなかった俺は今一覚えていないが、殆どは、飢えから来る子殺しによるものだと思う。」


「狩りはしてたんだろ?」

「狩りは集落全てのスキクがする。雌も雄もな・・・だが、その狩りの成果は全て集落の物だ。そうなると皆に行き渡らなくなる。・・・一部の上位階級が、独り占めをするからだ。ポンピカがさっき言っていただろ?そういう事だな。」


「そうか。辛かったね。」

「・・・俺の子供はまだ居ない。だがベネネズは自分の子供をエネルルに捕らわれている。もし、ベネネズが裏切るような事が有れば、族長とエネルルから報復を受けるだろう。その被害は恐らく集落全体に渡る。そうすると、ザウスであるオルガクルガ様が矢面に立たなければならなく成るんだ・・・」


「なるほど。ちなみにオルガクルガは集落でどんな振る舞いをしてたんだ?」

「ん?・・・とっつき悪いが、仲間思いでな・・・特に小さなスキクには殊の外弱いんだ・・・雌だからな」


「集落では、オルガクルガを怖がるヤツとか居なかったのか?」

「居たはずだ。だが、オルガクルガ様の集団の中には、そんなヤツは居ないと思う・・・口では何とか言うが、結局誰もが、オルガクルガ様に助けられているからな」


「気になることが有るんだ。」

「なんだ?」


「オルガクルガの集団というのは集落でどんな位置にいたんだ?位置って分かるかな?」

「位置?・・・何をいいたいかは分かる。そうだなぁ・・・一番いいやすいところでは、族長は集落全体で一つの戦を行える集団にしたいという考えだ。だが、オルガクルガ様は出来る者がやればいい。見込みが有るものがやればいいと言う方針でな、絶えず族長といさかいを起こしていた。」


「つまり反族長派だったわけか・・・」

「ほう。面白い言い方だな・・・しっくりくる。だが、あの集落の責任は族長にある。だからオルガクルガ様も強くは出れなかったんだ。そこに来て、二位のエネルルが、誰でも彼でも戦の準備が出来るものと踏んで、小さいスキクにまで戦の方法を教えこんでいるんだ・・・。その結果、ただでさえ弱っている小さなスキクはそれに耐えきれず死んでしまうことも稀ではない。」


「そんなに過酷なのになぜその集落から抜け出そうと思わなかったの?」

「抜け出す?なぜだ?」


「だって、ほぼ破滅しかないだろ?」

「・・・そのような考えは持ったことがない・・・が、この集落を見ればそれも考えと分かる・・・なぜだろうな」


「ヴァレヴァレの族長は今回の移住に来ると思う?」

「・・・ポンピカ。恐らく、来ないだろう・・・もう気づいてるんだろ?」


「やっぱりかぁ・・・」

「恐らく、姑息な策を使ってくるはずだ、俺では考えもつかないがな」


「そっか・・・幾つかは思いつくけど、どの程度かが絞れないんだよねぇ」

「・・・お前は、ヴァレヴァレの族長のような考えをするのか?」


「えっ?なんで?僕はウウダギや他の子供が楽しく笑って過ごせる安全な集落を築きたいんだ。そのためには周りのスキクも皆が幸せで居なければだめだと思うけど?どう?」

「・・・考えは似てるのに中身が全く正反対か・・・面白い・・・ポンピカ。俺は、オルガクルガ様に名を捧げ、全てを捧げてきたが、お前なら俺を使ってくれて構わない。集落を、新しく成る集落をお前が良くするなら全力で協力する。」


「そう?じゃぁ、色々そのうちお願いすると思う。まずは、この集落の皆と仲良くなってくれ。特にシシブブには謝罪もしてほしいけどね。まぁシシブブは気にもしないともうけどねw」

「・・・シシブブ。尻尾を切られた雌だな?」


「そうそう。一緒に来てた5匹だけど・・・殺してそのままなんだ。どうしようか?」

「ふん。アイツ等は族長の子飼いだ。残虐な体質でな・・・手を焼いていたんだ。」


「でも、アンキロ・・・シシブブの飼っていた動物を殺したろ?」

「?・・・襲われていたろ?・・・違うのか?」


「なるほど・・・コリャまいった。善意でやったのか・・・。シシブブには可愛そうだけど、ちゃんと話さないとだめっぽいなぁ・・・はぁ。」

「どうした?シシブブってのは苦手なのか?」


「苦手っていうか何ていうか・・・オルギュスは姉っていう単語はわかる?」

「アネ?よくわからん。」


「歳の離れた、一族の雌っていう意味だ」

「・・・なるほど・・・たちが悪いってやつか・・・確かにめんどそうだな」


「はぁ・・・まぁいいや。色々聞けたし、開放しよう。それに少しは心も晴れたんじゃないか?ずっと溜まってたんだろ?こんな話が出来る相手がほしかったんじゃないのか?」

「・・・そうだな・・・ああ、少しは考えを纏めることが出来た気がする。感謝しよう。」


僕は、ニッと笑って、オルギュスを立たせる。

2匹揃って肩を組みながら皆の元へと歩いた。


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