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苦い薬と心の薬


翌朝、ウウダギに起こされる。


「ポンピカ。起きて」

「ん?どうしたの?」


「なんか、騒いでる」

「?誰が?」


「パパムイが大声出してる。」

「パパムイ?・・・わかったよすぐ行く」


寝ていたけど、すぐに飛び起きて、ウウダギと一緒に集落の中へ入る。


そこには、例の4匹が捕まっている2匹をかばう形で、

パパムイと他何匹かともみ合い担っている様子だった。


そこに僕が割って入る。


「ちょっと?どうしたの皆」

「おい!ポンピカ!聞いてくれよ!」


「落ち着けよ。パパムイ」

「落ち着いてられるか!アノ2匹もうヤバイって言ってるのにこの四匹が診せてくれねーんだ!」


?パパムイが診るの?大丈夫?


「ポンピカ。そうじゃないんだ・・・。ギギリカというスキクがバルバル達になにか変なものを与えようとしてたんです!止めたんです!」

「変なもの?」


「そうです!なんかドロドロしたものです!」

「ギギリカ?何を与えようと思ったの?」


「あたしはただ、栄養がつく物をと思って、ンダンダの薬草を混ぜたものを与えようとしただけよ?」

「ふーん。だってさ?ヒュルル。」


「・・・薬草ってなんですか・・・。草なんて、どれも毒ですよね?」

「ギギリカ。どうやらヴァレヴァレの文化では、薬草が無いみたいだ。きっと、毒の草しか知らないんじゃないかな?」

「ええ!?・・・そうなの?ヤサイも食べないって事?」


「ええ。草なんて身体には必要無いでしょう?」

「いや、必要だよぉ・・・どうしようポンピカ」

「ヒュルル。取り敢えずその薬草は飲んで大丈夫だよ。ンダンダとギギリカはちゃんとやってるからね。殺したりしないよ」


「・・・ですが・・・」

「じゃぁ、その薬草を僕ものもう。それなら良いでしょ?」

「ポンピカ飲むの?かなり苦いよ?」


「苦いの?」

「うん・・・試しにンダンダと飲んでみたんだけど・・・かなりきつかったわ」


「・・・まぁ、証明するためだ仕方ないだろ」

「わかったわ。じゃぁ、飲んでちょうだい。まだまだ有るからね。コレ飲んでも減りはしないわ」


手渡された器に緑から茶色へと変色途中のようなけったいな濁り汁が入っている。

手渡された先から異臭がするんだ・・・どくだみみたいないや、もっとパクチーよりの匂い?

パパムイは小さい声で「うえっ!ありゃギュギュパニの脇の下じゃねーか!」とか言ってる・・・。

まじかよぉ・・・。

感覚的にはワキガの匂いに酷似してるんだ。

ヤバくないか?


ウウダギを見ると何食わぬ顔で鼻を両手で塞いでる。

しかも目はこっちを向いてない。

完全に他人の振りしてる・・・。


ちょ・・・ウウダギさん?ひどくないか?


少しウウダギの方にお椀を近づけると反対側に顔をそらす。

あっ。ちょっと面白い。


少しいじってると、ウウダギの尻尾が背中にバチーンと当たる。

痛いんだよねコレ・・・さっさと飲めってことか。


マジマジと見ると薬草がすり潰されて、なかなか拒否感が否めない。

けど周りの目もあるしなぁ。


一気に行くしかなさそう。


意を決して、ぐいっと煽る。

口の中になんと言うか粘り気があって、違和感のある食感が漂う。

鼻の奥に突き抜けるワキガ臭、流石に嗚咽が出そうでヤバイ。

涙目必至。


「むぐぐっ!・・・マズイ!もうイッパイ!」


お決まりだ。

コレを言わないとカッコつかないだろう。


ギギリカが物凄く驚いた顔をした後、何の躊躇もなく追加を注いだ。

ってか僕もうお腹いっぱいって意味でいったんだけど・・・。

その横でパパムイが驚愕の目を僕に向けて、「マジかよポンピカ・・・よく耐えられるな・・・」とか言ってる。

パパムイ。僕だって限界を迎えてます。

あとでパパムイにもごちそうしますね。

拒否権ないからね。


お椀の二杯目を見ると、さらに拒否感が強くなる。

見ないでやろっと・・・。


ウウダギ?

ちょっとずつ離れていくのは辞めてちょうだい。

悲しく成るからね?


ちょっとずつウウダギに近寄るたび、避ける距離が大きくなる・・・。

終いには、また尻尾で叩かれた。


仕方ない。

飲むとする。


ぐびっ!


「ぐはっ!・・・やっぱり苦い!でもなんか力がでてきたぞぉ!」


こうでも言わないと信用ないだろう。

流石に飲んですぐに効果がでるわけないんだ・・・。


「ポ、ポンピカ?無理しなくていいよ?二杯は流石にキツイでしょ?」


ギギリカ?ついだ張本人が心配してどうするんだ?


「まぁ、こんな感じだヒュルル。体にいいよ。この薬草」

「・・・でも・・・」


「この集落はさ?色々食べるんだ。それに今みたいに”ジン”の一部も克服してるんだよ。この薬草もその一つだ。受け入れてくれないかな?」

「”ジン”?・・・”ジン”は、無理でしょう・・・」


「そんな事ないよ。此の集落に”ジン”を患わなかったスキクは居ないからね。ギュギュパニだって、治ったんだ。凄いだろ?」

「・・・にわかには信じられません」


「スキクはウソつかないだろ?信じてくれないか?」

「・・・そうですね。わかりました。」


ヒュルルの一言で、4匹が、引き下がった。

っていうか、対立してどうするんだ?


ギギリカが2匹に薬草を与えようと近寄る。

当の2匹は、もう殆ど反応がない。

というか自ら全然食事をしないらしいから力もないんだろう。


ギギリカが力で口を開き、薬草を押し込んだ。

2匹とも吐き出す元気さえ無いようで、臭いから無理とかも言えない。

すでに昨日から、轡を外している。

叫ぶ元気もないんだ。


取り敢えず、薬は投与出来たようだ。

ただ、ンダンダがどんな薬草を使ったか知らないけどね。

まぁ、ンダンダは優しいヤツだし、変な気を起こすようなヤツじゃない。

信用は出来るからね。


結局ギギリカが薬草の投与の様子を見ていた4匹は、

特に問題を起こすこと無くその場は収束した。


まぁ、あそこまで対立するようなことか?と僕は思うんだけど、

文化が違ったり、そもそも今まで知り得ない事に対して防御をとったり、

時には攻撃的に出たりするのは正常な動きなのかもしれない。


受け入れるという選択は信頼や知っているという認識が有ってこそだ。

ギギリカは良心から行ったことだけど、

争った相手だ、ヴァレヴァレからしたら排除に出たと思われても仕方ないだろう。


こういう場合は統治する側ヘの信頼とそれに基づいた、

周知が必要で、さらに仲間としての協調性を育てる必要が有る。


ここは族長に頑張ってもらうしかない。

知識の部分はズズナド学校を始めるしかないだろう。


何となく今回の問題でやらなきゃいけないことがわかった。

まぁ大事にならずに済んでよかったよ。


取り敢えずギギリカにはありがとうを言って、

今後もよろしくお願いすると言っておいた。


まぁ、納得はしていないだろうけど4匹と2匹の件は僕が処理するしかない。


ふぅ〜。


「ウウダギちょっとギュギュパニが動けるか聞いてきてくれない?」

「ギュギュパニならあそこで木を切ってるよ?」


・・・えっ?

何いってんの?

昨日の夜全然動けなかったじゃん・・・。


ウウダギの言っている方向では、力強く立っていて、

自前の石斧で木を切っているギュギュパニが居る。


この騒ぎの中、こっちに顔を出さないでなぜ木を切っているのか疑問だけどね。


仕方ない。声掛けるか。

その前に・・・。


「ちょっと四匹、その2匹の所に居てくれる?」

「どうしたんですか?」


「ちょっとね。いまからその2匹を説得する。手伝ってくれ」

「俺等には無理ですよ?」


「大丈夫だから」

「・・・わかりました。」


こう言うと素直に成る。

まぁ、僕がいえば納得するんだね。

難しいなぁ。


もっと皆仲良くしてほしいよ。


6匹を纏めておいた。

その足でウウダギとギュギュパニの所へ。


「ギュギュパニ。もう動けるの?」

「ん?ああ、そうなるんじゃないか?」


「ん?」

「ふーん。やっぱりあんたは鋭いんだね。」


「もしかしてオルガ?」

「ああ、少しね。あたしが今、体を動かしてるとこさ。あまりやることがなかったんでね。木でも切っていたところさ。さっきあっちで騒いでたがいいのかい?」


「あ、ああ。それも有ってね。少しこっち来てくれない?ちょうどいい」

「構わないよ。」


ギュギュパニはオルガより精神的に弱いのかな?

だけど、このオルガ随分柔らかくないか?

以前と同じならきっと切りかかってくるだろうしなぁ。


ギュギュパニを連れて、6匹の所へ。


「ポンピカ?ギュギュパニを連れてきたんですか?」

「あー。まぁいいじゃん。」


「そうですか・・・。で?何をするんですか?」

「取り敢えずさ、全員一列で横に並んで座ってくんない?」


「・・・かまいませんけど?オルギュスは座れないですが?」

「じゃぁ、適当に座らせといてよ。倒れてもいいから」


ヒュルルはオルギュスを2匹の横に座らせるように並べて、手を放す。

すると、グラグラとオルギュスが揺れて、ゆっくり後ろに倒れてしまった。

オルギュスも別にコレでいいんだろ?とでも言うように諦めている様子。


「オルギュスすまんな」

「ああ、構わない。・・・」


2匹のやり取りはこんなもんだ。


さて、全員一列にならんだ。


「オルガ、皆の正面に立ってよ」

「ああ?構わないが?なにするんだぃ?」


「これからコイツ等のヴァンを一度狭間に晒すんだ。するとオルガの姿が見えるだろ?」

「はーん。なるほどな。で?あたしに説得させようって魂胆かい?」


「まぁ、そういう事」

「はんっ。まぁ、いいよ。やるって言ったんだ。約束は守るよ。」


「そういう所好き。」

「・・・あんた、本当に変わったスキクだねぇ・・・」


この会話を聞いてかヒュルルの目がワナワナして見開いている様子だ。

それにバルバル達・・・僕どっちがバルバルかしらないんだw

どっちも反応があった。

ずっと目を伏せて居たはずなのに薄っすらと目を見開いてこっちを睨んでるんだ。


随分、オルガに心酔してる連中だったのかもしれないね。


「さて、はじからやってくからね。」


そういって、座ってる端。

右からヒュルル・イヂジン・セルセル・オルギュスとバルバル達2匹となっている。


ヒュルルの後ろに立って、頭へと手をかざす。

そしてこう言う。


「ヒュルル。目を閉じてくれる。」

「・・・」


無言だったけど目を閉じたようだ。


それから、自分の想いでヒュルルの想いを押し出す要領で、

気をねってそのままゆっくりと頭の後ろを押してやる。

すると、頭だけがヴァンの状態へと移動するようなそんな感じが伝わる。

押した手がなんだか頭を貫通する感覚だ。


僕は意識を狭間に持っていく、するとどうだろう?

ヒュルルは何が起きたかわからないような・・・。

顔だけが自分の顔の前に有るっていう、変な状態に困惑していた。


生きている者のヴァンを無理やり押し出すとどうなるのだろうと思っていたけど、

どうやら、生きているうちは現界の肉体に引っ張られているせいだろうか?

形がそのままヒュルルなんだ。


僕はなんで人間の形に成ったのかな?

というか、僕ってはじめ球体だったよね?

あれ?

僕ってもしかして取り憑いた部類だったんじゃないか?

そう考えると怖いなぁ・・・でも、確実に卵に居る段階から僕だったんだけどなぁ。?


まぁいいや、これも例外なんだろう。


狭間の世界で、ヒュルルに声を掛ける。


「ヒュルル。ほら、ギュギュパニを見てみなよ」

「・・・えっ?なんで?なんでオルガクルガ様が・・・居るんですか?生きてらっしゃったのですか?」


「ああ、それはね色々あって、僕がオルガのヴァンっていう物をギュギュパニにあげたんだ。その結果だよ」

「・・・」


「オルガ、取り敢えず他のヤツも放り出してくるからそしたら会話してくれ。いいかな?」

「構わないよ。ってかあんた本当に器用なやつだねぇ・・・本当の呪術師ってのはこんなことが出来るものだったとは・・・驚きだねぇ。」


「まぁいいじゃん。取り敢えず現界でちゃっちゃとやってくるよ」

「ああ。待ってるよ。」


意識を現界に戻す。

成功したんだ。

これで話が通れば問題はなく成る。


きょうで決着だ。

そうすればレンガも石灰も集落の拡張も埋め立ても全てが上手く行くハズ。

頑張ろう。


イヂジン・セルセルと一度やったことなので成れた。

現在狭間ではオルガと三匹が顔を合わせている。


次にオルギュス。

仰向けなんだよね。

まぁいいか・・・。


取り敢えず、両手でヴァンだけを持ち上げられるように気で手を覆い。

両手の想いの力を調節しながら頭を起き上がらせるように持ち上げる。

現界では、オルギュスの顔を両手ではさんで、ツルッと抜けた様子に成るだろうけど、

狭間ではしっかりと掴んでいる。

起き上がらせるのに成功かな?

一匹だけ頭のみではなく腰から上が起き上がってる状態だけど。


次に問題の2匹。

これはすでに意識が朦朧としてる。

軽く小突いたらヴァンが弾けてしまいそうなほど脆いかもしれない。


慎重に豆腐をすくい上げるように

慎重に押し出してやる。


抵抗感がすごく少ないことで、ビックリしちゃった。

一回目失敗したかと思ったほどだ。


何はともあれ、

6匹のスキクのヴァンが狭間を見ている。


僕も狭間に意識を置く。


「さて、皆見てるかな?」

「ポンピカ様・・・これはどういう事ですか?」


「様いらないよ。ヒュルル」

「ですが・・・なぜ?そのぉ・・・」


「さっき話したでしょ?」

「そうですがそれよりもです。ポンピカさ・・・は、スキクじゃないんですね?」


「ああ、そうね。まぁあまり気にしないでくれると嬉しいんだけど・・・」

「・・・それは流石に無理じゃないでしょうか?」


「まぁいいじゃん。」


そこまで話してると、奥の方で、バルバル達が騒いでいる。

動けないのがもどかしいのか盛大に喚いてるんだ。


「オルガクルガ様!オルガクルが様!どうか!どうか御慈悲を!」

「オルガクルガ様!お助けください!」


こんな調子。


「ってことで、まぁオルガクルガとお話をしてください。皆さん。」

「・・・あんた、本当に全部あたしに振るつもりかい?」


オルガクルガがそんな事を言う。

いいだろ?僕が出ても良いことないんだ。

あの2匹を見れば分かるだろ?


「まぁ、今の僕の姿をあまり詮索されたくないんだよ。めんどいし一々説明するのも嫌だからね。」

「そんなのどうでも良いだろう?あたしはこれでも死者だよ?死者は丁重に弔うのが仕来りだろう?」


「そんなの聞いてないよ?精霊さんだって、適当だからね?そんな仕来り誰が決めたか知らないけどさぁ・・・僕からしたら死んだ者、同族の肉を食べるっていうのは禁忌なんだよ。共食いは気が狂ってるヤツがやる所業って教わってるからね。ザーザースの事情なんてどうでも良いんだよ。正直ね」

「あんたは・・・ホント変わってるわ・・・良くスキクで居られるねぇ?」


「あー。まぁ、最初は折見て逃げるか、のんべんだらりと一生を終えるつもりだったんだけどねぇ。なんか色々有って今こんな状態なんだ。まぁ、ウウダギの事もあって、スキクで居るのかもしれないかな?」

「ふーん。ウウダギってのはそんなに良い者なのかい?」


「うん。可愛いんだよ?とても愛せるんだ。見てるだけで楽しい」

「・・・そうかい・・・まぁ、あんたはあたしとの約束を守ったからね。説得には協力するよ。ただしアイツ等が素直に受け入れるとも限らないからね?」


「まぁ、そうなったら仕方ないさ・・・それに昨日の夜聞いたでしょ?族長はヴァレヴァレと話を付けたみたいだよ。ヴァレヴァレがこっちに合流するってさ」

「その話は、こっちでも聞いたさ・・・しかしウチの族長は曲者だからね?気をつけるんだよ?」


「ああ、だろうね。まぁ、オルガクルガをこっちに差し向けるほどだ、それなりの野心は持ってるんだろうね」

「・・・お見通しかぃ・・・まぁいいさ。さて、誰から話す?」


「あの2匹から説得してもらいたい。」

「ああ、わかったよ。」


ここまでのやり取りを6匹はポカーンと口を開けて見ている。

なにがどうなったのか理解出来ていない様子だ。

そんな中、オルガクルガが現界のギュギュパニの体を動かす。

そして狭間の世界でも同じ動きをする。


こう見ると不思議だ。

今見ているギュギュパニはどう見てもオルガだ。

じゃぁギュギュパニは何処に居るんだ?

それが謎でどういう仕組みか知りたいところだけどね。


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